(頑張れ大和!)
頭の中で自分を鼓舞しながら
ゆっくり、接近してくる二人
白露と吹雪を迎え入れる大和
敬礼して近寄ってくる二人に軽く手を振って、自らの余裕を示しておくのも忘れない
「大丈夫ですか?信号弾なんて上げて」
「大丈夫、今のは天龍さんの位置信号よ、私があげたものじゃないわ」
流石に学習してきているのか、無闇に突っ込んでくるのはやめたらしい深海棲艦たちが
遠巻きに見てくるのを尻目に
笑顔まで見せている
「こっちの姫級は討伐済み、もう大丈夫ですよ…あとは残敵の掃討戦です
…なんですけど、とにかく数が多くて苦労しています、天龍さんも初春さんも
弾薬を使い尽くしてしまったので、一旦撤退して補給と入渠の方にまわりました」
「了解です、大和さんは?」
「私は…まだ燃料も弾薬も安全圏内です、十分戦えます…そんな心配そうな顔をしないで?私は大丈夫だから安心してね」
「「はい!」」
いい子たちだなぁ…なんて
笑いながら、
大和は頭の片隅で作戦を立てていた
(…まず、駆逐艦二人は戦力として運用できる水準とは言い難い、圧倒的な数に対抗するのであれば、同じように圧倒的な数で対抗するか…私のように質で量を圧倒するか、そのどちらかとなるはず
策で量的不利を覆すのが最良とはいえ、こんな戦場では真っ当な策など打てない
考えなさい大和、二人はどう使うのが最善なの?)
一方で、吹雪も大和と合流した後の事を全く考えていないわけではなく
そもそも天龍と合流するつもりだったのだから当然でもあるが、ある程度の作戦は用意していた…出撃前に提督が提示した作戦のうちの、少人数で実行可能なものを丸暗記した程度であるが
…決してカンニングとか言ってはいけない
「さぁ吹雪さん、白露さん、行きますよ…陣形は単縦陣から、パターンA-2、本来はもう一人必要ですが、今回は私が突入するので、一人で十分です」
「了解」「はい!」
二人の返事を確認して
大和は前進を始めて…それを確認した深海棲艦達も続々と応射を始めた
「回避運動!」
「「はい!」」
もはや白露の個性が完全に死んでいるが、戦場で目立つのは困り物でもある
大人しくしていてくれるのは
逆に目立たなくてはならない大和にとっては消極的ながらサポートと言える
「散開用意…今!」
「「!」」
大和の合図に従い、
二人がそれぞれ左右へと離れて
後衛2人が横並びになり
上から見るとちょうど三角形になるような組み方を取って…
「主砲一斉射…撃てっ!」
前方に一気に砲撃、大和型の射程を捨てる至近距離に接近してまでする事とは到底思えないような事だが、大和が接近してくるというのに
その後ろに隠れた駆逐艦の事など気にしている余裕はない、意表を突いた2人の一撃は回避運動の出遅れを突き、見事に命中した
「よし!」「やった!」
「まだです!このまま分散して!」
駆逐艦2人は左右に散ったまま
それぞれのコースを取り、大和はそのまま直進して突撃、敵陣に侵入する
「さぁ やるわ。砲雷撃戦用意!」
敵陣に突入した大和は
全方位を敵に囲まれながら
不敵な表情で宣言する
私の中の私が、なにかを指し示している…私はもう戦場を退いた老公であるというのに
私の中の私は、未だに現役を気取っているらしい
「馬鹿ね…」
一言、呟いて歩き出す
鎮守府のみんなが戦っている
遥か遠い戦場で
私はもう、真っ当に戦場に出ることはできないけど、それでもまだ、私には力がある
目指すのは出撃ドック
そこには艤装の保管庫がある
提督が約束を守ってくれているのならば、私の力はそこにある
「…ごめんなさい、みんな
もう私達の戦いは終わったのに、勝手に戦場に引っ張り出して…
もう一度だけ、力を貸して」
「…金剛は戦艦棲姫を追いかけて鎮守府側へ移動、扶桑は海峡夜棲姫(壊)のお相手で忙しい…か、どうしようもないな」
呟きながら、他の地点の情報を整理する
俺が直接戦場に出るのは以前制止されてしまった手前であるし、まずこの戦場においては敵の数が多過ぎる、
「そろそろパーシックルも起動限界時間、テストとしても終了時間が迫ってる
大和撫子に交代かな」
武装を交換するためには、まず鎮守府の本棟の方に行かなくてはならない
そのついでに、向こうの方の確認をしよう
「…っ!」
鎮守府一階、海側の方から入って
まずは野戦病院ならぬ医務室へ向かう
「…きましたか、どうです?戦況は」
「芳しいとはいえないが、敵側にも失血を強いているようだな…姫が一隻、鬼が一隻落ちた」
「こちらの被害は?」
「すでに回収されている者たちだけだ、轟沈は確認されていない」
「そうですか、肉体側の治療についてはこちらも…すでに、不知火の施術を終了、ほか、回収された中で重症の艦娘たちはすでに処置を施しました」
「そうか…鎮守府側に、姫級深海棲艦、戦艦棲姫が近づいてきているようだ
今金剛が単騎で相手しているらしいが、それもそれといったところだろうな
間宮さんたちは?」
2人の速やかな情報交換に
艦娘の名前が次々に浮かんでは消えていく
「間宮はすでに避難済みです、僕も避難ブロックに向かいます」
「そうか、了解」
「提督はどうするんですか?」
「俺は…外で地点己を…
いや、鎮守府を守るよ」
「了解しました、以後傷病者は入渠に向かってもらいますので、お知り置きを」
「こちらも了解した」
互いに敬礼して、
別れようというその時に
「
声がかけられる
それは、聞く筈のない声
かけられる筈のない、本来ならばすでにその声の主は退去している筈の声
「鳳翔…さん?」
「鳳翔さん!?」
「はい、鳳翔です…提督」
その声は、強い意志を秘め
すでに決意を済ませた色だった
「そうか…鳳翔さん、
一度解体した艤装は艤装コアが完全に停止して、再起動不可能になってしまう
だから、持ち主だとしても再起動はできないんだ、鳳翔さん、お心はありがたいけど、使用できない艤装は置物と同じだよ」
そう、最初からそれを条件としていたのだから、再起動などできない
おおかた、
もうなにをしても目覚めはしない
「…いいえ、そういう訳ではありません、これを」
鳳翔さんはその弓道着の艤装を示し、そして、そのコアは確かに、仄かに光を纏っていた
「起動してる…!?」
驚きの声を上げるのは里見君
そして、俺は同時に
「これは…まさか…」
驚嘆していた、通常、持ち主から離れた艤装は起動レベルが最低限にまで落ち込む
当然自立稼働などしない
そして、解体すればコアは完全停止して、二度と動くことはない
しかし、鳳翔さんの艤装は
他の艦娘の艤装をニコイチ、サンコイチを繰り返した合成品、近代化改修などといって納めるようなレベルではない、もはや継ぎ接ぎレベルの改造品
持ち主から離れた後も
使われたパーツの元、持ち主たちの遺した意志が、その艤装を維持し続けていたとすれば
「鳳翔さん…まさか」
「はい、私の艤装は今も
要求されたその言葉を、
俺は拒否するべきだったのだろう
本来ならばすでに退役した艦娘を、戦場に出す事などあり得ないのだから
しかし、俺は
その言葉を告げていた
「鳳翔、出撃だ」
「はい、鳳翔、出撃いたします」
鳳は長き眠りより目覚め
空へと飛び立った
600話記念番外編は
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戦争が終わった後の話を!
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