長門の艤装を無理やり起動した清霜に、飛来する砲弾、それは圧倒的な死を清霜へと叩きつけて来て…着弾前に爆発した
「させんよ」
その瞬間、長門さんとは別の声が
英雄の声が、聞こえた
「清霜、無事か?」
「…武蔵さんっ!」
「お、おう…」
「武蔵さん武蔵さん武蔵さぁん!」
さっきまで動くことすら酷く億劫げ出会ったはずの清霜が、ぴょんと飛びつく相手は
佐世保第四鎮守府の武蔵
「…私は本来、鎮守府から離れることはできないのでな、遅くなってしまったが
その分は働かせてもらうとしよう」
爆発を夢散させながら不敵に笑う武蔵は、本来の持ち主である長門ですら
接続せずに持ち上げるのは苦労するというその艤装をつけたままの清霜を片手で抱えて
そのまま主砲を構える
「…砕け散れ」
「馬鹿メ、私ノ主砲ヲ相手ニ相殺程度ノ威力シカナイヨウナ砲撃デ!私ガ沈ムモノカ!」
「ほう…貴様の主砲はどうやら
その程度の火力では、何もすることはないぞ?」
ニヤリ、とさらに表情を歪ませる武蔵は、そのまま主砲を発砲して
リ級の砲を破壊して見せた
「雑魚が、調子に乗るな」
砲塔に内蔵された弾薬が爆発する
それは砲自体を破壊するだけならおさまらず、接続している艤装にも深刻なダメージを与えて…
「ふっ!」
直後に急接近した武蔵が繰り出した正拳で艤装の装甲ごと爆散した
「…雑魚はどちらだか…これではウォーミングアップにもならんぞ」
半ば気絶している長門を飛び越えて殴り掛かり、清霜を空中に置き去りにする
その上で両者に一切感知されない
長門に関してはともかく、清霜に関しては初動の一瞬のうちに引き剥がして置き去りにした上で加速せねばならないのだから
困難を極めるであろう技術を
しかし当然のように行使する武蔵
「どうした?他の連中はもう少し骨があるのかと思えば、怖気ついたか?」
誘うように笑う武蔵は
一気に総攻撃を仕掛けてくる深海棲艦達に、真正面から撃ち返し始めた
佐世保第四鎮守府
それは地獄の玉座
鬼を支配する羅刹の王が君臨する
魔境の中の魔境
圧倒的個体戦力を保有する以上な艦娘が多数所属する、『個体最強』の鎮守府である
「提督には悪いが、ここの連中…別に滅ぼしてしまっても良いのだろう?」
まるで武蔵が赤い外套でも纏っているかのような一言と共に、粉塵が晴れ
そこに広がる光景が明らかになる
そこには
大規模な爆破後のような煤けた痕が血色の飛沫とともに残っているだけだった
「ふっ…他愛無い」
鼻で笑いながら爆発後を眺めて
くるりと振り返る
「清霜、もう大丈夫だぞ…長門もだ
よくぞここまで耐えてくれた」
鎮守府を、清霜を、一斉射撃から身を挺して守り切った長門、そして長門の戦艦艤装を、一部とはいえど起動し、あまつさえ主砲の発砲まで行った清霜
その二人に与えられたのは、
武蔵からの掛け値なしの称賛
「私が来たからな…お前達はもう休め
ここは私が引き受ける」
「はい…武蔵さんっ!」
「なんだ?」
大きく頷いた清霜が、
唐突に武蔵の名を呼んで
再び戦場へと視線を戻した武蔵を呼び止める
「…武蔵さん、私は…清霜は
戦艦に、なれました!」
「………ふっ…なるほど、そういうことか…それは確かに戦艦だ、だがな清霜、いかに戦艦の艤装を背負ったからとて、戦艦になれるというわけでは無いのだよ
良いか?戦艦とは他の艦型を圧倒する砲戦火力と圧倒的制圧能力という戦場で『戦力として』期待される能力だけでなく『高い指揮能力』や『
残念ながら今の清霜は長門型の艤装に宿る砲戦火力の一部を無理やりに運用しているに過ぎないからな
それを戦艦とは呼ばないよ…お前は、それでいいんだ」
そっと頭を撫でながら
清霜を抱き寄せる
「清霜、お前は子供だからな
純粋でいられるうちだけは、純粋に、子供のままでいたほうがいい、今はまだ…駆逐艦でいてくれ」
「はい…」
憂いを帯びた瞳が
空を眺める
それが誰を見ているのか
誰へと向けられた視線なのか
それとも目的のない呟きなのか、それは誰にもわからない
「よし、清霜…お前は一旦帰れ
入渠して傷を治すんだ、その前に長門に艤装を返してからな?」
「はーい!」
敵が全滅したからと呑気な返事をあげる清霜、やはり戦艦とは言い難いな
と苦笑する武蔵
「さて…長門、長門、立てるか?」
「…ぐっ……ぅ…武蔵…か?」
「遅れてしまってすまないな、私は佐世保第四鎮守府の所属艦娘、大和型二番艦の武蔵、貴艦にも聞き覚えはあるのではないか?」
「…知っては…いるな…面識はないが…それで…その武蔵…が、…何用だ?」
半ば気絶しているような状態で
なおも鋭い気迫は一瞬、武蔵をして圧されるほどの力を放つが、しかしそれが限界
すぐに崩れてしまう
「…無理をするな、私はこの鎮守府の提督に借りがあってな…ここの間宮と金剛に呼ばれて駆けつけたというまでだ、それ、ドッグへ連れて行くぞ?お前自身も重症なんだ、きっちり治せよ」
「…いらん…私はまだ、立てるっ!」
「無理を通したいのは分かるがダメだ、貴艦のダメージは限界を超えている
艤装を完全破壊にされたいのか!」
「それでも…私がいま動かなくては
私は、『長門』でいられないのだ」
それは紛れもない空威張り
なんの意味もない無理であり
同時に体の限界を超えるほどの精神がなければなしえない偉業でもあった
「…はぁ…提督が見たらなんというか…仕方ない…私は見なかったことにしてやる
せいぜい他の艦娘に見つかるなよ」
「…あぁ…わかっているさ」
ともに鎮守府の最高戦力の名を冠する二人は、顔を見合わせて、隣り合った一歩を踏み出した
600話記念番外編は
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過去編深海勢
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……