戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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16000文字…だと?


番外編 七夕祭り

「もう朝か…起きるのが辛いな…」

 

気怠さに抗い、強引に目を開けながら呟く…着替えたら朝食行かないと

腹減ったし、最近間宮に行っていなかったから、間宮さんのお説教も聞かないと

 

「おはよう、提督」

 

目を開けたその時、時雨と目があった

 

いつのまにか布団の中に潜り込んで向かい合っていたらしい時雨を摘み出すための算段を頭の中で立てながら、俺は強引に体を起こした

 

「…んで、時雨?」

「なんだい?提督」

 

なぜか布団にいた時雨を

掛け布団を押し入れにしまう事で露出させ、しかるのちに布団を畳んで

強引に時雨をどかした

 

「つれないね」

「釣られてたらまずいんだよ、そもそも俺は駆逐艦(子供)は対象外なんだ」

「僕は人間から数えると18なんだけどなぁ」

 

「艦齢では12だろうが」

 

流れるように結婚可(左手薬指)をアピールしつつ、まるで吸い込まれる様に俺にくっついて来る時雨

 

「…んで、お前は何故ここにいるんだ?」

「提督の為に朝起こしをね、五月雨と交代したんだ」

 

「サミー…」

あぁかわいそうに、五月雨…時雨に強引に『代われ』とでも言われたのか?

 

いや、さすがに闇時雨だって姉妹艦相手に脅しなんて使うような子じゃない筈

平和的な交渉が行われたに違いない

 

…………うん、きっと

 

「提督の朝起こしを五月雨と交代したと聞いて見ればこれかい?時雨」

「響、どうかしたの?」

「ヴェールヌイ?」

 

急に自室の扉が開き、ヴェールヌイが覚めた目でこちらに視線を飛ばして来る

一部提督にとってはご褒美だろうが、俺にとってはそうではない

割とキツい

 

「提督も提督だけど、一番の問題は時雨だよ、司令官は朝だって忙しいんだ

まともに起こそうともせずにくっついてばかりでは、仕事を果たせているとは思えないけど、その辺りはどうなんだい?」

 

「ほう、長い間鎮守府を空けておきながら、帰ってきてはすぐに古顔ヅラかい?

随分と都合がいいんだね

その様子だと、ロシアはさぞかし居心地良かっただろうに」

 

「私をあまりバカにするなよ?

提督の顔色くらいはすぐにわかる、何せこの鎮守府で一番最初に接触した駆逐艦だよ?提督とのコミュニケーションは多少途切れた程度ではなにも変わらない」

 

※19話参照

(但し、『友好的な』という枕詞が付く)

 

「それは六駆としてでしょ、僕は提督の秘書艦なんだよ?過去の栄光ばかりに浸っていないで、現在を見たらどうだい?」

 

なにやらバチバチと火花が鳴っている幻覚が見え出した辺りで

俺はとりあえず仲裁に入った

 

「まぁまて二人とも」

「待たない、司令官は少し黙っていてくれるかい?」

「提督、ちょっと待ってね

今こいつを片付けるからね」

 

「だから待てこら!」

 

二人の頭を軽く叩いて初期化する

………本当に初期化はされてないよな?

 

「お前ら、鹿島と神通を呼ばれたくなければ大人しくしてろよ」

「「!」」

 

二人とも即座に止まったな

 

やだ…あの二人、嫌われすぎ?

別に悪い子じゃないんだが、根本的にダメなものはダメなんだろうか?

好き嫌いとか超越してアレルギーみたいになってるんだな

 

「嫌なら大人しく帰れ、俺は間宮さんのところに行かなきゃならないんだ」

 

そう、恐るべきことに

まだ朝食を済ませていない早朝なのである、このバチバチのレスバが行われているのは早朝なのである(二度目)

 

お前ら健康的過ぎじゃない?

朝ってもう少し頭緩くならない?

 

「ならないよ、さぁ司令官

その黒犬は置いて、一緒に食堂に行こうじゃないか」「提督を連れていくのは僕だよ

未練がましく睨んでいないで、大人しく帰ったらどうだい?シベリアンヒビキー」

 

俺は迷いなく鹿島と神通の居るであろう香取型と川内型の部屋に内線電話をかけた

そもそも、二人とも食堂にいてもおかしくない時間なので、制裁が来るかどうかは不明であるが…

 

「はい、川内型二番艦、神通です」

 

神通には繋がってくれた

 

「あぁ、神通

今ちょっと空いてるかい?提督自室に二匹ほど犬が迷い込んでいてね」

 

「了解しました」

その声が聞こえたと同時に電話を切り

 

犬耳を逆立てて威嚇している時雨を捕まえて、後ろから頭を撫でる

同時にそれを睨んでいた響の帽子を片手で除去して頭にダイレクトアタックする

 

しばらくそのまま時間を過ごしていると、何故か色違いの首輪を持った神通が提督自室に入ってくる

 

「失礼します…あぁ、響と時雨ですか、なるほど…この二人を調教するんですね?」

「しないからね?摘み出してくれと言おうとしたんだが、逆に不安になってきたぞ?」

 

うふふふ……と微笑みながら嫌がる二人をドナドナしていく神通

 

……二人とも、頑張れ

 

「さて、飯食いに行くか!」

 


 

結局、朝食には少し遅れてしまい

間宮さんにいつものように怒られながら、いつもの様にうまい朝食を食べる

本当にうまいんだよなぁ…鮭の切り身、高価な筈なんだけど、どこから入手してるんだろう

 

「秘密です♪」

「そこをなんとか」

「いくら提督でもそれは言えません、私の口を割らせるつもりなら、

まずはちゃんと食事に遅れないようにきてくださいね」

 

輝んばかりの笑顔である

 

[なんの意味もないtips

〜笑顔は本来攻撃的なものである〜]

 

やめろ瑞鶴、その一言は俺に効く

 

「まぁいいや、そこまでするような事じゃないし」

 

