「提督、私は行かせてもらうぞ
『借りを返す時』が来たようだ」
「…そうか」
返事はたった一言
相変わらず愛想のない男だ
だが、それでいい
「本人からの連絡でないのは残念だが、まぁ提督として真っ当に成長して…
『艦娘を使う』事くらいは覚えたらしい、人に頼りたがらない小僧がよく伸びたものだな」
「そうだな」
相変わらず、返事は一言
そして、私の言葉も一言だけ
「行ってくる」
そうして私は海に出た
「さあ、冷たくて素敵な酸素魚雷、本当の力を叩きつけてやるのよ!」
大井さんが改二を発現させ
画像を一瞬で修復
それを予見できなかった雷巡チ級は、最大のチャンスと特大の地雷を見間違い
見事に踏み抜いた上で…
それは派手に爆発した
「さすが…凄まじい威力ですね」
大井改二、初期装備の魚雷は
61センチ(酸素)魚雷
極めて強力な代物である
それが故に少々運用コストも厳しいのだが、それはそれ、雷巡という
『希少な』『高い決定力のある』艦を運用する上での必要経費と考えてあげよう
仕方ない仕方ない
「…といえるなら楽なんですが」
そうとはいかないのが世の理
そもそもやる気もなかったかつてのことは置いておいても、勤めていた期間に比して
大井の練度は高くなかった
当然ながら、ポンポンと改二を発現できるようなものでもない上に、通常よりも難易度の高いとされる艦種変更に類する改二、
今の今まで、発現の気配すらなかったのだが…それが突然に発現した
「海の藻屑となりなさいな」
その言葉は、今までとはまるで違ったリアリティを持って戦場に響き
同時に魚雷の発射音が鳴る
次から次に、大井の言葉を聞いたものから沈んでゆく、それは機械的に
極めてシステマチックに
撃沈という結果だけを押し付ける
「…フィニッシャーとは知っていたが、まさか連続攻撃までできるとは」
私の呟きはなんの引き金となったのか、大井さんの魚雷はついに一斉散布され
「味方の攻撃で沈まないでよ?」
「誰に言っているんですか?
私なら艦載機の手動制御中でも十分回避できますよ」
秋雲さんの軽口に
同じく軽口で応じながら
赤城さんは微笑んで
その血に染まった袖を振る
「さぁ、行きなさい!烈風!」
再び放たれた烈風隊が猛威を振るい
次々に爆撃が繰り出される
無論、私だって砲撃する
雷撃、空爆、砲撃
普段決して同時に行われない三種の攻撃が、いま、同時に展開されていた
少なくとも戦術的勝利を確信した扶桑は声も高らかに勝利を宣言して
「これで…終わりです!」
「イヤ…マダダヨ」
どこかで、声が聞こえた
それは戦場に絶望を告げる声
破壊の使徒、戦艦レ級の登場であった
「レ級!?」
「戦艦レ級っ!」
小柄な体とは裏腹に
圧倒的な高出力を誇る戦艦
のくせに爆撃砲撃雷撃全てに対応する五段攻撃艦、全方位に隙のない
『ぼくの考えたさいきょうの戦艦』を詰め込んだような性能を持つ悪魔
戦艦レ級の登場だった
高速を駆使して駆け回るレ級は
多重の攻撃を回避続け
艦載機を発艦させて
全ての攻撃にカウンターで返していく
見事なまでの上手であった
「まずい…押される!」
先に射掛けている私は砲戦特化の性能に比しては防御力の低い旧式艦、性能的には最新鋭艦も凌駕するレ級相手に、ダメージレースは分が悪すぎる
「サァ…沈ミナァ!」
レ級はその大口径砲を構える
無論、まだ戦場には
「くっ…」
「烈風隊まで…ついに被害が」
どうしても発着艦には隙が生まれるとはいえ、今の今まで完璧にカバーしていたものだ
その超高性能機体が、ついに撃墜された
タイミングもあっただろう、数の差もあっただろう
赤城自身も疲労していた
しかしそれらはなんの意味もない
戦力の減少、赤城の戦闘能力はほぼ全損した、そう評価がつくだけだ
そして、その戦力減少は
制空に大きく影響を与えた
「空ハ貰ッタナ!」
レ級が出した艦載機に押された制空権が深海側に偏り、ここぞとばかりに
水偵が飛んでくる
「弾着観測射撃が来る…!」
「クソッ!」
大井さんの方が悪いが、
言いたいことは皆同じである
〈支援機はもう行ってるが…〉
戦闘機とはいえ、敵艦載機は高性能、普通に撒かれて落とされて、提督の遠隔操作する零戦は簡単に数を減らしていく
そもそも人間の提督が数十の艦載機を操って、真っ当に戦わせられるはずもなく
有人制御とはいえど
その機体をまるで活かせていない
一旦は増援で盛り返した制空値もそんな有様ではすぐに落ち込んでしまう
〈すまん〉
「気にしないでください
私が弱かったのが原因ですから」
赤城の言葉はあまりにも寒々しい
「ソウネ…提督モ弱イシ、赤城モ弱イワ」
通信を傍受していたのか
海峡夜棲姫がニヤリと笑う
「残念ナガラ…艦隊ハ全滅シテシマイマシタ…マタノ御来店ヲオ待チシテイマス…フフッ」
〈誰が許すかこのっ!〉
「誰ガ許サナカロウト、事実ハ事実、提督ノ無能ト、艦娘ノ不手際ガ招イタ悲劇ヨ」
笑いながら海峡夜棲姫は
配下の戦艦と共に弾着観測射撃を発令、一斉射撃が開始される、その寸前
〈悪いね、遅くなって〉
さらに通信が入ってきた
〈ひゃっはぁー!者共 かかれー!〉
その声と共に、次々飛来する
『試製烈風後期型』や『零戦52型』
発艦させたのは…隼鷹改二
「義によって助太刀するぜ!」
相変わらずハイテンションな
彼女の参戦であった
600話記念番外編は
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……