戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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地点戊 人の心の温かさ

「修理完了したばっかりなので、まだ最大出力は禁止ですよ?…使っちゃダメですからね?」

「了解、最大戦速っ突貫する!」

 

「言ったばっかりでしょうがぁっ!」

 

深海棲艦の生体艤装は修理困難と聞いていたのに、物の十分十五分で修理されてしまった軽巡棲姫は、やや困惑しながらも戦闘を再開、

第二戦速で十分に戦えていたものの、しかしそれでは那珂に追い付かれてしまうと考え

 

制止された最大戦速に手を出した

 

「…行きますよ…那珂!」

「裏切リ者…死ネ死ネ死ネ

死ネ死ネ死ネ死ネ」

 

もはや何を言っているのかわからない那珂を追い詰めるために強引に加速した軽巡棲姫

その最大戦速は先ほどまでの全速力よりも余程に早く、危うく足を滑らせかけて焦る

 

「速イッ…」

「そりゃそうでしょう」

 

レ級の言葉に、

腕章付きの明石が答える

「私は仮にも二級艤装技師(デュオデ)ですよ?ちょっと調子が悪い程度の状態の艤装なら、完全修復だけで済ませるような手抜きはしませんって」

 

普通、生物には

肉体的なスペックの限界値とは別に、出力の上限としての限界値が存在する

 

それは体の使用環境や体構造の問題であったり、脳の無意識に掛けるリミッターだったりして、状況によっても変わるのだが

それがなぜ掛けられるのかというと

スペックの限界値の力を出せば

体の方を壊してしまうからだ

 

なぜ体の方が壊れるのか、肉体の耐久性はスペックの上限に耐えられるように

作られていないからだ

 

つまるところ、無駄なところに力がかけられて、分散してしまうから

無駄な負荷がかけられて

体の方に先に限界が来てしまうせいである

 

なら、機械ならどうか?

機械ならば話は違う

機械であるならば、最初の前提が違ってくる、スペック上の限界値を使うことを前提とした耐久性が設計段階で既に要求されるのだから

それに耐えられるように作るのは当然

 

なら艦娘ならば?深海棲艦なら?

その答えは今示された

 

艦娘の場合、深海棲艦の場合は

 

機械同様に、本来ならばスペックの限界値の方を使う事ができる

だが、その負荷によって体を壊す事を本能的に忌避する脳が、出力の限界値を勝手に設定して、リミッターをかけてしまう

 

「その体が、負荷に耐えられる事を知らないから、ね…だから私は教えてあげたんです

『この体は、その程度の負荷に負けない』って…ね、簡単でしょう?

軽巡棲姫さんは今…スペックの限界値の方で体を使っているんですよ

いわゆる、火事場の馬鹿力ですね」

 

提督ならば絶対にしないチューンナップ、だが明石にそれを躊躇するような

真っ当な感性はなかった

 

「深海棲艦の艤装なら…私、ちょっと慣れてるので」

 

微笑む明石は、ちゃんとした戦闘経験もある元深海棲艦、ただの明石ではないのだ

 

「まぁ、出しちゃったものは仕方がありませんからね…さぁ、やっちゃってください」

「…エェ…コレならヤレるわ」

 

力を取り戻した軽巡棲姫(神通)

圧倒的な力を得て、しかし無理な艤装運用が故に徐々に消耗していく軽巡棲鬼(那珂)

 

ここでの姉妹喧嘩は

姉側が有利に立ち始めていた

 

「行きますよ…突撃っ!」

 

神通の突撃に対応が遅れる軽巡棲鬼

 

「力は圧倒的でも、ソレヲ束ねる意識が隙だらけネ…ソコヨッ!」

「グゥゥァァッ!」

 

神通の砲撃に、動物的な挙動で反応して、身を捻った回避は成功

軽巡棲鬼は砲撃を回避し切って

 

その瞬間に追撃の魚雷を突っ込まれた

 

「何ガ…ッ!」

 

もはや意味は残っていない反射的な発話、しかしそれは神通にとっては

妹を取り戻せる可能性として映った

 

「行きまスヨ!」

「エェ…タイミング合わせて、一斉攻撃!」

「弾着観測射撃!行クゾ!」

 

軽巡棲鬼が吹き飛ばされた隙をついた艦隊は、一斉に全力攻撃を開始

水偵が飛び、流星が発艦

深海艦載機の艦爆隊が次々に飛び立つ

 

「ハァァァッッ!」

長い裂帛の一声と共に放たれる一発、ただそれだけに集中した神通は、全力の一撃を見事直撃させてみせた

 

「全力攻撃ダ!」

「行くわよ!」

 

弾着観測射撃を発動して連続砲撃するレ級、秘蔵の艦爆隊を全力で放出して

一気に決めにかかる空母棲鬼

 

爆撃、砲撃、雷撃の三連攻撃が軽巡棲鬼flag shipへと襲いかかり、その装甲を爆砕し

艤装コアたる深海樹華を破壊した

 

「ガァァァぁぁぁああっ!」

 

装甲を失い、艤装コアを砕かれ

その艤装は完全に破壊され

深海棲艦 軽巡棲鬼flag shipは轟沈した

 

「アァ…私ハ…沈ムノ…カナ

アノ暗イ…海底ニ…

えっ?浮上…している?まさか

 

そう、なのね…ありがとう」

 

 

 那珂 が鎮守府に帰還しました

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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