そっと話を切り上げようとして

口を閉ざすと、

「毎日食事に遅れるのはそんなに大切な用事があるんですか?」

「……黙秘させてもらう」

 

以降、間宮さんの気配は何か寒々しかった

 

朝食を終えて朝の執務に入り

出撃する艦隊の装備や出る海域などの調整のため、朝帰りの夜間艦娘の報告書に目を通す

 

「失礼します」

 

ノックと共に入ってきたのは

…長門と子日(ねのひ)

 

「提督!今日は何の日?」

 

子日は開口一番に尋ねてきた

…今日は…7/7

[七夕だね]

「七夕だな」

 

瑞鶴とハモりながら答える

 

「そう、七夕だ、幸い町側の業者が笹を入手してくれてな、ウチの鎮守府に送ってくれている、これを機に、いつかに計画していた七夕祭りをやらないか?」

 

「…長門、手際は認めるが

まず報告してくれ、最低一週間前ならなんとかしてみせるから、今からだと予算や夕食の用意が間に合わないだろ…」

「いや、既に間宮と鳳翔さんには手を回している、もとより駆逐艦(子供)たちがメインの祭事、戦艦や空母(大人)の大食らいがワイワイと騒ぐような事も無いさ」

 

俺の反応は予想済みだったのか、すでに鳳翔と間宮を味方につけていることを報告して来る長門、しかし最大の問題は

 

「大淀は?」

「……………」

 

先ほどまでは格好良かったのに

急に顔色が悪くなる長門

その様子からすると

 

「…お前、大淀に話を通していないな?」

「予算はあくまで提督の管轄だろう?」

「大淀の方が専任なんだよ!財務はあいつが担当してるの!…はぁ…」

 

窺いがちな目線をカットして

長門にお叱りを入れる

「そもそもお前は鎮守府の中でも大人だろうが!横紙破りが許されるような場合じゃ無いんだよ!…はぁ…」

 

「もしやダメか…?」

「もしやもなにもないよ、

…そこまで手を回しておきながら、大淀にも手を回しておかないなんて

全く…、俺が責任を取るから

長門は大淀を説得してきなさい、あれで情はともかく、理は解するタイプだし

ここまで計画が進んでるのに今更止められないって事くらいは分かってくれるさ」

 

大淀の幻覚を振り払いながら

長門を送り出す

「子日、お前はこっち」

 

長門が出て行ったのを見て

それを追いかけようとした子日を呼び止めて、七夕祭りのポスターを渡す

去年のために用意したものなのだが、結局去年は忙しくなってしまったので使われなかったものだ

 

「これを事務室のコピー機でカラーコピーして、30枚用意して戻ってきてくれ、それを張り出す作業を始めよう」

「了解です!」

 

子日にポスターを渡して

どうにか捻出できる費用はないかと頭を巡らせる

 

まず、考えるべきは

最大規模である艦娘のためのメンテの予算と、艤装改造のための資材購入費用

 

定期メンテは削れなくても、緊急用の予備資材は備蓄しているし、

そこに当たる費用ならちょろまかす事だった可能とは言える…

食費や衛生環境のための消耗品購入費用、モップ等のリース品の貸借費

頭の中には色々と湧くが、どうしても削ることは出来ないであろう費用ばかりだ

衛生環境を俺が蔑ろにするわけには行かないし、消耗品はどうしても減る

娯楽系統に掛かっている費用はそこまで高くないし、ゲームも一応自作品ばかり、新規購入の申請のために残っている予算もあるにはあるが

それに手をつけてゲーム好きな駆逐艦があとで困るのは嫌だしなぁ…

 

「…うーん…」

 

[提督、まずはどこを削るかじゃなくて、どこから持ってくるかを考えよう?

まず最終的に収支が合えばそれでいいんだから、+の方を考えて行こう]

 

[りょーかい…えっと、削るんじゃなくて増やせばいいんだから、

明石のヘソクリ資材とか、俺が貯めてる個人の資産とか、そっちを使おうって事か?]

 

[発送はあってる、でもそれはどっちも良くない案…よし、川内と翔鶴姉え呼んで!]

 

「…?了解」

 

とりあえず指定された二人を呼ぶと

 

[私が説明変わるから!]

体の主導権をパッと持っていかれて

気づいた時には

 

 

いつのまにか、

どうにかなっていました(意味不明)

うん、本当に意味不明なんだよ

いつのまにか大淀も説得終わってるし、資金の問題も解決してるし

 

まぁ、それはそれでいいとしよう

時刻は昼頃、今日の昼食は

 

 

「提督!やはり比叡カレーはやめたほうが!」

「テートク、悪いことは言わないネ、命が惜しければ辞めるデース」

「榛名は心配です…」

 

「…俺の方なら気にするな、耐え切ってみせる、俺はな…『提督』なんだぜ?…たとえ覚えのないものだろうと、艦娘の期待と約束を反故にするわけにはいかないんだ」

 

金剛型三姉妹に止められながら

俺は十三階段を登る…

 

なぜか知らないうちに昼飯を比叡のカレーにされていた俺は、絶望的な表情を隠して、わざわざカレーを作ってくれる比叡のために処刑場(食堂)に辿り着いた

 

「…あ、提督!こっちです!」

「おう、今行くよ」

 

冷や汗を拭って、厨房側の比叡に菩薩の如き表情で微笑みかける

笑顔が素敵な彼女のためなのだ

自分が多少苦労しても

彼女が笑顔でいられればそれで良い

 

俺は…考えることをやめた

 

 

 


 

「いただきます」

 

俺は絶望を味わって…いない!?

「………なん…だと…?」

 

その一匙は…

普通にうまかった

 

「提督、私だって進歩(奇跡)練習(魔法)()るんですよ!」

 

「馬鹿な…美味いだと!」

失礼なのは自覚しているが

俺は普段、間宮や鳳翔の飯を食っている身、舌は当然鍛え上げられている

…のだが、それを持ってしても美味い、一般ファミリーレストラン如きなら凌駕していると明言できるほどの味だ

 

まさか全部夢なんじゃ無いか!?

