戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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終幕戦 ラストブリッド

主砲の一撃は躱され、連装副砲の速射は防御され、目立つダメージを与えられていない

決定打になり得るほどのダメージソースは戦艦勢による連続砲撃以外になく

そしてすでにそれは限界に来ている

 

『手詰まり』

その言葉が脳裏に浮かび上がる中

それでも俺は思考を回す

柵はあるはずだ、何か確実に

絶対に勝てる戦いはないように

絶対に負ける戦いもない

 

俺たちは今ここでは負けられない

故に、俺は諦めない

 

ここで諦めるわけには

いかないのだから

 

「全力攻撃!気合で維持しろ!

無茶は承知だが、やれるだけやるぞ!」

 

『了解!』

 

「そういう精神論は、嫌いではない」

[無理無茶無謀、三拍子揃っても提督は掛け値なしの辞める気ゼロ、フリもつもりも一切なし…全く…はぁ、面倒なことになっちゃったけど、やるしかないよね!]

 

川内の嘆きはごもっともであるし

その結論は全く正しいのだが

そんな言い方をされると少し凹まざるをえない

 

俺にだって人の心はあるんだが…

 

[提督はバカで無謀じゃん

たまに酷いこというし]

[今ひどいのはお前だよ…]

 

頭を戦闘用に切り替えて

一気に接近、輝那を接射して

戦艦を潰す、無論顔面狙いで接写するので、非常に難易度は高いが、そんなことは関係ないかのように正確に照準してくれる陸奥がありがたい

 

[私は照準装置じゃないのよ?]

[わかってるよ]

 

お小言を聞き流して

継続射撃、リフボードの燃料が切れてきたので投棄、以降はアイヴィで移動する

 

「装甲が硬いな…大和型の主砲の火力を持ってしてなお破れないとは」

「ここまでの性能だと、何か裏にあるようにも思えますが…提督はどう思いますか?」

 

武蔵が嘆息していると

大和が意見を求めてきた

…とはいえ、どうあがいても変わりはしない、結局はこの能力は瑞鶴の素なのだから

これを削減できるようなギミックはない

 

「…裏も何も知ったことではない

これが瑞鶴の性能というだけだ

本来の瑞鶴はここまで出来るんだ

…脳筋突撃以外に、なにか戦法があるか?」

 

「…そうですね、結局はそうなるっていうのも、私達、創海鎮守府らしいです!

大和型改の性能は伊達ではありません、瞬間火力も継続火力も桁違いであると

見せつけてあげましょう!」

 

「…気合だけではどうともならん問題もあるが…まぁ、そういうのは私の性に合わん

全力で突っ走る方が向いている!」

 

「…さっきからずっと私達空気だけど、放って置かないでよね!」

「暁、ここは黙っておくのが正解だよ…あぁ、言わんこっちゃない…」

 

大声を上げる暁に

場の視線が集中する、それをヴェールヌイが止めるのは一歩遅かった

 

「貴様カラ落トス!」

「悪ク思ウナヨ」

 

「思うわよ!」「反撃だよ」

「対応するわ」「支援するのです!」

 

第六駆逐隊の四人が

残り少ない残敵達に攻撃を受け

それに対して反撃していく

 

…あの様子なら問題はあるまい

 

「…よし、瑞鶴は装甲が硬い、現状の火力では装甲を打ち抜くことは出来ないがこれ以上の攻撃は望めない、なら内側から壊す」

 

一瞬でプランニングを終える

とは言っても思いつきだ

 

到底数字で語れるようなものではない

 

「だがやるしかない!」

 

俺は瑞鶴に向かって突進し、

大和撫子で斬りかかる…フリだけをして、すぐそばに着水、アイヴィの機動力を持って背後へと回り込む

 

「残念」

 

よりも先に、瑞鶴(深海鶴棲姫)が反転する

そこに、防御策のない関節を狙った扶桑さんの射撃が飛び込み、体勢を崩した瑞鶴(深海鶴棲姫)

 

接触する

 

 

[こらぁぁっ!]

[許せ!]

 

そのまま投げ倒して接射を試みようとしたのだが、その瞬間、目の前が真っ暗になった

 

 

 

空を切る手、体は泳ぎ

足を運んで姿勢を戻す

ふと、違和感を覚えた

 

艤装越しに感じる海面は、こんなに柔かったか、と

 

泥濘んだ畦道のように気色の悪い感覚に足元を見て、俺は呟いた

 

「なんだ…これ…」

 

そこにあったのは無数の死体

人のもの、獣のもの、もはや原型を留めていない鋼の塊、骨と肉の一部らしきもの

 

なにがどうなっているのか

まるでわからない

 

「…死だよ…これが私の呪詛

私の心の中の形、笑っちゃうよね」

 

後ろから、唐突に声がかけられる

 

「瑞鶴…?」

「深海鶴棲姫よ、間違えない」

 

「…そうか」

「だから、深海鶴棲姫よ!」

 

「それで、この風景が何だって?」

「深海」

「それはもういいから」

 

半笑いで遮り、俺は彼女に銃を向ける

「悪いけど、死んでもらう」

「…あぁ…うん、わかったよ」

 

瑞鶴は軽く頷いて両手を広げた

 

「…なぜだ?」

「撃たないの?せっかく私を殺せるのに、私を沈む以外の形で終わらせられるのに」

 

「…そういう風に言われるとは思っていなかったよ…まったく、でも

躊躇はしないと決めたんだ」

 

戦う覚悟を定めた以上

敵の命を奪うのは当然のこと

そこに思考を挟む余地はない

 

そう、なんら思考なく、躊躇なく

俺は彼女に銃弾を撃ち込み

そして銃弾が静止する光景を見た

 

「ここに満ちた全ての死が、私を祝福する、全ての憎悪が、私に力を貸してくれる

提督さん…あなたにこの

今まで海に沈んだ全ての命の死を、超えられるかしら?」

 

「超えてみせるさ、俺は戦う

幸い、魂の中なら時間は関係ない

永遠にでも、撃ち続けるさ」

 

俺は瑞鶴を殺すために、まず深海の光景を殺すところから始めた

 

そして

何千、何万の破壊と殺害

無限にも思えるほどの数の(破壊)を繰り返した末に

 

「ようやく…たどり着いた」

「うん、提督さん…正直予想外だったよ?まさか本当にさ、アイアンボトムサウンドの亡霊を全部殺し切るなんて

これで私を守る盾はなし

私に振るう剣なし、

うん、正真正銘私の負け

純粋に、深海の呪詛の力全部を殺されちゃったから艤装も維持できない、深海樹華も消滅してる、

 

私にもう、できることはないよ

だから、提督さん…私を…

「あぁ、お望み通りに…

 

殺し(救っ)てやる」

助けて(殺して)

 

ようやく瑞鶴の本当の言葉が聞けた

 

そして、俺は最後の一発を

アイアンボトムサウンドの亡霊達全てを殺して、その内包していた()の尽きた銃から、俺自身の死を込めた弾倉最後の銃弾を放つ

 

その最後の一撃は

狙いを過たず、瑞鶴の心臓を打ち抜き

今までの数千数万のモノと同じように、定まり切った死を与えた

 

「…おやすみ…提督さん…」

「あぁ、さよなら、瑞鶴」

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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