あれからしばらくの時が経ち
ようやく完全復活を遂げた俺は
工廠に来ていた
なんでって?いくら翔鶴や明石がいても、妖精のメンテじゃあどうしても限界があるんだよ…それでも二級整備技師レベルの技量を持った個体もいるから、どうにかなるにはなっていたらしいけど、やっぱり俺がメンテしたほうが良いらしい
工廠のリーダー格である
工廠長妖精からの正式な要請がきた
さて、どうしたものか
…まずは、そうだな
最初は時間のかかり辛い駆逐艦達のメンテを済ませてしまおう、そしたら
出撃時間の長くなりがちな潜水艦、軽巡、重巡、軽・正規空母、戦艦の順で整備していけばいい、戦艦はとにかく時間がかかるし、メンテ自体の手間がかかるし、必要なパーツも多い
幸い難を逃れて…どころか
アップグレードしている旋盤達を使えば、パーツの新造自体は訳もないのだから
少しだけ待ってもらおう
「ひっさしぶりにメンテだ!よし!」
テンションを上げながら機械を暖気しつつマニュアルを熟読する
エラーコードの一つに至るまで記憶した後、しっかりと暖気を終えたことを確認して
材料を取りに行く
発注自体は以前翔鶴に頼んでいるので、確認のためだが、とりあえず肉眼で見る
ここから全てが始まるのだ
俺の変なこだわりとかじゃなくて
一級艤装技師の人はみんなそういう
なぜなら鉄材も生きているからだ
…いや、そういう『モグラやらオケラやらアメンボやら』という話ではなく
鉄材は呼吸するのである
当然ながらそこに生命はないが
錆止めを入念に施していても
放置していれば品質は変化してしまう
どうしたってそれは変えられない
鉄にも鮮度があるのだ
鉄は酸素を吸収して酸化し、錆びていく、当然ながら油でコーティングすることで
酸素との接点を減らして
シャットアウトすることでサビを阻止するのだが、それだけでは油が剥がれてしまう
それに、時間を置くと加工製材直後のそれに比べて内部の組成が変わってきてしまう
無論それを利用して性質をあえて変え、加工しやすくする方法もあるのだが
それは熟練の工芸技なので話が違う
…まぁ、その素材の劣化を指して『鉄の老化』というのだ、古いものはよくない
というわけではないが
目的に沿った組成に作っている材料である以上、製剤直後から常に鮮度は低下するし、素材の性質変化=劣化である事自体はどうにもならない
というわけで、古い順にローテーションで使っていくのだが…うん
管理はしっかりとしてくれているようで、納入後一ヶ月も経っているようなものは一本たりとも存在しなかった
よし!
これで安心してメンテに移れる
「…さぁて…まずは…」
朝潮!お前だあっ!
[提督さん…ちょっと変態っぽいよ》
[…やめて、メンタルにとても強いダメージが来る呪文はやめてくれ、それは俺に効く]
瑞鶴の言葉に打ちひしがれつつ、
精神的にダメージを受けた俺は
とりあえず膝を突くイメージだけをしながら、材料の加工を始めた
いくら組み立てや交換が手早く終わらせられるとしても、製造自体ない自分の技術じゃなく、機械を使う関係上、やはり設計からパーツ作成は手間をかけてやらねばならない
これは稀な話だけど
『過酷な戦闘に於いて艤装が歪んでしまった』艦娘の艤装が『入渠では直らない』ということがある…これは体に無理をさせて限界以上の力を引き出した関係で艤装の回路が潰れてしまっているせいなのだが
その状態だと修理すらできない
そうなったときに、二級艤装技師なら『周辺パーツの総取り替え』くらいしか対処法はない、だが…一級艤装技師の一人、天ケ谷技師は
『歪んだ状態の艤装』で完璧にスペックを引き出せるように、かつ肉体側の負担にならないように『一部を新規パーツで補正する』という手法をとることができる
天ケ谷技師は、奇形化、湾曲してしまった儀装の根本的な修理や一時凌ぎのごまかしが得意であり、『完全破壊された艤装の修復』の技術すら習得していたそうだ
その中で必要とされるのは
パーツの設計、作成能力
補正のために必要となるパーツは当然
かつ、自然に馴染むように
さらには悪影響を出さずに、変形してしまった艤装の過負荷部分を補い
空転や過剰負荷を調整する
というとてつもなく高難易度なことを要求してくる
到底俺にはできない
無論、暁の艤装の修繕も俺にはできないので、天ケ谷技師に依頼している
しばらくはやはり待ちだそうだが
いつか治ると言う目処がついただけで暁はよしとしてくれた
「…〜〜…」
「提督?」
「…………っ!……」
「提督?」
「…………」
「提督っ!!」
「っ!?なに?」
「もうじき夕食の時間ですよ?ちゃんと食堂に来てくださいね?」
どうも間宮さんが探しに来てくれていたようだ…よし、今日はここまでで終わりとしよう
夕食を食べたらまだ再開するけど
取り敢えず一旦の区切りだ!
[お疲れ様][お疲れ様ー]
瑞鶴は興味津々と言った様子でこちらを見ていたが、途中から目で追えなくなってきたのか、見るのをやめていた、やることもないような時間になってしまったかな?
[ううん、良いのよ
提督さんと一緒にいられるし
それだけで十分だわ]
[お前もずいぶんいうね…]
「提督?!」
「あはーい!すぐ行きます!」
[すまん、中断だ]
[行ってらっしゃい]
瑞鶴の声で送り出されて、
まずは食堂へと向かった
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