 

「それに、私は御召し艦もやってるんですよ?ちゃんとした料理だって作れますよう」

 

パタパタしている比叡に、

 

「うん、すまない、どうも先入観から来る偏見だったようだ、少なくともこれは美味いよ」

 

コップから水を飲んで、息を整えてから答える

 

「えへへぇ…」

 

(嬉しそうデース…)

(うぅ…提督、榛名はいけない子になってしまいました…)(大丈夫よ榛名、これはいわば警護任務なの、犯罪行為じゃないわ)

 

なにやら聞こえるのはなかったことにして、カレーに集中する

味が不明なせいで戦々恐々としていたさっきまでとは異なり、二口目からは真っ当に味わえるのだ、間宮と鳳翔とあきつ丸以外の飯は久しぶりだし、全力で味わうことにしよう

 

「ビーフ高いんじゃなかったっけ…」

 

朝と同じようなことを考えているが、事実高価な食品である、

朝とは少し方向が違うか

高級な食材であることに違いはない

 

とはいえ、それは正規の手続きと許諾を経て購入、使用されているのであって

なんら問題はない

提督の怪訝な顔はなんら意味を示すことはない

 


 

「ご馳走様、美味しかったよ

ありがとう」

「いえいえ、こちらこそ」

 

比叡カレーを完食し、食堂を出て

執務室へ向かう

急な予算の変動を鑑みて、大量の書類が出現することは想像に難くない

少しでも処理を進めておこうという算段である

 

「…テートク!無事デスカ!?」

 

突如として飛び込んできた金剛を受け止め、そっとその細い体を抱きしめる

「ありがとう、心配してくれて

だが、俺は大丈夫だ、比叡のカレーにもあたりはあったらしい」

 

「…テートク、テートク!

本当に無事デスカ!?よかったデース!」

 

少し大げさにも聞こえるが

戦艦の艦娘をダウンさせるカレーを作り出してしまうジャイアンシチューならぬ比叡カレー、只人が食せば危険というレベルではすまない

最悪、胃洗浄や切開手術を覚悟していただけに、逆にうまかった時は拍子抜けだったが、それはそれ

 

「大丈夫だって、昼も食べたし

ここからが書類仕事の本番だよ」

 

そっと金剛を離して

執務室に向かおうとする俺の手を金剛が取る

 

「書類については大丈夫デース!大淀と榛名と霧島と秘書妖精が片付けてくれてマース!」

「随分と準備が良いことだな」

「テートク、比叡カレーでダウンすると思ってたノデ、それを想定してマース

テートクがいなくても回せるように、この鎮守府は訓練してるデース!」

 

それはありがたいことなのだが

なんというか、正面から言われると提督不要論を思い出してしまうんだよなぁ…

 

「さぁテートク!ワタシと一緒に七夕飾りの準備に行きマショウ!」

「お、おう」

 

なんというか

いつもよりパワフルな金剛に引っ張られてついた先は鎮守府の中庭

本棟の海側に存在するフィールドだった

 

「…んで?その肝心の笹ってのはどこにあるんだよ」

「ここだ!」

 

金剛と共に中庭に出た俺の背中に、強いハリのある声が掛かる、そうそれは

誰よりも信頼できる戦士の声

いつのまにか大淀の説得に成功していた、駆逐艦のためならなんだってする女

長門の声であった

 

「さぁ、設置に入ろう!」

わざわざ艤装まで付けて

笹を抱えてきた長門は、金剛と共にその笹の木を中庭の中央に据える

 

…随分重そうだ、改二だからできることなのだろう

 

「まぁそれはいい、提督

笹本体の固定を手伝ってくれ」

「あいよ、麻紐で固定か?」

「あぁ、三角形になるように…あの枝あたりに結んで、地面にペグで固定するつもりだ」

 

笹はどうやら、本当に丸木状態のようで、根元などの処理はされていない

とはいえ、工作艦明石と俺がいればどうにでもなる範囲内だ、

 

小一時間もしないうちに

固定が完了した

 

「…よし、こんなところか」

「こっちもOKデス!」

 

「ふぅ…あぁ…疲れた…」

 

仰向けに倒れそうになると

 

「おい提督、この程度で疲れたなどと言ってくれるなよ、この後も祭事の本格開催の音頭やら何やら、いろいろあるんだぞ?」

「…おうふ…忘れてたよ」

 

長門からの叱責に気を引き締め直して、一気に起き上がる

 

「…よし!…茶飲みに行こうぜ?喉渇いたし、7月は暑い」

「ふふっ、暑いことは否定しないが…まぁ良い、自覚もできずに倒れるよりよほどマシだ、金剛!」

「YES!tea timeデスネ!」

 

金剛がテンションを上げている

倒れないのかと少し心配になるが、あの元気の塊に心配は無用かと思い直す

 

むしろ金剛の姿を見ていると体力回復できそうだ…元気の塊!?

いや、そうじゃないよな

 

「テートク、tea timeの準備は出来てるデース!長門も一緒に!」

「ご相伴に与らせてもらおう」

「じゃあありがたく」

 

時刻は14:30、ティータイムにはちょうどいい頃だろう

 

 

(お茶請けはカステラを用意しまシタ)

(ほーしょーさんから貰ってきました)

 

金剛似の妖精が笑っている

瑞鶴似の妖精と一緒に準備を手伝ってくれていたらしい

 

「ありがとう、君達」

(きゃーっ!)

(きゃーっ!)

 

なぜ悲鳴なのか…

 

「喜んでるデース、気にしないであげてくだサイ」

 

金剛も微笑ましいものを見る目である

 

「うふふ…それじゃあ、臨時デスガ、tea partyを始めまショウ」

「応…そういえば、金剛以外の金剛型がいないのは珍しいんじゃないか?」

 

「いえ?そうでもないデス

そもそも私は一人で居た時間の方が長いですカラ、長門とは長い時間一緒に過ごしていますし、寂しくはありませんでしたケド」

「…そうか」

 

(湿っぽい顔じゃあ紅茶は楽しめないデース!)(提督さん、笑顔笑顔!)

