戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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海ならざる戦場(いくさば)

「瑞鶴、力を貸してくれ」

「…嫌よ、だってそれを使ったら提督が壊れちゃう!」「ここで力を使わなかったら、俺は絶対に後悔する、だから俺は…たとえ無理でも使うだけだ」

 

魂を引きずり戻す

 

瑞鶴の…深海鶴棲姫と魂をぶつけ合わせたせいで、砕け散り、半分以上を深海の残骸に奪われてしまった俺だが、その深海の残骸、すなわち、深海鶴棲姫の魂を引き寄せることで、間接的に俺の魂を取り戻すことができる

 

「…っ!」

[提督っ!]

 

悲鳴じみた瑞鶴の声は

もはや俺に届くことはない

 

「mode『Decisive battle』」

 

 

そんな音と共に、目が青くなり

腕と髪は白く染まっていく

 

俺の服装が変わる

決戦仕様の瑞鶴改二と同じ暗い緑色の服、瑞鶴の服を男性用に無理やり合わせたような強引なデザインだが、仕方ないと受け入れよう

 

そして、羽織り含めての服の出現が終わった直後

「いてててっ…」

白鉢巻が出現、わりとキツい…

頭のサイズ自体が違うから当然だ

 

その後も色々とアイテムが出た後

最後に出現したのが和弓と矢筒

右の背腰に装着される斬新なデザインの矢筒はもう慣れたが、和弓を俺自身が持つのは初めてだ

 

いや、何度も使っているが

それはあくまでも姉さんや瑞鶴が主体であって、俺が自分で体を動かしている訳ではなかった…とはいえ、御宅を並べても仕方ない

 

俺は窓を開けて、そこから矢を放った

 

「強襲爆撃隊!全機発艦!」

 

叢雲side

 

「戦艦タ級の艤装を融合した僕の肉体は!駆逐艦如き軽く凌駕する!」

 

「やられるわけにはいかないわね」

 

私はこの人を守るために戦う…たとえ相手が人間であっても、人間とすら呼ばないほどに零落した怪物(ナニカ)であっても

 

それが、託された意思だから

 

「負けられない、絶対に!」

「砕いて捻って…潰す!」

 

意味があるのかさえ怪しいような叫びを直に聞き届け、右手に握った槍でその主砲を弾く、装甲は硬いし真っ当に攻撃が届かないけど

 

それでも、この人は

この人達は諦めなかったから

だから私も諦めない

 

「っ!」

 

「死になさい!叢雲!」

「やられるわけには…行かないって言ったはずよ!」

 

凄まじいパワーで襲いかかってくる男、私の(ある程度自分の性能を認めている)貧弱な装甲では受けきれない

 

だからどうしたの?

 

「体で受けられないなら…躱せばいいじゃない」

 

私の武装の中で最も強度が高いのは槍、それを活用してやればいい

槍だって真っ正面から受けるんじゃなく、受け流せば十分に耐えられるでしょ?

 

「貴様ァァア!」

「なによ、文句でもあるの?」

 

私は夕立のように誰彼構わず撃ち掛けるような馬鹿ではない…戦艦の装甲相手では真っ当な攻撃は無効化されてしまう

 

「やるしかない…か」

 

攻撃が効かなくても

受け流すことだけで手一杯でも

ただ諦めるわけには行かない

それが、救われた側の私の

生き残ったものの務め!

 

「やぁぁぁっ!」

 

なれない喚声と同時に、

全力を込めて槍を払う

 

「無駄だぁっ!」

「っ!」

 

やはり単発の一撃ではどんなに強く振っても力が足りない、なら連撃で…!

 

「そう易々と…撃たせてなどやるものか!」

 

濁り切った声と共に、反射的に手を離した私の主砲を叩き壊す怪物(ナニカ)

 

気色の悪いナニカはそのまま私に向けて突進してきて、私は体当たりを受けてしまう

 

「ゔっぐ…ぅ…」

 

吹き飛ばされて床に転がった私を

さらなる追撃が打ち据える

 

 

「どうだぁぁっ!?新開発した私の武装(ぶっそぉう)!真空衝撃砲のお味ぃはぁあっ!?」

 

意味がわからないのだけど

とにかく実弾じゃない…でも空砲ってわけでもない何か…聞いた字面通りに考えるなら衝撃波?が私の艤装を破壊していく

 

「ぐ…ぁぁあっ!」

「おっと危ない危ない…これは折ってしまいましょう、危険なので、ねぇっ!」

 

床から直接放った

苦し紛れの一撃はたやすく弾かれ

そのまま槍を掴まれて

 

ボキン

 

そんな音と共に、絶望が宣告された

そう、私の艤装の中で最も強度が高いのは槍、それが簡単に折られてしまった

それはつまり、すべての防御手段を無効化されたに等しい

 

対抗できる火力も

耐久できる装甲もなしに

どうやって生き延びれば良いの…

 

[もう良いです、叢雲、私が戻ります]

「ダメよ!」

 

そんな中で聞こえた彼の声に

反射的に拒絶を叩きつける

だって、今戻したらすぐに殺されてしまう…私が足柄さんから託された命を…彼へと繋いだ命を、奪われてしまう

 

それは絶対に許せない

 

「繋いだ命を…諦めないで!」

〈良く言いました〉

 

その声と同時に、周囲で爆発が起こる

 

(叢雲さん!助けに来ました!)

(我らは瑞鶴所属の航空隊

ていとくの指示によりすけだちする!)

(瑞鶴嫌がってたけど…?

どうするべきなんだろうか…)

 

妖精達の声が聞こえる

何人かの妖精が艦載機から飛び降りて来る

 

(へっ、この程度の傷ならちょろいちょろい!仕事だやろうども!)

((へいあねさん!))

 

飛び降りた子達は私の艤装に入った傷を見るなり、板や丸太で修繕を始めていく

 

「な!?なぜここに妖精が!」

(お?見えるのです?…まあどう見ても敵ですし、撃ちますね)

 

軽々とした一言が聞こえた直後

恐ろしいほどの爆撃がソレを襲った

 

(ふん、彗星用の爆弾の威力をみるのです!)

(装備はちょっと古くても、十分に戦えますから)

 

艦載機…爆撃機に乗った妖精は恐ろしいほどのクイックな旋回を繰り返し

連続爆撃を行う

 

戦闘の規模自体が実艦に比べるべくもないほどに小さい艦娘といえども

艦載機をあそこまで細かく旋回させるなんて出来ないはず、一体どうやって…

 

〈聞こえているかな?〉

「っ!?聞こえているわ!」

 

〈ならよかった、通信の復旧に成功したようだな、叢雲〉

「それは…ええ、でも

この艦載機と妖精達は…?」

 

〈それなら俺が送った、援護にはなるだろう…そこそこ以上の練度はあるし、旧型装備でも十分に立ち回れる子達だから、気にするな〉

「わ、わかったわ」

 

通信に頷いて、立ち上がる

…本当に艤装に問題はない

 

「すごい…」

(どんなもんだい!)

(これくらいなら余裕です!)

(はいはい、早く戻るよ!)

 

リーダーらしい子に連れられて

応急修理妖精は離れていった

 

「…さぁ、やりましょうか!」

 

提督の支援を受けて

仕切り直しとなった戦場で

私は砲を構えた

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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