戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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先導と扇動

「聞こえるかな、レディー?」

 

拘束された女性…扶桑?に話しかけるメディック、その姿は紛うことなき事案

 

なのだが、別に構いはしない

 

「………」

返答はない、いや

「既になんらかの処置を施されているのか、それとも精神的に異常な状態なのか

…一番簡単なので言えば、単純に干渉を拒否して…つまり、無視している

と言ったところだろうが」

 

だが、死んでいるのならばその肌色は薄れていなければならないし

なんらかの反応を示す様子もない

単純に意識がない、というところではないか?

 

「…おいあんた」

「触れるな、何があるかわからない、最悪の場合、突如として爆発する可能性すらある」

 

「はぁっ!?」

「人間爆弾、体内に爆弾を仕込んだ使い捨て兵器だ…メジャーなところでは『桜花』や『回天』に近い特攻兵器…あくまで規模は対人という問題はあるが、それでも潜入暗殺には有効だ」

 

「どういうことだそれ…」

「言っているだろう?こういうシーンで無理に接触を試みた瞬間に曝発、あわれな生贄の美女ごと正義の勇者様は墓場行きだ

ペルセウス-アンドロメダ型の英雄譚になぞらえて『アンドロメダ』と呼ばれていたな…まぁ、突然爆発するという点から利用しづらい兵器ではあるが、接触を条件に組み込めば簡単だろう?」

「そういうことではない!問題はなぜそれが開発されたのかだ!」

 

憤るハウンド4に、冷静な声が情報のみを伝える

 

「非人道的ではあるが、有効だからな…既製品のボディに爆弾を入れるだけ

あとはうまく爆発することを祈る、これだけの兵器だ」

 

〈だが、体内に爆弾があるようには思えない…どちらかというとレーダー反応からそのヤバさが分かるぞ〉

 

「だからどういう事なんだよ」

〈その扶桑の背中を見てくれるか?〉

「背中?」

〈あぁ、多分…そこにある〉

 

その言葉に疑問を覚えつつも、まずは通信のとおりに行動するハウンド4

 

「…後ろに回っ…これは…」

 

そう、その背中にあったのは

何かに噛まれたか、

削られたような傷痕

 

それはひどく深く、ろくに治療を施された様子はない

 

〈深海棲艦から艦娘への艤装接続実験…だそうだ、悪趣味どころではない〉

「あぁもうなんなんだよ881研ってのは!頭の中どうなってるんだよ!」

 

「落ち着け、ハウンド4

私とてそれは考えている…ただ、昔の881研究室はこうではなかった

そう、こんなはずではなかったんだ」

 

「じゃあどうして」

「おかしくなったのは頭が変わった時からだ、リーダーだった室長が代わって

そこからメンバーもおかしくなっていった、倫理に問題のある実験や金銭的な消耗の激しい実験、普通ならば足踏みするようなこともノーブレーキで突っ走るイカれた集団に成り果てた…全てはアイツのせいだ…」

 

「そのアイツってのは?」

「二代目室長の、(やなぎ)だ、アイツが『賢いバカ』どもを唆した…っ!」

 

砕けんばかりに拳を握るメディックと、目に憎悪を滾らせるハウンド4

二人とも冷静とは言い難い精神状態であるが、俺にかける言葉はない

 

〈その部屋より奥はあるか?〉

 

無理やりに冷静に戻すべく、本来の任務の情報をよこすように催促すると

 

「…いや、確認できないな

どうもこの部屋が奥、突き止まりの部屋らしい」

 

キレながらも、なお情報を渡してくるハウンド4、プロ意識が高くて何よりだ

 

〈よし、わかった

その扶桑は…無視するぞ〉

 

「なぜ…っ!」

〈接触自体が危険すぎるし、どの道助けることはできないからだ、すまない〉

 

一言で切って捨て、俺は扶桑(仮)を意識から外す…努めて考えないことにしているだけだが、オペレーターの手ぬかりは即、部隊の全滅に繋がる

扶桑(仮)が置いていかれた理由は不明だが、それをまともに回収することは不可能と考えるべきであるし、救えないものに固執するわけにはいかない

 

…「すまない」

 

その一言は、意図を伝えられたかはわからない、しかし俺には

それを確認する余裕などない

 

〈よし、一旦戻ってくれ

二階に進んだ4人が心配だからな〉

 

通信機に声を吹き込んで

しばし待つ、そして

 

爆音が鳴り響く

〈状況は!?〉

「何があった!?」

 

ほぼ同時に

通信がつながっているハウンド4とは関係ないところでの音だとするなら

のこりの突入メンバー

電磁障壁の向こうへと進んでいったハウンドが危ないのか、それとも

ハウンドが鳴らしたわけでも無いのか、それは分からない

 

〈ハウンド4、状況はどうなっている〉

「こちらハウンド4、今のは俺たちと関係ない音だが…おそらくは」

 

「レ級の砲撃だろうな、奴の砲とよく似た音だった」

〈まずいな…メンバーはレ級と戦えるレベルの練度ってわけじゃない筈だ

レ級が一体なら、屋内戦って事も含めてどうとでもなるかもしれないが

2体以上出てきたらどうしようもないぞ〉

 

「…それに関してはどうとも言えない、とにかく、今はどう動くかを教えてくれ」

「…そうだな、電磁障壁の中に我々も突入すれば通信が途絶する

それでは報告もできないだろう?」

 

〈そうだな…〉

 

言葉を切り、思案する

まずは、何を行うべきか

情報を求めるのならば突入、その後帰還して情報共有、これが理想だ

だが、上にはこの爆音の原因が存在する

ならば電磁障壁の原因、ジャマーを破壊する?無理だろう、これを探すのには手間というレベルではない時間がかかる、結局意味がないし、こういう物は大抵壁や基礎に入っている物だ

無理に壊せば建屋自体が崩落しかねない

 

…どうするべきなんだ…

 

〈いや、突入か否か

悩み続けていても仕方ない、手遅れになる前に突っ込め!〉

 

「了解ハウンド4、突入する!」

「…私は通信機のために残るぞ」

 

そうして、ハウンド4は突入していった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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