霧島と比叡を下がらせて
熊野に手を貸してもらって金剛と榛名はどかす…といっても、放り出すわけではなく、ベッドを移ってもらうというだけだ
「…これでよろしいんですの?」
「あぁ、後は里見君がくるのを待つだけだよ、単なる打撲や打ち身で済めばいいんだけど
専門的な知識を備えている人でないと、安易な自己判断は危険だからね」
熊野に礼を言ってから
金剛と榛名を一瞥する
「金剛も、少しは落ち着いてくれるといいんだけど、どうもこの様子じゃ
半年間たっても変わらなかったみたいだね」
そっと金剛の頭を撫でると
ちょうど里見君が入ってくる
「失礼します、提督」
「うん、金剛と榛名の二人だよ、頭を打ってしまっているから、取り敢えず呼んだ」
「はい、了解しています
最上型の二人には、自室待機を命じておきました」
「構わないよ、別に挨拶以外はする事なかったし」
金剛と榛名を里見君に任せて、俺はベッドへと戻り、我関せずと居眠りを始める
ここ最近ですっかりとついてしまった癖だが、睡眠時間が一日10時間を超えるのは我ながらどうかと思う
「…すぅ…」
「提督もすぐに寝ついてしまわれましたね…」
「あぁ、最近…いや、一ヶ月ほどのリハビリ中、かな?運動しているか、何か食べているか、なんらかの報告書に目を通しているか
それとも寝ているか、という生活をしていたせいか、提督は目を閉じるとすぐに寝てしまう体質になってしまっているよ…睡眠薬が手放せない、というよりはよほどマシだと思うけどね」
「それは…睡眠を薬に頼ってしまうのは、確かにあまり健康的とは思えませんわ
そう考えると、提督の状況も、案外悪くありませんのね」
「…そうかい?」
「だって、わたくしは一時期、睡眠薬でも眠れないような不眠症でしたから」
笑い飛ばすように言ってはいても
その表情は根本的には暗い
これ以上は熊野のメンタルに悪影響をもたらすと判断した僕は、ひとまず話題を変えることにした
「提督については、どう思う?」
「提督について、ですか?…そう、ですね…わたくしは、まだ長い時間を
共に過ごしている訳ではありませんから、人柄については大雑把な話ですが
悪い人、とは思えませんわ」
「何故?何を根拠に?」
話を変えたい僕は、さらに深く話題をついた考え込ませるために、
意地悪く聞いてみることにする
「それは…短い間ですが、観察できた提督の艦娘に対する行動は、とても内心で艦娘を疎んでいる人間のするような行動ではありませんでした
意識をなくしている金剛さんと榛名さんを、放置するでも、その…そういう事をするでもなく、ただ優しく額を撫でるだけ、なんて
悪い人の行動ではありませんわ!」
「ははっ…提督が聞いたら喜びそうですね、全く…」
提督は本当に天然の女誑しだ
すぐに信用されてしまうなんてね
前にいた鎮守府で、『著しく心を傷つけられた』熊野に信頼されるのには、僕ですら四ヶ月かかった
まずは同じ部屋にいられるようになるのに二ヶ月、話しても顔色が悪くならなくなるまでに、さらに二ヶ月だ
それだけの時間をかけてようやく
『真っ当に会話が成立する』
という程度の関係、つまりは
提督と艦娘のニュートラルな関係と同等程度にまで、信頼を得ることができた
だというのに、提督はすぐだ
聞くところによると、提督と初顔合わせ(昏睡中も何度か顔を見てはいるが)
でそのレベルにまで到達しているようだ
いくら前例があるとは言えど、すぐに好感度が上がるなんて!古いギャルゲーでも無いのに
「…し、失礼しますわ」
熊野はさっさと帰っていく
挨拶以外にすることが無かったから、提督が眠ってしまった以上は
自分がいる意味もないと判断したのだろうか?
それでもいいか
「いや、古いゲームの方がまだマシか
付き合いを考えなくていいから」
提督は…うん、良くも悪くも女運に恵まれているとは思う、それに、提督自身の生活環境は劣悪だったにしても、それを笑い飛ばす程の器量がある男だ
自然と魅力的に写るのだろう
「…ふっ…」
僕も歳を取った、ということかな?
自分にも好意的な艦娘はいるし、適当に見合いでも見繕って配偶者を決めるか…
里見の家は防人の家系
古い話だとは自分でも思うが、いまだに間合い結婚、血統結婚が基本とされている
あまり良くは無いだろう
嫁婿に恵まれなかった古代の当主の話など、掃いて捨てるほど、どころか積み上がって山を作っているぐらいにあるのだ
「その中でも、国守に武を修むでもなく、医の道を志した僕は異端
真っ当な縁には、恵まれないんだろうなぁ…」
あぁ、本当に、艦娘とケッコンできる提督が羨ましい
僕は押し寄せるロクでもないん見合いの申し込みに目を通すので精一杯なのに
述懐でした
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