 

…なんとも二人っぽい妖精達だ

 

「さて、提督

改めて言わせてもらおう

無理を言って済まなかった」

「え?」

 

「いやさ、笹が手に入ったのが昨日ということもあり、報告が遅れてしまったが

本来は予定の段階で知らせておくべきだった、と言っているのさ

結果的に良い方向に進んだとは言え、提督には無理をさせてしまったし

予算調整等々の案件も出てきてしまうだろう?先んじて礼と詫びをしておこうと思ってな」

 

長門は真剣な表情なのだが

やはりその手元にはティーセット

これで笑わない方がどうかしている

 

少なくとも俺は存分に笑わせてもらった

 

「気にするなよ長門、報告が遅れたことが判明した、それだけなんだから

後に生かしてくれればいい

それに、去年何も出来なかったのは俺も同じだ、その分を今年、という想定もできていなかったしな…だから、長門が謝るようなことじゃない」

 

金剛や飛龍はこういう時

頭を撫でてやると喜ぶのだが

長門はどうなんだろうか…

 

やめておこう

 

「いや…私が不手際をしたのは事実だ…」

「だから気にするなよ、どこの世界に企画書出すのが遅れたから中止なんていう奴が居るんだよ、とにかく表情筋ほぐせよ、でないと紅茶も楽しめないぜ?」

 

受け売り極まるセリフであるが

効果はあったようだ

長門の機嫌も幾分上がっている

 

「よし、そう言ってもらえて良かった

これだけの話を積んでいる企画、失敗はさせられないな!」

「…良いんだよ、失敗しても

後に繋げればそれでいい

なんか引っかかったら来年またやろう」

「テートク、良いこと言ってるケドちょっと場違いネ…」

 

結局、その後の空気は締まらなかったが、十分に楽しめたので良しとしよう

 

「では提督は一旦お別れだな、我々は飾り付けやら用意があるので

また後で」

「テートク、待ってて下さいネ!」

 

長門と金剛と別れて

妖精達と鎮守府に戻る

 

…飾り付けはわかるが、用意?

七夕ってそんな大規模なものだったか?

 

「…まぁ、深く考えても仕方ないか」

[そ、そうだよ提督さん!

あんまり深く考え過ぎても意味ないよ!]

 

瑞鶴に妙に急かされながら

執務室へと戻り、死んだ目の大淀と輝く目の明石と一緒に、書類を片付けた

 

「…ヨシ!」

 

いつのまにか日が落ちていたらしい

大淀と明石も撤退し、コーヒーを淹れてくれた秘書妖精も去っていった後で

ようやく書類を片付け終わり

諸問題の解決も終わった後で

 

夕食を取りに食堂に向かった

 

「あ、提督さんっぽい!」

「提督!」

 

そこにいたのは

赤に金色の刺繍が入った浴衣姿のぽいと、黒地に紫陽花が咲いた浴衣姿の五月雨

 

「…二人とも、どうした?」

 

「えっと、7/7なので…」

「お祭りの正装っぽい!」

 

……[おい、どういうことだ?]

[えっと、予算の変更の件、見てるよね?]

 

まさか…お前ら7/25(土)開催予定の夏祭りの日程を早めて被せたな!?

 

[正解!]

[正解じゃねえよ!何してんだよ!…いや、8月も目前となれば暑過ぎて体調を崩すような子も出てきてしまうかもしれない

暑くなり切る前にさっさと楽しんでしまうのが勝ちかも知れんな]

 

反射的に怒鳴りそうになったが、

冷静に考えると悪くない案だと思える

 

特に加賀とか体温高いし

夏はヤバいだろう

 

 

よし、これで良いや!

 

[人はそれを、思考放棄という]

[うるせぇ]

 

予定を無理に変更したのは事実だし

こういう形で予算の帳尻を合わせると思ってはいなかったが、大淀も納得済み

明石も何か噛んでいるだろうが

それはそれで良いとしよう

 

「…ふぅ…」

「ため息?どうかしたっぽい?」

「いや、なんでもないよ

俺はちょっとみんなのところに顔出してくる」

 

「了解です!」

 

五月雨に見送られて

俺は笹を置いた中庭へと向かった

 

「どこいくっぽい?」

「中庭へ…って、なんでついてきてる?」

「なんとなくっぽい♪」

 

可愛いのは事実だが、腕にくっつくのはどうにかならないのだろうか…

 

「…?他の犬の匂いがするっぽい」

「…………………」

 

「時雨と響の匂いと金剛さんの匂いっぽい!どういうことが説明するっぽい!」

「…はぁ……」

 

驚異的な嗅覚だが、さすがに比叡のカレーは判別できなかったらしい

まぁいままで嗅いだことの無い匂いなら分からなくて当然だが

 

 

 

「…掻い摘んで説明するから

そのままついてこい」

「わかったっぽい…提督さん…」

 

更に俺の腕に身を擦り寄せる夕立を振り払うわけにもいかず、話しながら笹の元へとたどり着いた

 

「んで、これを昼頃に突然立てた訳だ……もう結構付いてるな、夕立、お前もなんか短冊書いてみたらどうだ?」

「え?…いいっぽい!?」

 

「いんだよ!もともと駆逐艦のためにやってるんだ、お前さんを部外者にはしないよ」

 

側に置いてあった折り紙製の短冊(大和、扶桑、山城協力)を一枚取って

愛用のボールペンと一緒に渡す

 

「はい、これに願い事を書きなさい」

「っぽい!」

 

短冊が置いてあった机の余りスペースを使ってサラサラと筆を走らせる夕立

あらかじめ文面を決めていたようにすら見えるほど素早く書き上げられた短冊、その内容は

 

「見せないっぽい!」

どうやら秘密なようだ

 

「ぽ〜い!」

さっと笹の反対側に回って

身長ギリギリの高さの枝に短冊を括る夕立…残念ながら、俺の身長からすれば内容が見えないという訳ではないのだが…そこは見ないことにした

 

「て・い・と・く…提督!」

 

「そんな大鯨みたいに言わなくても…って、なんだ大和か」

「『なんだ』とはなんですか『なんだ』とは!…ではなく、提督も一筆どうですか?

