「押し込まれテイル…!」
「不味いわね、これは戦力不足かも」
軽巡棲姫、空母棲鬼が中破
愛宕は大破している、唯一真っ当な状態なのは速吸だけだ
「…撤退…するべきね」
「愛宕さんはお速く、いま救援を呼びました」
速吸が無線を飛ばして、手当たり次第に要請を出していた救援はようやく身を結び
ついに明るい返事を得られたようだ
「速吸、艦載機はどのくらい残っている?」
「残り六機です…第2スロット2機、第1スロット4機、制空値が足りません」
緊迫した戦場で隙を見せることはできないとわかってはいるが、それでも
報告を出す速吸の表情は暗い
「まだいけるわ…提督のためなら」
煙を上げている艤装をそれでも握り直した愛宕、しかし
「撤退してください、あとは私たちが場を繋ぎます」
空母棲鬼の状況判断は的確だった
それは、愛宕の戦力が大幅に減少していることを考えた上で最良の判断であり
同時に愛宕の心理的には最悪の宣言
すなわち、戦力外通告
「…今の愛宕さんは危険です
弱体化した性能ではこの敵相手には戦い抜けない、沈められるより前に
早く撤退してください」
「………っ!
仕方ないわね…最後の一撃は派手に行くわ!」
声を張り上げた愛宕は
文字通りの乾坤一擲
全砲門を開いた全力の一撃
「これが私の!全力全開
喰らいなさい!」
その高火力を存分に生かした飽和攻撃を展開する、その弾幕密度は単独でありながら水雷戦隊一個分にも匹敵するほどのものであり
彼女自身の鋭敏な感覚を生かした
超精密な照準を以って
敵陣へと全力放射された
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
爆発とともに周囲を全力攻撃、全弾薬と引き換えに制圧した愛宕は
清々しげな表情で微笑むと
「それじゃあ入渠、行ってくるわね」
踵を返して去って行った
「…やるだけやった、と言わんばかりだけど…」
「さすが重巡、大破してても最大火力は尋常ではない…」
「コレガ重巡ノ火力…ソノ全力…」
全員ドン引きである
頭ぱんぱかぱーんなだけある火力は深海側にも引かれていた
「…で、交代はワタシ!
なんだけど…」
そこに現れたのは、艤装のペイントを赤く変えたレ級、その姿は赤い彗星
…なのだが、その派手さは
発揮されるより前に愛宕の蛮族的制圧によって完全に潰されていた
「…えぇ…」
レ級の出現という本来なら艦隊も騒然とするはずの事態でも完全スルーである
「………えぇ……」(二度目)
「あ、空母棲鬼さん!赤いレ級が!」
ようやく気づいた速吸が慌てて流星隊の発艦を急ぎ始めるが
「大丈夫、味方よ」
「アレは大丈夫なレ級ヨ」
同僚二人(深海出身)に止められる
「えっと…」
「ドーモ、速吸=サン、レ級・アズナブル デス」
お辞儀しながら砲撃して速吸の後ろにいたヲ級を爆散させるレ級、
上級深海棲艦でありながら、基本的にリーダー格のワンオフである姫や鬼と違って視覚的には見分けのつかない棲艦であるので
こうして艤装を塗り替えて
目立つようにしてきたのだという
「味方から撃たれたくは無いし
攻撃するのもされるのも嫌だけど
まぁ、こうやって守るために戦うのは悪く無いと思うヨ…キャハハッ!」
流星の制空値が減った分を埋めるように大量の艦載機を召喚して
爆撃を仕掛けるレ級、
深海棲艦の中では『目立たない姫級』である軽巡棲姫や艤装そのものからして巨大な空母棲鬼を見事に躱して、敵にだけ爆撃を届けている姿は、見事としか言えない
「この戦場…真打はワタシだっ!」
「チョット!突然出テ来タポット出ナンカニ!センターハ譲ラナイカラ!」
笑イ声被ッテルシ!と怒り心頭といった様子で軽巡棲鬼が攻撃を仕掛ける
六重の連謡唯一の鬼メンバーだけあって、直接戦力には一歩劣るが
統率指揮能力はそれなり以上のものを持っているようだ
「沈ミナサイ!沈ンデ!」
砲撃を繰り返す軽巡棲鬼だが
それは結局、凄まじい速度で回避行動をとるレ級に当たらず、しかもレ級の位置取りと回避軌道の変化に目を奪われてその後ろに隠されていた深海棲艦達にフレンドリーファイアを起こしていた
「クソッ!」
鬼としての威信をコケにされて
黙っていることもできないが
無駄に攻撃すれば味方に被害を生むだけだ
攻撃を止めれば撃たれる
攻撃を続ければ味方に被害が出る
軽巡棲鬼は今、究極の二択を突きつけられていた
「ソレデモォッ!」
砲撃戦を停止した軽巡棲鬼が
ニヤリと笑うレ級へと突進、格闘攻撃を仕掛ける
「なるほど、考えたナ…コレがお前の答えカ」
だが、軽巡棲鬼は忘れていた
自分が鬼級の個体であっても
相手が自分よりも矮躯であっても
相手は『戦艦』であるということを
「ハァァァッ!」「だが甘いナ」
凄まじい速度を伴ってふり抜かれた拳を掴み取るレ級、そしてそのまま
軽巡棲鬼を腕一本で捻りあげ
派手にへし折りながら放り投げた
「オラァッ!」
「ギャァァァァアッ!」
「さア、軽巡棲姫、妹トお話ガあるんダロウ?」
「エエ、サァ那珂
死ナナイ内二話シマショウ」
「ヒェェン…」
激痛に腕を抑えながら涙を堪える
「さて、ワタシ達ハ殲滅ダ!
速吸!空母棲鬼!」
「了解!」
「私に指図していいのは提督だけよ」
配下として統率されていたはずの深海棲艦達は、自分たちのリーダーだった
軽巡棲鬼を一方的に撃破する
戦艦レ級の圧倒的な攻撃性能に恐れをなしたか、誰も積極攻勢には出てこず
足並みを乱した烏合の衆など
流星全開の速吸の一撃の前には海の藻屑以上の何かを持つことはなかった
《ウワァァァ!》《逃ゲロォォツ》
「沈みなさい」
速吸の一撃は重かった
600話記念番外編は
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……