「…敵の数が多いっ!」
「しのごの言わない、口動かすより手を動かしなさい!」
「戦闘に向かないタイプの輸送艦まで動員されているなんて…」
こちらは早くも乱戦の様相を見せていた、甲地点ビスマルクの艦隊、乙地点大和の艦隊と違って、様子見のために少量の戦力を逐次投入しては来ず、最初から一気呵成に攻め立てて来ていたのだった
空母として遠距離攻撃を担当する赤城は後ろに、その前を扶桑、大井、五月雨、秋雲が防衛する陣形を取っているのだが、圧倒的な数に押し込まれている
「大井さん!」
「了解!」
一言だけ、それだけで十分
一言を聞いた大井は魚雷を投擲
その魚雷を、戦艦扶桑がキャッチし、戦艦のパワーで遠投する
それはニタニタ笑っていた軽母ヌ級に直撃し、哀れなヌ級は体の前半分が消滅した
「赤城さん!」
「…………!」
敵艦隊の数はあまりにも多く
それが故に防衛戦も押しつぶされる
後方にいた赤城に、
ついに駆逐イ級が飛びかかり
「破ッ!」
右掌底で砕け散った
「「「え?」」」《ハ?》
「赤城…さん?なんでそんなことが」
扶桑と
それは場所と状況さえ違えば心臓爆発した野郎どもの骸があたり一面に転がるような美しい笑顔だったが、続いてその口から放たれた一言が戦場を凍結した
「鍛えてますから♪」
無論、内心で扶桑は激しくツッコンでいた
(その一言でそんな事が出来るなら戦闘に苦労しません!)
あくまで内心に留め置かれていたが
「…何ヲシテイルノ!早ク攻メナサイ!」
後陣からよく通る声が響き
それに気を取り直したか、深海棲艦たちが再び動き始める
「…すいません、扶桑さん
私はまだ未熟で、破!…自分自身を動かしながらは艦載機の機能を万全には活かせません、なので援護をお願いしたのですが…せいっ!…驚かせてしまいましたか?」
駆逐艦を爆砕させ、軽巡艦を叩き伏せ
膝上丈の短袴姿だというのに大外刈りまで披露して追撃、華麗すぎる震脚が哀れなホ級の艤装を完全破壊する
「…えっと…」
「気にしないの!そんなことより今は敵よ!」
動きが止まった秋雲に大井さんが檄を飛ばして、同時に魚雷を放り投げていく
さすが練習艦をやってただけあって
メンタル的にもかなり強いらしい
「…今は敵に…集中しなきゃ」
五月雨は頑張りすぎて空回りしないか心配になってしまうけど、それでも
やる気がないよりはずっと良い
「…やれるだけやるわよ」
そっと砲を構え直して狙いを定め
「主砲一斉射!」
初めから無制限状態の艤装、主砲発射時の圧力は自分自身にすらも影響を及ぼすような殺人的なもので、軋みをあげる背骨にも構わず
再度の砲撃のために砲弾を再装填する
「妖精さん、いけるわね」
(こく。)
それでも頷いたのはわかった
主砲の角度修正は不要
今するべきは、とにかく撃つこと!
「血反吐を吐いてでも!」
本来自分には扱えない、
巨大すぎる砲を構えて
自分の身を擦り減らすと自覚しながらも
それでも、愛する
「私は戦います!」
主砲一斉射が放たれ、火柱が上がる
広域にわたって散布される主砲は
たしかにここの防衛に適していた
「…提督、私は…頑張りますから」
「扶桑さん、頑張りすぎは良くないわ…いい?必要な時に必要なだけ、これが重要よ」
「…ふふっ…ええ」
大井さんはやっぱり優しいけど
それは気の使いすぎ、
だって今の私は
こんなに体が軽いんですもの
「こんな幸せな気分で戦えるなんて始めて…」
主砲が軽い、『提督のために』その一言で無限に頑張れる、そんな気すらする
「もう、何も怖くないわ!」
三度目の主砲一斉射、
それが放たれた瞬間、飛び出してくる影があった
「幸セナ気分デスッテ…?」
濁ったくらい海のような髪に
蒼く光る瞳、
私とそっくりな顔と姿
その姿、その声、その顔と言葉
そして、なによりその波長は
「…山城…なの?」
「オ姉様…」
そう、かつて、敵戦艦へと特攻し
その果てに爆沈した、私の妹
山城そのものだった
「…なぜ…なぜなの?!」
「ナゼデスッテ?私ハ…私ハ憎イノヨ…私ヲ…姉様ヲ虐ゲ続ケタアノ提督ガ!」
それを聞いた直後にわかった
「…山城、提督はもう変わったわ
前の提督はもういないの」
そう、山城は提督が代わったことを知らない、山城が轟沈した後に
当時技師だった提督が着任したのだから、知るわけがない
「だから、もういいの
もう泣かなくていいのよ!」
「嘘ダ!オ姉様ハ騙サレテルノヨ!
提督ナンテミンナソウダ!
ゲスドモ二騙サレテルダケナノ!」
「違うわ山城、新しい提督は
神巫提督は、とても優しくていい人よ…甘粕提督とは違ってね」
「何デ解ッテクレナイノヨ…
オ姉様!」
山城の主砲がこちらを迎え
その瞬間、私は吹き飛ばされていた
「…!躊躇なく発砲するなんて…」
「仕方ナイジャナイ…解ッテクレナイオ姉様ガ悪イノヨ…」
苦しげに表情を歪めながら
それでも砲口は私から逸れない
「それだけの覚悟がある…ってことね
こっちもそのつもりよ
言ってわからないなら…!」
「
長い時を経て、再び向き合った
たった一人の姉妹は、
気がつけば深海棲艦になっていました
それでも私は、分かり合えると信じて
妹に砲を向ける
「…何ヲシテイルノ!バカドモ!」
山城が配下に声をかけるのよりも早く
「総員全力攻撃!手段は問わない!」
私は攻撃の指示を出した
「さぁ…山城!」「オ姉様!」
互いを結ぶのは射線と視線
互いの意地を通すための
たった二人の戦いが始まった
「行きますよ…扶桑さんは姫を相手どるので、戦闘指揮は私が代行します!」
遥か遠くから聞こえる赤城さんの声は、どこか頼もしい、私が全力を集中することを悟ってくれたらしく、指揮代行を買って出てくれた
「fire!…沈ンデ!
ソウスレバ…マタ一緒ニ…!」
「かつての私は、貴女を失うその瞬間まで、ただ見ていることしか出来なかった
でも今は違うわ!
ここで貴女を、取り戻してみせる!」
600話記念番外編は
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……