短冊の方は鎮守府全員が書いても大丈夫なくらいに用意しているので

提督もどうぞ♪」

 

「…おう、今年こそ大鯨捕まえられますように…」

 

忘れ去られていた2-5捕鯨周回を思い出して、とっさに出た言葉である

どこかで『ほげぇ〜』と聞こえた気がするが、気のせいだろう

 

大鯨は潜水母艦という

潜水艦の補給、修繕を可能とする艦、戦闘力は高くないが、その機能は給油艦と工作艦を足して割ったようなもの…と言っても

艦これ的には給油艦と同じ補給艦扱いである

 

「なんだかロマンの無い話ですね」

「違うよロマンあるよ、一年どころか何年経っても拝めない幻の艦娘を捕まえられるように祈願してるんだよ」

 

呆れたような表情の大和に突っ込んで、笹を見遣る

 

…そうだな、脚立あるし

上の方にしよう

 

 

「っし!」

 

一番上に近いほど高い枝に短冊を括ったあと、脚立を降りた俺に、

大和が微笑み掛けてくれる

「今年こそ、大鯨ちゃんに会えると良いですね」

「…そうだな」

 

乙姫(姉さん)はもう捕まえたし

天女(大和)もいてくれるし

吉兆(瑞鶴)だって一緒なんだ

 

大鯨もきっと今年こそ来てくれるさ

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「大和、夕立…は行っちゃったか…、まぁいいや大和、一緒に回ろうぜ

向こうの方はちょっとした出店もあるみたいだし、射的とかあるかもな」

 

「射的ですか?…提督、私の射撃能力を舐めないで下さいね?」

「…ほう、競争といこうじゃ無いか、拳銃でもコルク銃でもダーツでも

俺の方が凄いと証明してやろう」

「言いましたね…型抜きで勝負です!」

「それジャンル違うから!」

 

もともと鎮守府の夏祭りは機密区画以外は一般開放される、出店も出ようと言うものだ

夏の夜に浴衣美人を伴って

とは贅沢が過ぎる気もするが、その分のしっぺ返しはもう十分に受けたと思えるし、せいぜい楽しもうじゃ無いか!

 

「はいゲット!…はいゲット!」

「…くっ…やはり艤装の方じゃないと感覚が…って、提督!?」

 

おっと、楽しむのも程々にしないと

俺無双はよくないからな

 

「なんだ大和?」

「その、手元どうやってるんですか?」

「どうも何も、普通に」

 

目覚まし時計やらぬいぐるみやら、実力で堕としたモノを保持しているだけなのだが、何がおかしいのか

[いやいやいや、ぬいぐるみ×3目覚まし時計×1フィギュア×2はさすがに片手で持てないって]

 

[持ってんだから大丈夫なんだって]

 

笑いながら大和に手をやって、その手の中のコルク銃を補正する

 

「こうだ、よし、撃って」

「はい!」

 

ペシ!とボクカワウソのぬいぐるみに命中したコルク弾は、見事にそれを棚から叩き落とした

 

「よし、初ヒットおめでとう

それじゃあ次行こうか」

 

「やったぁぁっ!……え?」

「はい次、あのピンクのイルカが当て頃だな、あれ行くか」

 

大和の同意を得てから

貯金箱らしきイルカを狙わせて

それを補正、撃たせて落とす

 

「提督!なんでそんなことできるんですか!?」

「坊やだからさ」

 

適当に答えつつ、俺も最後の一撃で、さっきから連続で当てていたps5の箱を叩き落とし、店主に縋り付かれたのでps5以外は返して

ps5はもらうことにした

 

店主は泣いていいと思う

 

「…えっと…提督っ!」

「はいよ?」

「あの、ハートの写真立てが欲しいんですけど…狙える自信がなくて

あの、照準の補正を

お願いできますか?」

 

「…あいよ、やってやろうじゃないの」

 

俺が大和の構えた銃身をずらして、射線を当てるようにしてやると

 

「…そうじゃないです…」

 

大和はどこか寂しそうな表情になる

…何を求めているんだ?………

 

「そうか、わかった」

 

今度は重心の方を支えて、

銃身自体を保持してやる

 

「………」

 

大和は涙目になっていたが、

とりあえず狙いのアイテムは落とせたようだ

 

[後ろからこう…密着してさ

支えてあげるとかしようよ…] 

 

[セクハラ、ダメ、ゼッタイ]

[それは本人が望んでるからいいの!]

 

瑞鶴に怒鳴られた…解せぬ

 

結局そのあと、写真立てと貯金箱とぬいぐるみを抱えた大和はどこかに走っていってしまった…

 

うん、俺も大荷物になってしまったし、とりあえず鎮守府に置きに行こう

 

[その発想が既に怪物だよ…]

[何故だか…]

 

とりあえず鎮守府を往復して

獲物を置いてきた後、店側に戻ると、そこにいたのは蒼龍と飛龍

二航戦の二人だった

 

「提督っ!一緒に回ろう!」

「ちょうどよかったよ、ねっ!」

 

「おっ荷物持ちか?」(超速理解)

 

俺の返事に

笑顔で返してくる二人

「そんな訳ないじゃん!メインは食べ物系の出店なんだし」

「一緒に回るだけだよ〜」

 

そうとは思えないほどに気炎を上げる蒼龍のオーラが見えるのか、周りの一般市民の皆様が若干引いている

 

「提督!綿飴食べる?」

「あ、蒼龍二本買ってたもんね!」

 

飛龍が納得のポーズを取るなか、蒼龍から渡されたのは綺麗な綿飴

桜色の着色がされているようだ

 

「綺麗でしょ?そこで一本300円だよ!」

「割と高い」

 

クスリ、と笑ってしまいながら

蒼龍に代金を渡そうとすると

蒼龍は軽く手を振って拒否する

 

「いいっていいって、付き合いなんだから貰っといて?ねっ♪」

「おう、わかった、頂くよ」

 

答えつつ、綿飴を一口食べる

…やはり甘い、桜色はどうやってつけているのかわからないが

やはり綿飴は夏祭りの鉄板か

 

「うんうん、綿飴、りんご飴、お面屋さん、金魚すくい、みずヨーヨー

あとは…スーパーボール!

