戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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文比率多し!


龍心の中

善人だった提督が病に倒れ

離任を余儀なくされたあと

着任して来た提督は最低のクズだった

 

無軌道な大艦巨砲主義による戦艦、空母運用とそれに伴う艦娘たちの出撃率偏重

やがて、空母や戦艦の艦娘は疲労状態での出撃を余儀なくされ、轟沈するもの、移動、解体されるものが出た

 

その後、艦娘の数が減ったといって

無理に駆逐艦たちを出し、出撃を繰り返させた

ほかの鎮守府から移動してくるものは大体すぐに轟沈した

艦娘の運用というものが全く分かっていない提督は

今度は金にあかせた強引な工程でルートを打通して遠地出撃を行い、ロクな補給もなく戦わせた

 

それが実績になるんだとかなんとかいって無理を強いた結果、また艦娘たちは減っていった

その頃になると、もう艦娘たちはみんな愛想を尽かし、毎日を嘆いて、移動していった

 

性的な目を向けられるのが怖い

といって異動に踏み切った白鶴の空母に後を追うように異動したツインテ鶴の空母

戦果のために大破出撃を余儀なくされ、爆発炎上しながら敵艦に突っ込んで自爆した不幸戦艦の妹

提督の頭をなんとか修正しようとして工廠ごと追い出されて、今や閑職だという明石

 

そして、五年ほど前に来て、半年と少し前に出ていった一航戦の青いほうと四ヶ月程前に沈んだ駆逐艦にみえる空母

 

いまや空母は二年ほど前に建造された

蒼龍しか残っていない

 

軽巡も当初は結構な数がいたが異動していった

かくいっている私も、遠征以外に最近出撃した記憶はない

 

今は減った金を補填するとかいって資材を売り

金を作って私腹を肥やしている

 

少し前には高性能な武装を売っていたが

明石がいなくなったのと、高性能な武器がないのは鎮守府としてみすぼらしく思える

という憲兵の言葉を受けて

武器はとりあえず置いてある程度になっている

が、どうせ使用はできないだろう

 

戦い続けている潜水、駆逐艦は疲労を隠せず

随伴する軽巡たちとの関係が悪化し

それを気に病んでしまっているものも

互いを嫌い合っているものも出てきた

 

もうどうする事も出来ずに嘆くだけだった

 

そんな時に、彼が現れた

彼は飄々とした雰囲気でしかし全く手を抜く事なく、艤装に真摯に向き合い

メンテナンスを進めていった

 

真剣な表情でパーツを分解して

私にはちょっとわからないけど色々と

測って?その度に

メモ帳には凄い量の文字が書かれていった、彼は何度妨害されても全くやめずにメンテを続けて、ついに駆逐艦全員のメンテを終えてしまった

 

そして、私の艤装にもメンテナンスがなされた

正直、大差無いだろうとタカをくくっていた私は、次の瞬間に一瞬前の自分を激しく叱りたくなった

 

そう、歪まない、軋まない止まらない

ガリガリと何かを削っているような音もなく、一歩進むたびに抗議のように響く金属同士のぶつかる音もなかった

ただただ無音、

求められ、従う、まさしく手足のように、ただそれだけの関係がそこにはあった

 

それからというもの、私は艤装の虜になった

いや、外れなくなったとかでは無く、とにかく艤装を使いたい、早く艤装をつけろと体が求めてくるほどだった。

 

彼は真摯だった、真摯すぎたのだ、誰にでも優しく接し

嫌われても、要らないと言われても

そこに艤装があるなら当然のごとく手入れした

その後ろ姿を、愛おしいと思ってしまったのは、いつなのだろうか

 

彼のためになら多少無理しても金稼ぎできた

提督の私服を肥やすための、いずれ腐るだけのお金ではない、鎮守府の命を繋ぐためのお金

そう考えればギリギリのマネーゲームも苦ではなかった

 

だからこそ、今日、彼が殉職したと聞いて目の前が真っ暗になった

 

私は何をすればいいのか、何ができるのか、何ができたのか、

もうなにも分からなかった

 

 

「ちょっと遅れたけど、今帰るよ、」

音の割れた無線での、短い一言

その言葉に、どれだけ救われただろうか

私はあなたに、何を返せるのだろうか

 

とりあえずは、用意した計画を、果たさなくてはならない、他ならない彼の頼みなのだから

 

「さて、計画実行よ〜医務官さ〜ん」

 

「了解しました、project convert

開始します」

 

また、電話での一言

 

この言葉は、どんな波紋を起こすのだろうか

どうでもいいか

彼がいる、帰ってきた

その事実こそが一番重要なんだから

 

私は彼の帰還を迎えるために

出撃ドックの、彼に言わせれば

『工廠代理』部分へと向かう

 

彼に最初に声をかけられた思い出の場所であり、彼に迎え入れられる安らぎの場所

そこへ、今度は彼が帰ってくる

それなら、私たちが迎えなきゃいけない

 

彼はずっと笑顔で迎えてくれたから

私たちも、そう笑顔で

 

「おかえりなさい、技師さん〜」

 

ようやく帰ってきた彼に、今だけは

とびっきりの笑顔を見せてあげる




今回カギカッコ使った回数
4回だけなんだぜ?笑えるだろw

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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