翌日の朝、しっかりと食事を取った後
鎮守府の最低限の機能を残して
機密書類などの万が一にも奪われる事の許容できないもの(もっとも、大本営からの機密書類程度、大半は大したものでも利用価値があるわけでもないのだが)は執務室に放り込み、完全に抹消するために明石と夕張が
個人的に、そして技術者的に奪われたら危険な工業機械についてはクレーン等で移動してトラックに乗せている
大型の運転免許を持っているのは大淀、俺、扶桑さんの四人だけだが
陸側(鎮守府内)に配置されているのは俺だけなため、必然的に必要があれば破壊・投棄する事になる
機械について造詣の深い明石は
これを捨てるなんてもったいない…
と言っていたが、俺も同意見だ
俺が着任してしばらく後に買ったコイツは中古でありながら今までの長い間
俺のパーツ新造に付き合ってくれた相棒とすら言える機体、捨てるには忍びないが、工業系機械はやはり奪われる事のリスクが高い
何しろ『戦略物資に該当する』とすらされるのである、特殊工作艦の明石と同じ優先破壊対象に指定されている可能性もある
…東京の下町が空襲を頻繁に受けたのは、優秀な腕を持つ職人や精度の高い機械を出来るだけ殺し、壊して数を減らすためと言われているほどだ
「さすがコイツ一台で明石レベルとは言わないが、俺が真っ当に技能を発揮できるのはコイツのおかげであることも確かだからな…」
「捨ててしまうと言うのは最悪の場合に限りたいところですよね…まぁ鎮守府自体に侵入される事が最悪の事態を意味するのですが」
そもそも鎮守府そのものが籠城しやすい構造を持っているの以上は
侵入者を排除しやすいようにもなっているのだが、海域を突破され、艦娘の防衛能力を超えてきた連中が大挙してきたら
流石に人間の人員だけでは
攻撃力も能力も足りない
速やかに自爆するほかないだろう
「里見君と俺では流石に…姫級6隻と対峙して生きて帰れるような戦力ではないだろうよ」
「そもそもなんですかね、姫級6隻と対峙した上で生還するって
それだけで伝説ですよね」
「…階級はどちらにせよ上がるだろうな」
「二階級特進とか言ったらはたきますよ」
明石はジト目でこちらを見ている!
「…大丈夫、お、俺は生き残る覚悟を決めてるんだ…大丈夫だよきっと多分
…俺、この戦いが終わったら海軍やめて隠居するんだ…25歳にして隠居するんだ…」
「きゃぁぁぁぁっ!」
明石の妨害で
「明石?どうしたんだ?」
「提督が…提督が…死亡フラグを立ててるんです!」
二人で話していた工廠裏に突然現れた天龍がそれを聞くと、
「提督ぅ…テメェいい度胸じゃねぇかオレ等が姫ども食い止めようって時に
死亡フラグなんて立てやがって…」
「死亡フラグをたくさん立てると生還フラグになるんだよ知らないのか?」
「は?そんなの初耳だぞ!」
「古来漫画やアニメ、小説において…ミステリーに『こんな所に居られるか!私は部屋に帰る!』SFに『オレ、この戦いが終わったら結婚するんだ』主人公の友人、先輩ポジは『ここは俺に任せて先に行け!』など、さまざまな形で刻まれてきた死亡フラグ、それを集積し…そして乗り越えた生還者がいる、コウタというそいつはなんというか…もう、物語の進むごとに死亡フラグを立てては生還する
なんか失敗して死にかけては生き残る、そんな謎の体質を持っているんだ」
「…おう、で?」
「そのコウタをリスペクトしてバカっぽく死亡フラグを積んだだけだ
…最終ブリーフィングが近い
行くぞ天竜、明石
特に明石は陸配置だろ?」
さっと二人に背を向けて
鎮守府本棟の方に向かう
「はい!」「お、おい!」
何か不服そうな天竜も明石も連れて
講堂へ到着した
「…よし、時間通りだ
敵さんはもう一時間後くらいに鎮守府正面海域に出て来ると分かっている
ここまで近くなれば偵察だってできるさ…さて、もう一度問うぞ
《おう!》
元気の良い返事が帰ってきた事に
僅かな満足感を覚えつつ
俺はみんなに告げた
「これからデカい戦だってのに、どうやら遺書を書いてきたやつは居ないみたいだな!そんなバカどもに死に場所なんか勿体ねえ…全力でやって…勝ち残ろうじゃないか!
総員出撃!
陣形は対六重の連謡:ヘキサグラム!行くぞ!」
最初の防衛配置につく
31人が出撃する
〈こちら大和!乙地点 配置完了!〉
〈ビスマルクよ、ポイントコウに到着したわ〉
程なくして
続々と各地点に到着した艦娘たちの報告が聞こえてきた
〈こちら金剛、戊地点に到着デース〉
〈長門だ、陸上己地点に配置済み〉
〈扶桑です、丙地点に到着しました〉
〈鈴屋、丁の配置終わったよ〉
「よし、各員配置についたな
以後、各艦隊旗艦判断による武装使用を許可!迎撃戦だ!」
《了解!》
全員に向けた通信が
全員からの返事を拾った
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