これで夏祭りコンプリートだよ!」

「いやいや、光るアイテムシリーズを忘れてない?光る腕輪に光るジュース、光る剣と銃のおもちゃ、昔っからあるものばかりに囚われてちゃあいけないよ?」

 

蒼龍の言葉飛龍がツッコミ

蒼龍はその手があったか!と驚く

この二人は本当に相性がいいな

 

とは言っても、チャンバラごっこより、古式剣術で打ち合ってる方が多い二人でもあるし、あんまりゴツいのは携帯に適さない

俺としては蒼龍の方に賛成だな

 

「というわけで〜…じゃん!」

 

飛龍が取り出したのは

三本セットの光るブレスレット…曲げるとそれぞれ赤、青、黄色に光るらしいそれを、一本は自分が取った飛龍が腕につけ、

もう一本は蒼龍の腕につける

 

「ん、提督も」

「貰っていいのかい?」

「遠慮しない!お祭りだし、こういう時くらいしかまともに話せないもん

せっかくなんだから、躊躇とか計算とかなしに楽しもうよ…ん!」

 

「…そうだな」

 

俺も最後の赤いやつを受け取り

腕に巻くと、それが発光を始める

 

「二時間持つんだって!」

「おー…すげえな…」

 

ケミカルライトの反応だったよな…

 

「「まぁた難しい顔してる!」」

 

蒼龍と飛龍が、それぞれ逆サイドから俺の頬を突いてくる

 

「こんな時だし、笑おうよ」

「一緒に、ね!」

 

「…おう!」

 

二人と一緒にいると、自分だけ考え込んで抑えているのがバカらしくなってきた

よし、俺も楽しもうっと!

 

「たこ焼きあるよ!」

「あ、こっちはかき氷だな」

「見てみて!プチカステラ売ってる!」

 

この後滅茶苦茶食べ歩いた

 

 


 

 

ふぅ…

 

二人は食べ過ぎてダウン

って言って先に帰っていったし

二人の1割程度しか食べていない俺でも結構キている、食べ物系は避けるか

 

 

「あ、司令官!」

「提督〜!」

 

パッと走ってきたのは

大正ロマン、神風と

デュエリスト隼鷹

 

「デュエル!」

「お前何合飲んだよ…」

 

「合なんて単位に入らないわ、一升瓶二本よ…」

「お疲れ様、神風」

 

心なしか、酒の匂いが染み付いている神風をしっかりと抱いて、デュエリスト隼鷹(未成年には危険な存在)から遠ざける

 

「あんだよぉ〜…提督はよぉ」

「…出来上がってる…」

「毎日毎日同じような生活して、辛くないの?…いやあたしは辛いけどさ

祝日くらいは許してよ〜」

 

「普段禁酒してたのは知ってるし、別に咎めるつもりもないが、人に迷惑はかけるなよ?いいな?」

「おいデュエルしろよ」

 

「…確保」

 

迷惑の権化と化しているため

連れ歩くのは危険と判断し

駆逐艦寮前の花壇の方に誘導する

 

「…んで、祭日だから派手に飲んだ、と?」「おうよ!」

 

やたらキレのいい返事だな

普段からそんなにいい返事ができれば良いんだが…まぁいいとしよう

 

「神風、迷惑をかけたなぁ

こいつは俺が引き取るから、思う存分に祭りを楽しんできな」

 

そう言って隼鷹に肩を貸しながら移動しようとすると、反対側を神風が支える

「冗談じゃないわ、最後まで責任は取るわよ…これでも、お姉さんなんだから」

 

「…そうか、流石は大正」「はっ倒すわよ?」「お姉さんだよ…うん」

 

俺と神風は何も聞かなかったし、何も言わなかった、そういう協定を気配だけで結び、一緒に隼鷹を空母寮へと運んだ

 

「…失礼しまーす」

「隼鷹連れてきたんだけど…誰もいないかな…?」

 

軽空母も正規空母もいるようには見えない…「にっしし、いんだよそーいうのは、気にしなさんなって」

 

さっと靴を放り出して

さっさと建屋に入っていく隼鷹、わずかに足元がおぼついていない彼女は流石に放っておくわけにもいかないので、仕方なく部屋まで送ることにする

 

結局のところ、みられていなければ良いのだ、知られなきゃ犯罪じゃないんだよ

…まさか俺がこれをいう立場になろうとはな

 

「…んで、隼鷹、お前はもう寝とけ」

「ぇえ〜?やだよ提督、せっかくいるんだから付き合ってくれよ!」

 

どこからか酒瓶を取り出した隼鷹だが、こちらも流石に付き合ってられないので、断らせてもらう

 

「うるせぇ泥酔デュエリスト」

「あぁー?こっちは神カードはいってんだぞー?」「デッキを輝かせられないようなやつに真のデュエリストを名乗る資格はないぜ!」

「そんなに光が欲しいんなら光らせてやるよオロロロロ」

 

「あっぶねぇ!」

 

神風が持ってきていた桶で緊急キャプチャーに成功、なんとか事なきを得た…のだが

 

「お前!酒しか飲んでなかったな!?」

吐くわ吐くわ液体ばかり、

それはつまり、ツマミや夕食をとる事なく酒ばかりを飲んでいたことになるのだが…

 

