戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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地点丁 鏡写しの翼

「見セテモラオウカ、金剛改二丙ノ性能トヤラヲ!」

 

「fire!」「フッ!」

 

戦艦とは思えない鋭角的な軌道で回避を決めた戦艦棲姫は格闘戦狙いなのか

急激に金剛へと接近してきて

 

翔鶴に殴りつけられた

 

「私だって鍛えています」

 

神速の一撃、その姿はまさに烈風…いや、艦載機の方ではなく物理現象の方で

 

「貴女のやり方には、私だって怒っていますから!」

「ナラ ソレ相応ノ『力』ヲ示シテ見セロ!」

 

大日本帝国海軍 第五航空戦隊所属の正規空母『翔鶴』は空母の中でも足の速さで有名な五航戦の片割れ、護衛駆逐艦を置き去りにしてしまうほどのspeedを持ちながら、それを普段は封じてまで戦列を維持することに注力する生真面目な性格の艦娘で…『この翔鶴』は特異性として

 

提督から機械メンテをlearningした機械工としてのskillを備えているのと同時に

鎮守府でも数少ない、肉体的にも鍛えている…いわゆる動ける艦娘の一人でもある

 

怒りが理性を凌駕する

それは本来、艦娘の暴走に繋がりかねない危険な因子なのだけれど

今の翔鶴はそんな不安な感覚もなく、当然ながら理性を失ってもいなかった

 

「私の拳は…少々軽いですが

その分早いですよ」

 

その動き方はボクシングなどの積極的な殴り系の動きではなく、どちらかというと合気道のようなカウンター系の動き、しかし積極的な攻撃も充分できるような物らしく、動きは鋭い

 

「翔鶴!」「はい!」

 

私の掛け声に応じて翔鶴が離れた瞬間、私たちは総出で戦艦棲姫に砲撃をたたき込んだ

 

「ハァッ!」「ガゴギヤガァァァッ!」

 

その大半は即座に装甲を展開して

防御の姿勢を取った戦艦棲姫の艤装に弾かれてしまったが、それはそれ

 

硬直を強いることはできた

というあたりで満足しておき

同時に次の攻撃のための布石として、生まれた時間を消費する

 

「行って!」

雷の叫びと同時に、魚雷が飛んでくる

 

それを目眩しにして、砲を再装填、しかるのちに再び砲撃する

 

「もう一度!」

「甘インダヨ!」

 

翔鶴の動きにもう対応してきたのか、戦艦棲姫はカウンター狙いの翔鶴に対して

同じく拳を合わせてみせた

 

「…」「うぅ…」

 

戦艦棲姫は分離型の艤装とはいえ、姫級の深海棲艦、そやの能力は極めて高く

無論、拳の一撃も相応に重い

 

「姫トシテ、私ハ負ケンゾ

私トテ姫ノ意地ガアル!」

 

覇気を纏った威容のままに

拳は翔鶴へと向けて振るわれて

 

鈴谷に止められた

 

「提督の艦隊に…轟沈はない」

「ナ!貴様ハ!」

 

あからさまに動揺する戦艦棲姫に

微笑みかけた鈴谷は答える

 

「私?私は鈴谷、ただの艦娘

最上型重巡洋艦三番艦 鈴谷!」

 

鈴谷はそう言い切ると同時に

装甲板で防いでいた拳を弾き

 

拳に副砲を叩き込む

「さぁ、これ以上やるなら鈴谷が相手になるんだけど?」

「……チッ!…」

 

なぜかその言葉を聞くや退く敵艦隊

 

「…ハァ…戦艦棲姫サンハムコウニ回ッテクダサイ、此処ハ私ガ受ケマス」

「しかし、鶴ノ…相手ハ」

「知ッタコトデハアリマセン

私ノ相手ハ姉ダケデス」

 

一言で戦艦棲姫は退いて行ったが

今度は見たことのない姫級

 

いや、見覚えのある外見の姫級が、翔鶴たちの前に立ち塞がった

 

「瑞…鶴…?」

 

「翔鶴姉」

 

対照的な格好の二人は、ただその髪の色だけを似せあったように非対称で

どうしようもなく敵対していて

その思いはすれ違っていた

 

「…提督ノタメに…沈ンで」

 

凄まじいまでの数をもつ艦載機が発艦して、さざめく音と共に空を埋めてゆく

「させないっ!」

 

鈴谷達は発艦直後の動きを狙って

艦載機達が速度を出して高度が上がるよりまえに撃ち落とそうとするが、その程度の動きは予測済みと言ったところか

 

尋常ではないほどの速度で突進しながらの艦載機発艦は異常なまでにスピーディで

母艦から速度を得た機体は即座に上昇していく

 

「この動きは…!」

 

五航戦が得意とする高機動戦闘

その始まりの一手と同じ動き

 

翔鶴も負けじと自らの艦載機達に指示を送るが、相手の機体性能は圧倒的に上

いくら高度というアドバンテージがあっても、即座にひっくり返されてしまう

 

「…不味い…」

「沈んデヨ…翔鶴姉、提督ノタメに

提督ガ苦シンでるの…」

 

「提督って…誰のこと!?」

「決まってるじゃない…神巫提督よ翔鶴姉、そんナコトモ覚エテいなイ訳無いでショ?」

 

それっきり会話を打ち切って

艦載機の操作に注力する深海鶴棲姫

 

その声に金属質なバイアスは掛かってこそいるが、中途半端にひび割れたままで、しかしそれが、完全に深海棲艦-深海鶴棲姫としての存在が完成しているわけでは無いとも思える

 

「やはり、瑞鶴…」

「ミンナ 沈メ…」

 

翔鶴の呟きに応える

深海鶴棲姫のその声は

あまりにも悲痛で、そして力を帯びていた

 

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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