戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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地点己 旗艦長門

「…提督、各地点はやや劣勢といった様子だが、此方にはまるで敵勢力が来ていないぞ、やはり各地点の援護に出た方がいいのではないか?」

〈大丈夫だよ、長門

彼女達は早々にやられたりはしない

それよりもまずは…〉

 

ザジッという音と共に

通信が寸断される、やはり電波障害

深海棲艦か

 

「そこにいるな?…出てこい!」

「アラソウ?ナラ遠慮ナク出サセテモラウワ」

 

物陰から出現したのは、戦艦ル級

「戦艦…!」

 

本命は空母だったが、

流石に戦艦だけあってか

肉体的に強力な深海棲艦が出てくる可能性は否めなかった、その予測が当たったということだ

 

「…やはり戦艦か」

「空母モイルノヨ?」

 

その言葉と一緒に、さらにその後ろから空母棲姫が出現する

 

「久シイワネ、長門」

「黙れ、深海棲艦に名を呼ばれるような謂れはない」

 

「アラ、随分ト嫌ワレタモノネ

昔ハ隣ニ立ッテイタノニ」

「貴様の隣になど立った覚えはない!」

 

「ソウ…別ニ良イワ、貴女ガ覚エテイナクテモ、私ハ貴女ノコトヲ覚エテイルカラ」

 

悠々と微笑む空母棲姫は

軽く手を振って、

背後に合図を送り

 

「な…長門さん!」

その瞬間、砲弾が飛翔する

 

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「何いっ!この!」

 

長門が艤装の端で弾を受け、装甲にヒビを入れながらも弾そのものは通さない

 

「卑怯な!私を素通りして鎮守府を狙うなど何を考えている!」

「勝ツ為ノ最善手ヲ考ケテイルワ」

 

吐き捨てるような一言は

あまりにも燗に障るそれで

 

「黙れ外道が!貴様が元同胞であろうが!そのような非道を行うというのなら

躊躇はない!」

 

長門は裂帛の気合いとともに改を起動、ひび割れた装甲をさらに上乗せしてカバーし直し、より上位の砲を出現させる

 

「今ここで砕け散れ!」

「アラ怖イ怖イ…貴女一人デ私ニ敵ウト思ッテ?」

「知るか!わたしには仲間がいる!」

 

そう叫んだ長門の後ろから

電、清霜と明石の援護砲撃が放たれる

 

「この艦隊は一人じゃないんだよ

お前と違ってな」

「私ニダッテ手駒ハアルワ?」

 

婉然と微笑みながら手を上げて

深海棲艦どもを呼び出す空母棲姫

さすがは姫級と言ったところか

その統制に乱れは伺えない

 

「…手駒と仲間を履き違えているとはな…私の仲間にそんな者は居なかった

もともとそんな奴だったのか

それとも深海棲艦になってからそうなったのかは分からないが、その性根

叩き直してくれる!」

 

主砲が展開され、空母棲姫が呼び出した深海棲艦達を一斉射撃で屠り

 

格闘戦を得意とする長門が突出して

空母棲姫へと殴りかかり

そして

 

「無駄ヨ…私トテ、体術クライハ修メテイルモノ」

「貴様…この重く、鋭い蹴り…

覚えがあるぞ…加賀か!」

 

「蹴リ足デ覚エテイルナンテ思ッテイナカッタワ…エェ、私ハ元正規空母、加賀

ソシテ、今ハ深海棲艦 空母棲姫

長門、久シイワネ」

 

膝を腕で受けながら

長門は笑い、直後に震脚と掌底で至近距離から攻撃、加賀…空母棲姫を押し退ける

 

そして

 

「…輝那NX」

 

一言の呟きとともに、

銀色の一閃が戦場を貫き

空母棲姫の艤装に直撃した

 

「ナッ…ナニ?」

「遅くなったな、姉さん」

 

戦場を裂く一声は

そう、提督から放たれていた

 

「今度こそ、迎えに来たよ」

「…蒼羅」

 

呟く声は、提督の名前を指し示し

提督の目は真っ直ぐに空母棲姫(加賀)を見つめていた

 

「提督、それは空母棲姫だ

加賀ではないんだぞ!」

「関係ないよ、昔にヲ級だった時に助けてもらったし、空母棲姫になったから

むしろ個性がついて分かりやすくなったし」

 