「酒しか飲んでないって、酒以外に祭日で飲むもんあふのかよ?」

「あるでしょうそのくらい!」

 

「あぁもう、急性アル中で死にてえのかよ全く!」

 

結局、一時間ほどは酒飲みの看護で終わってしまった

 

「………本当にすまない

まさかあれほどとは思っていなかった」

 

一升瓶二本って、1800×2ml

で、最低でも3.6リットル飲んでるんだよな…あの程度で済んでよかったと言うべきか、その無謀は叱るべきか…

 

いや、今は考えまい

「とりあえず、お互い風呂入ってまた来るか?」「えぇ、そうするわ」

 

酒とアレの匂いを落とすために

一旦神風と分かれて

提督自室へと戻った俺は

適当にシャワーを浴びて…うん、結構ガッツリ入浴する必要が認められるので

本格的に入浴することにした

 

「…はぁ……」

 

隼鷹も飲むなとは言わないから適量にセーブしてくれれば良いのに…

.まぁ、それができないから隼鷹なんだろうけど?

 

「はーい、お背中流しますねー?」

「キサラギッ!?」

 

突然の声と同時に、背中に如月の掌が触れる

提督自室のバスタブは結構狭い

つまり如月の侵入に気づかないほどに気を抜いていたということか!?

 

「神風ちゃんと一緒に空母寮から出てくるのを見てたの、もう逃さないわ」

 

「如月、やめるんだ」

「なにを?…うふふっ♪」

 

背中をそっと細い指が通り過ぎる

 

「あまり舐めてくれるなよ?…俺はいざとなれば取れる手段だってあるんだぜ?」

「そう?…でも、それは私を傷つけるようなものじゃないんでしょ?」

 

「傷つける…そんなことも出来るが、な…」

 

「振り返ることもできない提督が、私をどうに出来るのかしら?」

「できるさ…その気になれば」

 

俺の精一杯の威圧でも、意に介した様子のない如月は、さらに笑みを深めているような気配がする

[…瑞鶴]

 

[…うん、これは流石に、ね]

 

パッと、主導権が入れ替わる

肉体を瑞鶴に、魂を俺に

入れ替わったその瞬間、瑞鶴は一気に振り向く

 

「んっ!?」

 

「きゃぁあっ!エッチ!…冗談よ、最初から水着着用できてるから、

対策してるわ」

 

俺の普段とは全く異なる意外な行動にも驚く様子もなく、婉然と微笑む如月だが

やはりそこのあたりは子供なのか

詰めが甘いな

 

「うるせぇよ、俺を挑発しといて水着だあ?んな事でなぁなぁに済ますかよ!」

[…あの、瑞鶴さん?]

 

「大人の男を舐めてかかりやがって!教育してやるよ!」

[瑞鶴うぅっ!?ダメだよぉ!?]

 

如月に覆いかぶさるような体制にされる俺の体、組み敷かれる側の如月は

「ぇ?ぇぇ?…あ…」

状況がうまく理解できていないようだが、時期に気付くだろう

 

「ひっ….いや…」

「嫌もクソもねぇんだよ!

手前が撒いた種だ!手前で収穫しやがれ!」

 

お望みどおりに種付けしてやるよ!

とばかりに強引な動きで如月の水着を引き裂こうとする差の瞬間、一瞬のタイミングを上手く活用して如月が逃げた

 

[瑞鶴っ!ダメだよ瑞鶴っ!]

[いいのよこれで、あのマセガキには、このくらいしないと効果が出ないわ]

「だからと言って!」

[どうにもならないよりはマシでしょ?]

 

そう言われると、どうにもならないよりは確かにマシなのだが

それは箇条書きマジックのようなものだろうに…

 

[だから良いのよ、あの状況で逃げるようなら、まだ大丈夫よ

覚悟決めるんだったら襲っても問題ないし][大問題なんだなぁ…なんで瑞鶴ってそういうポイントで異常なまでに決断力あるのさ…]

 

[このくらい経験則よ]

 

どんな経験してんだよ…とドン引きしながら風呂を出ると、如月の下着が置いてあったが、これは明らかに回収し忘れられているだけの罠なのでスルーして、普通に私服に着替える

 

「…よし!」

[何がよしよ、髪、乾かしてから行きなさいよね?]

「?どうせすぐ乾くぜ?」

[生乾きより、しっかり乾いてるほうが清潔感があるのよ…その辺細かいけど

女の子は意外とチェックも細かいのよ?]

 

結局、髪は乾かしてから向かった

 

「長門、お疲れ様」

「あぁ、提督か…なぁに、こっちは大した問題はないよ、そっちはどうだ?」

 

中庭に出て、会場の監視員を買って出ている長門に話しかけると

笑顔で返事をしてくれた

 

俺は長門に購入した甘酒を渡して

雰囲気だけでも楽しんでおくように伝える、子供たちメインとはいえ

大人総スルーというわけでもないのだから、長門だって楽しむべきだろう

 

「しかし、私は」

「大丈夫だよ、会場監視員はヘ級と筑摩がやってくれてるから」

 

そっと指差す先には

交渉して話を通した交代要員として、長門と同じ腕章を光らせている筑摩と、腕章を二本つけている?ヘ級がいた

 

「…なるほど」

「というわけで、交代です」

「理解はしたが、それでいきなり気分を切り替えられるほど私は器用では」

「なら一緒に行くぞっ!

会場巡って駆逐艦たちの様子を見に行こうぜ!」

 

「そういう事なら了解だ!

