「マジカル提督ってなんだよそれ…」
半ば笑い話だが、実際にそう呼ばれたのだから仕方がない
「マジカル提督って…魔法少女じゃないんだし…」
あるいは八極拳でも修めているわけでもないというのに、マジカルの名を冠するとはおかしな話だが
「…提督」
「…?」
廊下で後ろから呼ばれたので振り向くと、そこにいたのは空母棲鬼とレ級
「六重の連謡戦では、大した戦力にはならないかもしれないけど
私たちも助力させてもらうわ
それと、はい」
一足で寄って来た空母棲鬼は
俺に片手を差し出して
「白タコヤキ?!」
グッタリした白タコヤキを落とした
俺の手の上で
ぽてん、と転がる白タコヤキ
「セクハラしてきたからちょっとお仕置きしただけよ、気にしないで」
「それは気にするよ?!」
グッタリしている…縁日の屋台で掬われた挙句に死にかけている金魚のようだ
白いけど
「…大丈夫か?」
「…ぴぃ……」
ダメだなこりゃ
「せっかくのタコヤキが…」
しかし、指先を切って血を流しこみ、
少しずつ飲ませると、先ほどまでぐったりしていたタコヤキにも生気が戻り
「ぴぃ!」
しおれていたタコヤキは
やがて綺麗に丸くなった
「ピポピキピビピイ」
「うん分からん」
そっと指先で頭…というか全身?を撫でてから、いつものように(久しぶりだが)帽子に入れる
「その子の言ってることならわかるわよ?」
「え?マジで!?」
「マジで、よ…私は空母棲鬼だもの」
薄く微笑んだ空母棲鬼は
すっと人差し指を立てて、
俺の帽子を指差す
「疲れただの寝ていたいだのと言う前にまずは働きなさい!碌に働きもしないグズにやる血は無いわ!」
「おおう辛辣ぅ…」
割ときついお言葉を叩きつけていた
「提督、この子は甘え過ぎなのよ
本当はできることもできないフリをしている、だから本来の能力を引き出すには
こうするしないの、いい?
躊躇うのはこの子の為にならないわ」
「了解」
とりあえず帽子の中で震えている白タコヤキは無視して、空母棲鬼の方に視線を向ける
「?」
「…いや、なんでもない」
信じていない、と言われても
俺自身は艦娘のことを信頼している筈なんだが…な、
本当に信じていないなら
そもそも前線になど出さないし
昔の鎮守府のような状態にいちいち介入などしない筈だ、俺は艦娘の善性を信じるが故に前任の提督を告発したのだから
「…とはいっても
他人からそう見えるんならそうなんだろうなぁ…」
社会的評価が自己評価と一致することは少なく、大概の場合は外部からのそれである社会的評価こそ、客観的な“評価”として優先される
それが分からない俺ではない
「信じていない、か」
[提督]
[ん?なんだ川内]
[提督はね、優しくて甘いの
だからずっと甘えちゃうんだよ?
女の子は泣いてる時に優しくされると弱いけど、それからずっと優しくされて、甘やかされてると慣れてくるの、だから今の鎮守府がある]
[ほう?]
[私は提督と
…ううん、提督が戦力として運用できる艦娘は少ない、それこそ大和とかみたいな
最強格しか戦力としては見ていない
それに、提督自身も気づいてると思うけど、提督はね?]
[よせ川内]
[提督は、自分と鎮守府のみんなを『家族』って言うけど、実は提督自身が一番、艦娘のことを『別の存在』として見てるんだと思う]
[…そうかもしれんな…]
なにせ、俺にとっては所詮
『艦隊これくしょん』というゲームの話でしかない存在『艦娘』それが現実にいると言われても現実感など到底湧かない
それに俺は別の世界の人間ですらあるのだから、知らず知らずの内に自分と鎮守府のみんなを別に見ていた、と言われてもおかしくないだろう
「…当然の報いか…」
[提督?まずはしっかりとみんなのことを見てあげて、それから先の事は
そこからの話だよ]
[あぁ、ありがとう]
頭の中の川内からそっと視線を切り
前へと目を戻す
「…今は、今やるべきことを」
作戦の練り直しも必要かもしれないな
「…やれることがあるうちは、精一杯やろう、みんなで生き残る為に」
俺はやはり、犠牲を容認などできない
たとえ俺の方を嫌う者だとしても
それを切り捨てて進む、なんて決断は俺にはできない、だから俺は
全員で進む為に自分を犠牲にし続けてきた
それが問題だと知っていて
なお無視し続けていた
見直すべきはまだ多いが
これは大きな一歩になるだろう
「よし!」
はっきりと声を出して
俺は執務室へと向かった
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