長門の言葉にサラリと返しながら

空母棲姫に正対して立ち

 

「…俺がコイツを倒す、んで、艦娘の加賀を連れ帰る、それでいいな?」

 

「無論だ、だが提督

姫級を相手に単独で戦えるのか?」

「危ないのです!」

 

「長門、電、心配はいいが防衛も考えろ、俺以外が姫を倒すことはできるかもしれないが、俺は長期戦には向かない、だから俺は単独で空母棲姫《姉さん》を倒す、これは俺の仕事だ。」

 

一言、告げて

同時に走り出す

 

「ウフフ…蒼羅!蒼羅!会イタカッタワ!」

「俺も会いたかったよ姉さん」

 

爪やタコヤキの爆弾を躱して

接近する

ネクスエッジの負荷で左腕は半壊、再生に侵食率を割けないので放置

 

反転

 

「…蒼羅、わかっていると思うけど」

「あれは艦娘としての姉さんで、人としての姉さんじゃない事は知ってる

でもそれでも俺にとっては姉さんだよ、それに…魂の侵食の原因、深海の影響は

姉さんの目と腕の刻印だ」

 

俺の魂内のイメージに現れた姉さんは、俺の隣に立って、そっと俺の左腕を撫でる

 

「そこまでわかっているなら十分よ、思いっきりやりなさい」

「了解、全力で戦うよ」

 

それだけ聞いた姉さんは消滅して

 

俺は、大和撫子と輝那を両方抜き

同時に白タコヤキを離陸させる

 

「勝負だ、深海棲艦:空母棲姫(姉さん)

「受ケテ立ツワ…私ノ蒼羅」

 

今まで俺が、深海棲艦の艦載機を使えたのは、俺の魂の中に姉さんの魂が混入していたから、深海棲艦の血と力を一部受け継いだ俺が

深海棲艦の力を擬似的に使えたのも同じ理由、そしてアレフ(白タコヤキ)は姉さんの艦載機だった

ここまで揃えば俺が使えない道理もないという事なのだろう

 

だが、空母棲姫の艦載機であるはずのアレフは未だに俺から離れず、

俺の元で戦っている

それは…

 

今の空母棲姫(姉さん)が、深海の操り人形に過ぎないと知っているから

俺の中の姉さんの意思に従っている

故に、俺の命令の元で

空母棲姫(姉さん)に逆らっている

 

「サァ…来ナサイ」

 

姉さんが手を広げて、

同時に艦載機が湧きあがる

無数の新型艦載機が飛来し

同時に分裂した白タコヤキが迎撃を開始

 

「数デ劣ル以上、迎撃ハ不利ヨ?」

「どうだか…艦載機の数の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてやる!」

 

婉然と微笑む姉さんと

必死の表情で白タコヤキに指示を送り続ける俺には、目に見えて優劣があった

だが

 

「…制空ハ…拮抗…!」

「そこだ!」

 

単純に考えて4倍の数を持つ相手に

まともにぶつかれば勝てないのは明白だ、だが俺には、艦載機そのものが自律行動型という利点がある

 

それをフルに活用して

一体一体に戦況や敵機の位置を伝え続けるハブに徹する事で、艦載機自体の動きを強化、敵が見えているなら攻撃に躊躇はしないし

回避に迷いはない

 

味方を見失わないから

識別の手間はかからない

敵が手間取っている内に攻撃できる

 

情報という形なきアドバンテージ、

それは圧倒的有利として

徐々に戦場を蝕んでいでた

 

「さぁ姉さん!何か言い残す事は?」

 

一瞬注意が上に逸れた隙に接近

輝那NXを突きつけて問う

「…コレデ勝ッタツモリカ?

カワイイネェ」

 

鬼が撤退するときのセリフを呟いた空母棲姫(姉さん)は、そのまま

艦載機用の200キロ爆弾を召喚し、起爆

 

「んぬわぁっ!」

咄嗟に盾にした輝那にヒビが入ると同時に、姉さんが掴みかかってくる

 

「サァ…コレデモ抜ケ出セル?」

 

「いや…[この瞬間を待っていた]」

 

暗転

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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