戦艦長門、抜錨する!」

 

随分と気合の入ったコールの後は俺について来る長門、いきなり方針を見失っているようだな

 

「…おすすめは出店周辺と笹周辺だな、笹周辺なら、身長が足りない駆逐艦を抱っこして高い枝に届けてあげる任務が」「行って来るぞ!」

 

…低速とか誰が言ったし

 

 

「…はぁ…まぁ、長門らしいか」

 

ボーッとしていると、

不意に、声が聞こえた

 

「はわわわ…みんなとはぐれちゃったのです!」

「…行くか」

 

まずは電の手を取り、どこではぐれたのかを確認する、そして出店の店主と管理人を引き受けている空母棲鬼に聞いて周り、程なくして…

 

「「「電!」」」

「暁ちゃん!響ちゃん!雷ちゃん!」

 

「…よろしい、合流できたね?」

どうやら電探しを翔鶴に頼っていたらしい三人と合流できた

 

「ありがとうなのです!」

「翔鶴さん、提督もありがとう!」

 

「いえいえ、当然のことですよ」

「困ったときは助け合い、だろ?」

 

そして、やはり4人で行動するらしい六駆と分かれた翔鶴+俺は笹周辺まで戻ってきて…

 

「あ、提督、見てください!」

翔鶴が唐突に上を指差す

 

「ほう、これはこれは」

「綺麗……」

 

そう、さっきまでは雲が掛かっていた空は晴れ渡り、満天の星と月に、天の川が輝いていた

 

[織姫と彦星、か…ロマンだね]

[そうだな…]

 

「……たまには、こういうのも良いかもしれんな」

「そうですね…芝生に寝転がると良いかもしれません」

「あ、それ分かる」

 

「やったこと、あるんですか?」

「いや、ないけど…なんか、感覚的に分かるだろ?そういうの、

逆に翔鶴はあるのかよ?」

「私もありませんよ、服に芝が付いちゃうので」

 

「…じゃあ試すか?」

「お断りします、だって…」

「今、浴衣だもんな」

 

白地に桜を散らした浴衣の翔鶴を相手に笑い合う、ほんわかとした空気

 

「…で、なにをしてるんですかそこの五航戦」

が凍結した

 

「姉さん?!」

「加賀姉さんです、我が弟君」

 

不意に後ろから抱きしめられる

「姉さん、アンブッシュはよしてくれ」

 

「わかりました」

 

その格好は青紫の地色に、鮮やかに赤い帯、赤紫の朝顔が咲く浴衣、普段と違ってピンクのリボンで髪を結っている

 

「姉さん、随分大人なの選んだね」

「…えぇ、鳳翔さんのセンスに間違いはないわ」

「よく似合ってますね」

 

腕は離しても立ち位置は離さないと言わんばかりに、俺や左手を取る姉さん

 

「ここは譲れません」

「…へぇ…もしかして」

「なんですか五航戦の白い方」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…とオーラを立てて翔鶴を牽制している姉さんを引っ張って止める

「やめなよ姉さん、仲間なんだしさ」

 

「…っ!」

「!はい!」

 

翔鶴は仲良く振る舞える大義名分ができて嬉しそうだが、加賀姉さんの顔は苦々しげ…翔鶴が苦手なのか?

 

「そうでは無いわ、ただ少し

いえ、なんでも無いの」

「加賀さん、一緒に屋台巡りしましょう♪」

「付き合ってあげるわ」

 

どうやら、あの二人もすぐに打ち解けてくれた?らしいし、瑞鶴も強烈に反応しているし、特に問題もなさそうだからいいか…

 

「あ、すいませーん、たこ焼き20個入り5パックお願いします!」

「赤城さん、無茶はよしてあげて」

 

 

そっと、少し離れた場所の屋台に無茶を言っている赤城を止めるのだった

ちなみに、彼女の格好は

赤紫の地色に朝顔の花、鮮やかな青の帯と加賀姉さんと反対のコーディネートだった

 

 

その時、空中に爆音が響く

そこにいたほぼ全ての人が

反射的にその場所に視線を向けて

その幻想的な色を見た

 

「…花火か?」

 

「チッチッチ…ただの花火とは訳が違いますねぇ…あれは明石工廠謹製のオーロラ花火、オーロラの光線パターンを忠実に再現して、本来見られない日本でのオーロラを空中に描くのです!…まぁ、材料から高いので、なかなか量産とは行きませんがね」

 

「明石!?」

「はい!花火師にして爆発物、火薬類取扱保安責任者の明石さんでーす!」

 

謎の綺羅星ポーズを決める明石

「…んで?アレはもしかして」

 

「はい、夏祭りに予定されていた花火、それの試作品と前年度の持ち越し品ですね、代替品や急場に入手した物で数を底上げしてあるので

そこそこ見栄えすると思いますよ…さぁ、妖精さん、やっておしまい!」

 

時刻が午後21:00を告げた瞬間

ついに空中に色とりどりの華が開く

 

「さぁ、明石自慢の花火達を御照覧あれ!」

「……なるほど」

「そういうことですか…綺麗ですね」

 

花火が次々に打ち上げられていき

(…妖精が打ち上げられる花火に乗っていたのは見なかったことにしよう)

 

華と散って空に瞬く

それは、断続していく日々のように美しく、強く記憶に焼き付いてきた

 

三十分ほど続いた花火は

ついに時間を迎え、最後の五尺玉が弾けると共に終わりを告げた

 

「…圧巻だったな…」

[綺麗だったね…]

「はい…感動です」

「さすがに気分が高揚します」

「いや〜…やっぱり夜は良いねぇ」

 

なぜ集合している!?

 

加賀、川内、五月雨、

期せずして、俺の魂と接続していたメンバーばかりである

 

「…あ、提督、どうかなこれ?」

川内の浴衣は薄紫に桜色のヒメジャオンの柄、改二衣装のマフラーと同じ白地の帯

 

「とっても綺麗だよ」

「あーっ!ずるいです!川内さん!綺麗だよって私も言われたいです!」

 

そこに飛び込んでくる春雨

それを皮切りに、次々に艦娘が入ってくる

長良、五十鈴、白露、天龍

子日、清霜、初春、金剛、龍驤

榛名、隼鷹 叢雲、曙

長門、扶桑、山城、龍田

時雨、時津風、愛宕、吹雪

 

視界を埋め尽くすように

 

「…あぁもう!みんな綺麗だよ全く!」

 




夢オチなんてさいてー!

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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