「龍驤さん!五十鈴さん!
持ってきましたよ対潜装備!」
しばらく経って、五十鈴の対空装備を抱えて行った漣のかわりに
交代に来たらしい長良が叫ぶ
そう、送り出したはいいけど
冷静に考えれば漣は大破状態だった、つまるところとんぼ返りとはいかない訳で
交代の艦娘に交換用の対潜装備を持ってきてもらう、というのは当然の話だった
「よし、これで対潜でも戦えるわ!ありがとう!長良さん」
「はい!気にするほどでもありませんよ!」
長良は笑顔で自分の抱えていた装備を五十鈴に渡して、五十鈴もようやく戦えると笑顔を綻ばせる
「よし、いけるぞ!」
装備を交換して、対空装備の方はとりあえず艤装の空きスペースに放り込み
高速とは言わないまでも
戦場で武装を交換する五十鈴
流石に龍驤のように戦闘中に、どころか使用中に武装を交換などは出来ないが
五十鈴もかなり器用である
「さぁ、やってやるわ!対潜攻撃再開よ!」
「はいよ!」
「…まぁ良いか」
叫ぶ五十鈴に合わせて
龍驤と木曾が一斉に勝負に出る
「潜水棲姫…ここで沈める!」
「甘イワ…私ダッテ深海棲艦ノ中ノ強者 『姫級』ノ深海棲艦ナノ!ダカラ!ソウ簡単二ハ負ケナイ!回避率ノ高サガ…私ノ!私達ノ!売リナンダカラ!」
叫び声は途切れず
全力の咆哮は深海から登り海面を貫いて空へと駆け抜けて、私たちの元へと飛んで来る
「私ガ!潜水棲姫!
深海ノ真ノ姫ダァァァッ!」
絶叫、それは大量の魚雷を伴って
私たちの元へと殺到して
叩き落とされる
「馬鹿ね、貴女は所詮負けヒロインよ、潜水艦のチビ如きが私の道を遮るな」
五十鈴が魚雷を打ち落としたのだ
「暴力系ヒロインナンテ今時流行ラナイノヨ!ドキナサイ五十鈴!」
「その言動でアンタが誰かはよくわかった…いつのまにか沈んでたのね…阿武隈」
「え…?」
長良はキョトンとしているが
五十鈴には何かが通じたらしい
「アンタが陰湿な事するってんなら…ここで沈めて…丁重に弔ってやるわ!」
「ソコデ弔ウッテ出ルアタリ
人ノ良サガ滲ミ出テキテルト思ウンダケド…ハァ…」
ため息をこぼした潜水棲姫
「マァデモ、深海棲艦ハ艦娘トハ違ッテ、艤装ノ制限ガ無イ、姫級深海棲艦トモナレバ…コノ程度っ!」
急激に数を増した魚雷がさらに放たれ、水中で連続爆発する
「まずいっ!」
水中爆破、水は衝撃が伝わる速度が空気よりはるかに早い、そしてエネルギー的なロスが非常に少ない
水中での魚雷連続爆発とは
潜水艦自身をも危険に晒す
いわば自爆にも等しい強引な戦法
だが、その危険を代償に
戦力的に完全に勝っているはずの艦娘達を一斉に攻撃できる
「更ニィ…コウ!」
拡散する爆発は超巨大な波紋を形成し、同時に水面をを跳ね上げる
そこから生まれた波に乗って
深海忌雷があらわれる
「躱セルカシラ?」
「あれは…機雷っ!?」
長良の声で艦隊全員が警戒に入る
「アホ、んなもんぶっ壊したるわ!」
「なんなモンに当たるかってんだ」
龍驤と木曾は啖呵を着るものの
艦隊のトップであるビスマルクは渋面のまま
(アレを私が回避し切れるかどうか…間違っても当たってはいけない代物相手に
初見で完全回避できる?
それよりあの二人の対応力にそこまでの期待値が取れるの?)
ビスマルクは創海鎮守府に来て日が浅い、故に龍驤のことを知らないし、木曾の球磨型故の能力の高さも知らない、それは無知という毒
知らないということは
時に恐怖や躊躇を振り払うものであり、同時に効率を落とし、足を竦ませ、回避を強いるものでもある
「くっ…」
(まずはあの機雷…、アレの性能を確かめる!…それに必要なのは…)「木曾!」
「なんだ!?」
「あれの対処、貴女にできるかしら?」
しかし、ビスマルクは聡明だった
自分が知らないのなら、他者はどうか
それを尋ねるだけの知恵があった
自分が物を知らないことを知っているという、理想の知恵があったのだ
「出来る!でもぬぉぁっ!?」
惜しむらくは、それを実行するまでに、一瞬のタイムラグがあったこと
その一瞬が命取りになると
「木曾っ!」
「ぬがぁっ…こんのぉっ!」
ベテラン艦娘である木曾は深海忌雷の事を知っていた、当然ながら、それを使う敵とも交戦経験があった
故に、何度も迎撃してきた
ただそれが
『目の前に』『突然』浮上してきた時にまで、十分な余裕を持って対処できるかといえば、それは『否』
機雷の爆発、そしてその前に
確実に爆破を当てるための触手による拘束と、見かけによらない高速での接近
三段階のプロセスは、
なんら滞る事なく実行された
深海忌雷は、ぐちょずちょと気色の悪い音を立てながら木曾の四肢を絡め取り
容易に引き剥がされないように
木曾自身の肉体部分に密着して
とても一隻の軽巡洋艦そのものなどとは思えない、白く、細く、
そして柔らかい肢体を締め上げて
苦悶の声を上げる、その源へと擦り寄って
体の中心部、丹田の位置で起爆した
「がぁぁぁっ!」
「木曾!」
ビスマルクの砲では強力すぎて、木曾ごと巻き込んでしまう、かと言ってただ無視している訳にはいかない、龍驤と五十鈴の対潜連撃が無ければ姫の攻撃が更に増す、長良は忌雷の密集地帯が故に回避・迎撃で手一杯
ここに来て、進退極まる状況
「早くどうにかしないと!」
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