「金剛さんはまだ!?」
「私ガ知ッタコトデハ無イワ!」
「軽巡棲姫さん!上です!」
「トックニ気付イテイル」
上から飛びかかってきた軽巡を片手で串刺しにして、そのまま主砲をブチ当てて
粉々に爆砕してやる
深海棲艦の私は艤装のアンリミテッドモードも何もない、ただ
「弾ノ制限ナンテ要ラナイデショウ」
私が戦場に来て、
一番最初に行ったことは
艦隊全員の艤装のアンリミテッド化
すなわち、
協定内容無視の宣言だった
金剛旗艦の下、
戊地点に集っている4隻
愛宕、空母棲鬼、軽巡棲姫、速吸
うち、艦娘である愛宕と速水の艤装のロックを強制解除して、戦闘時の弾数制限を無効化した
原則として、各装備に存在する弾数上限は一発、戦艦や甲標的などの
特殊条件下で追加一発、となるのが基本、これは深海棲艦と人間の間で
遥か昔に行われた協定の内容であると同時に、艦娘の謀反を防止するための枷でもあるのだけれど…そんなことは関係の無い事
今やるべきことは
この圧倒的多数の敵を切り抜けて
防衛を成す事だけ
ならばそんな制限に囚われていれば
無残に沈められてしまうことは明白
「シネェェ!」
「オ前ガナ」
繰り返し繰り返し、狙っては撃つ
必要なことを、必要なだけ
自分の姫としての能力が
今、何を、どのように必要とするのかを教えてくれる、後はその導きに従って
敵を撃つだけだ
どれほどの時が経ったのだろうか
もう時間認識を切り捨てていたから分からない、それでも研ぎ澄ました聴覚に
仲間の声が聞こえた
「愛宕!右に避けなさい!」
「えっ!?」
その声は、いつのまにか中破していた愛宕に、致命傷を告げるもので
同時に、私の足を動かしていた
「…ッ!」
衝撃が艤装を突き抜けて肉体側にまで伝わってくる
「棲姫さん!?」
「構ワナイデ!
貴女ハココノ最重要戦力デショウ!」
無残に破壊された左腕は無視することにして、撃ってきたらしい重巡の首を飛ばす
愛宕の困惑した声と、
戦場の喧騒を背に、私はもう一度告げた
「防衛戦ヲ再開スル!!」
砲も魚雷も損害は無い、
十分に戦える状態なのだから
前線を退く理由はない
故に、ここに踏みとどまる事を宣言した
「…ッ!」
痛みに歪む頬を隠して、
姫としての能力である、一般の深海棲艦からさらに隔絶した圧倒的攻撃力で殲滅する
しかし、戦いは長く
片腕の傷はあまりにも不利
次第にダメージは積み重なり
動きは鈍り始める
「…ッ!クソッ!」
「ギャハハハハッ!」
「そこっ!」
攻撃は止まず、敵は尽きず
私の血は流れ続ける
そして、ついに
「……モウ…限界…?」
足が動かなくなった、その時に
「キャハハハッ!モウ動ケナイノ?」
遠くから、私を嗤う声が聞こえた
その主人は
「軽巡…棲鬼?」
碧い瞳は深海棲艦の証、黒髪をシニヨンにまとめているその髪型は、
かつて妹と呼んだ者と同じ
「ソウダヨ軽巡棲姫…オ姉チャン?」
「黙レ…血二酔ッタ愚カモノガ!」
私は動かない体に鞭を打ち
全力で足を運んで、
その深海棲艦…鬼級
軽巡棲鬼の前に出る
「姫チャンボロボロジャン、何シテタノー?ッテ、ワカリキッテルヨネ
…ホント馬鹿ナンダカラ」
「オ前ニ言エタ事カ!」
「オット、危ナイ危ナイ
可愛イ妹ニ手ヲアゲルナンテ」
私がが向けた砲の砲身を掴まれて
強引に逸らされる
「オ前ハ何故未ダニソンナ所ニイルノヨ!私ノ代ワリノツモリ?」
「ハ?」
そう言った瞬間、
軽巡棲鬼の視線が強まる
「何言ッテンノ?意味ワカンナインデスケド…代ワリナンテフザケナイデ!
私ハアンタノ代ワリナンカジャナイ!私トアンタヲ一緒にスルナ!」
「……ソウ…
「ダカラドウシタ!
髪を振り乱して怒りを叫ぶ那珂
私の襟首を掴んで揺さぶりながら、凄まじい勢いで叫んでくる
「姉サンガ!姉サンガ!
私ノ前ニイルセイデ!私ハズット代ワリ呼バワリナンダヨ!
ダカラ私ハ姉サンヲ超エル
ココデ…戦イヲ捨テタ姉サンヲ殺シテ!私ノホウガ上ダト証明スル!」
甲高い喚き声は、しかしながら
その意思を明確に示していた。
「死ネ!
「ソウ…ナラモウ、庇ウ必要モナイワネ…那珂、目ヲ覚マシナサイ!」
「ウルサイッ!」
至近距離から突き付けられた主砲が発砲され、それを仰け反って躱した私の目隠しにヒビが入る
「那珂!…私達ハ戦イニ呪ワレテ…沈ンダアトマデ利用サレテイルダケナノ
モウ戦イニ囚ワレル必要ナンテ無イノヨ!」
「姉サンヲ殺シテ!私ガ!私ガ一番ニナル!ソノ為ニナラ利用デモナンデモサレテヤルワ!」
魚雷は至近距離では使えない
故に足を持たない彼女に、
至近距離でできる事は多くない
のだが
「那珂、愚カナ妹…」
「黙レ黙レ黙レ!イツマデモ邪魔ヲシテ!私ノ前カラ消エテナクナレ!」
その拳は、紛う事なく私の額を撃ち抜き
私の目隠しを吹き飛ばした
「…!…イイデショウ、那珂
貴女ヲ敵ト認メテ…姉サンニ代ワッテ、ソノ目ヲ覚マサセテアゲル!」
私自身の青色の瞳を露出して
かつて目を逸らした妹を正視する
「姉サンハ都合良インダヨ!」
「那珂…」
主砲を互いに向け合い
互の目が合うその瞬間
「死ネ!」「遅イ!」
炸裂音が響いた
「ヘイ姫ー!姉妹の再会も良いけどサー?それで戦闘をおろそかにはしちゃいけないデース!」
「金剛サン…?」
「交代に来たのよ、ほら軽巡棲姫、貴女は大破してるでしょう?もう戻りなさい」
「五十鈴…?」
二人の砲声が戦場を切り裂き
同時に膠着していた戦場を、明確に鎮守府有利に傾けた
「イエ…マダ動ケルワ…那珂ト…妹トノ決着ダケハ…着ケサセテモラウ」
「そう…なら止めはしないデース
でも、危なくなったら、撤退するのが一番の手デース、それだけは忘れないでクダサイ!」
「えぇ、モチロン
ダッて、今ノ私ハ鎮守府所属デすモノ」
バキバキと音を立てて
艤装が変化する
深海の呪いを脱して、力を失っていた艤装が、再び叫ぶ
その名は壊変
上級の深海棲艦にのみ許された
装甲破砕による強化変異
「那珂…今の私ノ全力で
貴女を倒ス、ソシテ、鎮守府ニ連れて帰る!」
「抜カセ!深海ヲ離レタ弱者ガ!」
互いの視線は、再び拮抗する
600話記念番外編は
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過去編軍学校
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過去編深海勢
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……