戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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地点己 

「清霜、大丈夫か?」

 

「…はい、長門さん」

 

主砲の給弾不良、そのせいで硬直した私を庇った長門さんは、敵の砲弾の直撃を受けて、装甲を破壊されてしまった

 

「清霜、立てるな…うん、それなら良いんだ…」

 

それきりに言葉を切った長門さんは

さらなる砲撃を受け止める

 

「ぐっ…どうした!この長門がその程度で倒れるとでも思ったか!長門型の装甲は伊達ではないぞ!」

 

「長門さん!腕がっ!」

「気にするな!」

 

私を抱える左腕は、真っ赤な血に濡れていて、それを知らぬ振りなんてできなかった

 

「私は長門、戦艦長門だぞ?

核爆弾だって耐える装甲があるんだ

この程度の砲撃、なんでもないさ」

 

笑いながら振り返る長門さんは

砲撃を受けて小破した艤装パーツをパージして、そのまま前進する

 

「…さぁ、私は逃げも隠れもせん

勝負と行こうか…深海棲艦共!」

 

「ヌカセ!」

「旧式ノ長門如キ!」

「コノ数相手ニ何ヲ言ウカ!」

 

深海棲艦達は口々に長門さんを嘲笑って、撃ち切った主砲を再装填する

 

「…やらせない…」

 

着弾の衝撃で倒れたままの私は

地面に伏したままで手を握る

 

このまま、何をせずにただ見ている事なんてできない

 

 

「私は提督に誓ったのだ!

駆逐艦は絶対に守り抜いて見せると!故に、清霜は沈ませない

私がここに居る限り、清霜だけは守って見せる!」

 

右第一主砲を投棄した長門さんは

残る左の主砲で砲撃して、副砲と併用の連撃を繰り出す

 

「沈め深海棲艦共!」

 

その叫びは、傷ついていても変わりなく、強く戦場に響き渡る

 

「これが私の…生きる道だ!」

 

傷ついた右半分の艤装をパージしてなお、その火力は圧倒的に高い

 

火力99は確かに伊達ではないのだ

「ダガ…ソレガ万全デナイナラ話ハ別ダ!」

軽巡級の小柄な個体が高速で移動して、砲撃の隙間を縫っていく

もちろん、長門さんも

ただ撃っているだけじゃないんだけど、それでもやっぱり砲門が減ったせいで

隙間を埋め切れなくなっている

 

「ふん、その程度の策とも言えないお粗末な手法、想定していないとでも思ったか?」

 

長門さんが取り出したのは

「爆雷…?」

 

本来長門さんが使うような装備ではないそれを、どうするのかと思えば

 

「ふっ!」

 

野球ボールのように握られたそれは

風を切る鋭い音と共に空を翔けて

 

投擲されてホ級に直撃した

 

「よし!」

「イヤヨシジャナイガ…クレイジー過ギル…付キ合ッテイラレナイ」

 

「だからと言って逃しはせんぞ!」

 

あまりに予想外な投擲に苦言を零す深海棲艦達に、有無を合わせぬ無慈悲な爆弾がとんでいく

 

「馬鹿ナ!」

「クソッ!反撃ダ!」

 

本来のそれをはるかに超える威力に焦り出した深海棲艦達は一気に反撃を試みる

そしてそれは、成功してしまった

 

「総員!主砲一斉射!」

「弾着観測!」「連撃イクゾ!」

「カットイン入リマス!」

 

一気に攻撃を再開した深海棲艦達の様々な攻撃が飛来して、長門さんの装甲を焦がしていく

 

「まずい…あまり喰らっていては装甲がもたない…敵艦隊もなかなかやるな」

 

しかし、長門さんもそれは承知の上だったらしい、余裕の表情のまま

改を維持しつつ、砲撃を再開

火力の暴力で攻める

防御を完全に装甲任せにした回避を考えない突進戦法、本来なら絶対に取られないそれを

長門さんは採用していた

 

「いくぞ!攻撃一辺倒の強みを見せてやる!」

 

「無茶ヲシテクレル…ヤレ!」

敵の後ろから戦艦が出てくる

やっぱり砲門が減った影響は隠し切れていない、普段の長門さんなら

敵が出てきた時点で撃っている筈なのに、長門さんは手前に居る敵に集中して攻撃を続けていて、能力の低下を如実に感じる

 

「この…っ!」

 

また私の方に飛んできたっ!?

 

「ぬん!」

 

飛んできた砲弾を受けるために咄嗟に対ショック姿勢をとった私は

襲い来るはずの衝撃を待ち受けて

 

そしていつまで待っても、衝撃はこなかった

 

「清霜、いつまでそうやっているつもりだ?」

 

代わりに来たのは、長門さんの声

 

「言ったはずだぞ?私がお前を守るとな」

 

優しくて、とても温かい声

「…長門さん?」

 

「あぁ、私だぞ」

 

私の方に飛んできたはずの砲撃を受けて立つその姿は、私のなかの英雄(武蔵さん)に重なる

 

「長門さん!」

「ん、抱きついてくるな、

お前は軽いからいいが、今は普段ごろではなく敵前だ」

 

あっさりと長門さんに止められてしまった私はすごすごと引っ込んで

 

「頑張って、長門さん」

最後に一言だけ、応援を残す

戦艦同士の撃ち合いに割って入れるような火力なんて私にはないから

ただ見守るだけになる

その前に最後に一度、一言だけでも、長門さんに伝えたかったから

 


 

頑張って、とは言われたものの

私の艤装は限界に近い

 

痩せ我慢もここまでくると芸術の域、とは私自身がかつて加賀に言った事だが

それが私自身に回ってくるとは

なんとも因果なものだ

 

「…何度でも答えよう

私は負けない、何せ私の後ろには

守るべき駆逐艦(子供)が、清霜がいるのだから!」

 

最後の一度の攻撃のために

気合を入れ直す

どうせ最後の一撃、これを撃ち切ったら弾切れになるし、私自身も限界になるだろう

 

最後の一撃、せいぜい派手に決めてやる

 

「全砲門開け!主砲一斉射

てぇーーっ!」

 

全力の一撃が放たれた瞬間

敵からも最後の反撃が飛んでくる

 

「あぁ、これは…終わったかな…」

 

そんなことを呟きながら

私は全身に爆発を受けるのだった




アンケート締め切りは本日18:00となります

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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