「…敵が…来ませんね……」
地点丙、地点乙とは打って変わり
不気味なほどに沈黙が続いていた
「油断大敵デース…翔鶴は貴重な航空戦力、落とされる訳には行きまセーン」
そう呟いた瞬間
砲弾が飛んでくる 奇襲だ
「私が行くわ!」
雷が叫ぶけど、それはダメ
私の第四艦隊は
金剛以下、翔鶴、鈴谷、龍田、雷、神風
戦艦や空母を擁したところで、やる事は水雷戦隊そのものなのだから
無理に他のことをするべきではない
制空のためには必要なのだが、本来は空母の翔鶴は前線に出るべきではない
「…それでも人員が足りない以上…仕方ないデース…」
らしくもない、
金剛型の長女は弱音なんか吐かない、もっと強くて、可愛くて
そして誰よりも
「大人なんだからぁっ!」
高速戦艦の不利である中口径主砲の使用不能が、私自身の火力の低さと相まって
『高位の大口径主砲の強引な運用』
以外の選択肢を奪っている
その状態が、皮肉にも私が大口径主砲を引っ掴んで来ても誰も疑問に思わない
異常な状況を作る一助となっていた
「…
お前の火力を…見せる時デース!」
隠していた第三の主砲
それは明石が最近有り余る資材に任せて作った火力の暴力にして
一撃決着専用の超巨大主砲
「コレに対抗するんだったら20インチ砲でも持ってこいデース!」
あぁ、こんな乱暴な言葉遣い
提督の前では出来ないから
通信を切っていて、本当に良かった
「…もう逃げも隠れもないのね…」
「さぁ、死にたい艦は…無駄に多いから省略するわね〜?」
どこからか出現した敵艦の群れ
それに対して、投げる一言は
単なる攻撃宣言だけだった
何処から取り出したのか
薙刀の2本目と共に改を発動した龍田は、単独で敵艦隊に突撃していき
『無双』か何かのような攻撃で
そこら中に爆音をまき散らした
oh…まるでスプラッター映画デース
「金剛さん、来ているわよ」
「了解デース!」
私も同じ意味を持つ一言と共に
副砲と徹甲弾で敵を狙い撃った
「…やれる事はやる、やれないことに無理をしない、その主砲は明らかにオーバーですよ、金剛さん?」
「そんな事は分かってるデース
でも翔鶴だって分かるでショウ
こんな状況になっている以上はどんな手だって使えるものは使うべきデース」
近寄って来た翔鶴に答えながら
私達は敵を完全に殲滅した
「…まだ来るデース!」
いや、そう思っていた
こちらに振り分けられた敵の数は少ない、それでもélite級やflag ship級を擁する大規模な艦隊ではあった
主砲が51センチ単装砲でなければまだ戦闘が続いていたかもしれない
だというのに、追加でこれだ
「でも、ここを守るためには
やるしかないでしょ!」
重巡ネ級を狙撃しながら、
鈴谷が突出、単独で前進する
「な!鈴谷!陣形を乱すのは」
「相手が相手だから密集は危険!
みんなも早く散開して!」
私が鈴谷を静止するよりも早く
艦隊を離脱する鈴谷から
その声が聞こえた
そして
「勘ノ良イ艦娘モ居タモノネ」
翔鶴の展開していた航空隊に、それをはるかに上回る数の敵艦載機の群れが襲いかかり
艦載機同士の空中戦が勃発する
「来ましたね….金剛さん!この攻撃の狙いは私です!早く散開してください!」
「な!ダメよ翔鶴!…貴女が離れたら逆に攻撃が集中するだけよ!」
普段のルー語も消しとばした
余裕のない言葉遣いに溢れる危機感は、たしかに翔鶴に伝わったらしく
翔鶴は艦載機を呼び戻し始めた
「…対空機銃で迎撃して!」
龍田と神風が迎撃に移り、戦線は後退、鈴谷と私は突出して敵艦隊を引きつける
「…せいぜい戦場の華として踊りマショウ!」
「やるしかないでしょ!」
ちょうどよく全面が敵に覆われた状況なのだから、ろくに狙わなくてもいい
大口径主砲を積んだ此方としては有難い事ね
「………ぁっ!」
不運な偶然だった、
龍田の進行方向に至近弾が着弾
水柱を避けて足が止まった龍田に、攻撃が集中する
「ぐぅぅぅっ!…」
普段のような一発ニ発ではない
数十発の砲弾による雨霰
それが、龍田を打ち据える為だけに放たれたのだ
一瞬にして、龍田の艤装は大破する
「龍田さん!」
雷の声はただ戦場に広がって消える
「沈ンダワネ…フフ…サァ次ヨ!」
一隻の戦艦が前に出て来る
ル級フラグシップ、強力な戦艦
私が真っ向から戦っても火力不足で仕留められない、それで大体の耐久はわかると思う
火力も高い戦艦で、多分
「最初に龍田を撃ったのは…お前デスカ?」
数十発の砲弾が降り注いだ以上
それは突発的なものとは言い難い
明らかに計画的に
足止めと攻撃の用意を整えていた
他の艦は足が止まった瞬間に攻撃する訓練を受けていたのだろう
それを狙っていたのが
コイツだと言うなら…私はコイツを許さない
「お前を…沈めてやるデース!」
ジャカン と言う音と共に
主砲がひとりでに動き、照準を取る
それは先ほどまでの大雑把な狙いとは違う、確実に当たると言い切れる精密な照準
「…オオ怖イ…デ、ソウダト言ッタラ?」
その瞬間、私は主砲の引き金を引き、発砲する、躊躇は無かった
「無駄ダヨ」
しかし、それは飛び出して来たイ級が身を盾にして防ぐ
「ギュギィィィィ!」
当然イ級は爆散して轟沈
しかし、ル級は涼しい顔を崩さない
「コレハ私ノ盾ダ…自動デ動クナンテ優秀デショウ?」
「ええそうね、とっても優秀だと思うわ〜?」
ゆるい声が、聞こえた
「駆逐艦を盾にする、そんな戦法、ブラック鎮守府くらいでしかされない物だと思っていたわ〜…でも、今、目の前で行われてしまった
二度と見たくなったものを
見せられたのよ…この怒りが…貴女にわかる?」
離れている私ですら
ゾッとするほどの冷えた声
それは戦場に流れて…同時に
ル級の死を宣言した
「龍田改…第二改放、
『龍田改ニ』」
紫の光が、戦場に溢れた
「私を本気にさせるとは、悪い子ね」
600話記念番外編は
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……