戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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400話記念番外編 扶桑さんと山城さん

「…はぁ……」

 

ため息をついている声、執務室では相応しくないような鬱々とした声

この声は…藤田咲voice…

 

「山城か!?」

 

バン!と扉を開けて突入すると

 

「提督っ!?」

 

そこにいたのは…扶桑

 

「なんだ姉の方か…いやなんでもない、普段暇つぶしに来るようなことも中々無いし、扶桑は今日秘書艦じゃ無いから、山城かと思ったよ」

「そうですね、私も

仕事というわけでもなくただこの部屋に居る、という事はあまりしませんし

そう思われるのも当然だと思います」

 

「……………」

「……………」

 

特に二人とも自分からリードするような性格でもなく、ただ黙り込む

 

「…提督…」

「なんだ?」

 

「いえ、呼んでみただけ、です」

「…そうか」

 

幸せそうな笑顔の扶桑を眺めながら、こちらも微笑う

 

落ち着く時間、というのは

こういうことを言うんだろうか

 

酷く疲労していた精神が安らぐと共に休息を要求し始め、とうとう耐えきれなくなってあくびが出る

 

「あら、提督はお昼寝ですか?」

「そうさせてもらうよ」

 

「でしたら…その…」「?」

 

「えっと…膝枕とか…如何でしょうか?」

 

「!」

 

理解が遅れたのは眠気のためだけではあるまい、何があるのかと思えば膝枕

という突飛な単語、そしてそれが扶桑さんから出てきたという衝撃

それら全てが渾然一体となって理解を阻害しているのだ

 

「…えい」「あっ」

 

そっと伸ばされた手が俺の腕を引き、反射的に体勢を整え直すより前に

ひっくり返されて

 

「よし、です」

 

畳エリアに正座していた扶桑さんに

ものの見事に頭を回収され

 

「え?」

 

俺が一言を言う前に

膝枕の体勢は完成していた

 

「………」

「どうですか?提督」

 

控えめに言って絶景

…いや、なんでもない

[………]

 

殺意の波動を感じる瑞鶴の視線から逃れながら目を閉じる

 

何かを考える余裕もなく

俺はいつのまにか眠っていた

 

side change

蒼羅side out

扶桑side in

 

「あら、提督?…眠ってしまわれましたか?…感想も聞けないくらいにおつかれだったのでしょうか?…

 

今日はしばらく、このままにしておいて差し上げましょう」

 

 

 


 

「失礼するわ、提督

お姉様をみて…な…い…

 

お姉様どいてそいつ殺せない」

 

「殺すなんて物騒なことを言わないで、提督を傷つけるなんて許せません」

 

そっと提督の頭を撫でながら山城から庇う

 

山城は時々突飛な行動に出るから、本当に傷つけてしまいかねないもの

 

「いい?」

「…………はい、お姉様」

 

渋々と言った様相ながらに頷く山城…そんなに羨ましかったのかしら?

 

「提督が起きたら、後であなたもしてあげるわ」

「ありがとうございます!…チッ、早く起きろ…」

 

「聞こえてるわよ?山城?」

「ひうっ!…ごめんなさい」

 

舌打ちしながらぶつぶつと何か言っている山城に注意して、そっと手招きする

 

「なんですか?」

「座って」

 

優しく言うと、すぐに畳に正座する山城

 

「いつもはこんなことできないものね、甘やかしてあげられなくてごめんなさいね」

「あ…」

 

そっと手をやって、頭を撫でる

昔から、こうすると山城は大人しくなる

 

「お姉様………」

「いいこ、いい子よ」

 

「あ…ん……ふぁ…んうっ…」

「うふふ…かわいいわね…」

 

「お姉様…もう…あっ…」

「なぁに?…聞こえないわ…」

「あぁん!」

 

そっと、そっと、柔らかく

優しく撫で続けていると、山城は下がろうとする…やっぱり昔からそうするのだけれど、今日は一味違う

 

「逃がさないわ…もっとはっきり言いなさい?」

「ん、ごめんなさい…ごめんなさいぃ」

 

「何を言ってるのかわからない、やめてあげないわ」

 

体を逃がそうとする山城を逆の手で捕まえながら、撫で続ける

 

もちろん、膝には提督が寝たままだから、私自身はあまり動かないけど

山城動き出しを見極めればその程度のことは容易いわ

 

「山城、あなたもこれ、好きよね?」

「あっ…すき、しゅきぃ…」

 

「うふふっ、呂律が回ってないわ

 

そんなところもかわいい」

 

いつのまにか身をすり寄せてきていた山城を抱き留めて、しばらく撫で続けていた

 

 

 


 

「で、何をやっているのかしら?この姉妹は」

「かがしゃん…たしゅけてぇ」

「うふふっ」

 

「助けてと言いながら自分からすり寄っているように見えるのは私の気のせいなのかしら?…まぁとにかく、もう15:00だから

その膝の上の弟は連れて行かせてもらうわね」

「本当は無理に起こしたくはないのですけど、時間というのなら仕方ありませんね

山城、私たちも間宮に行きましょう?」

「……あ……あぁ……」

 

半開きの口から抑揚のない声を漏らしながら…生まれたての鹿のような足で立ち上がる山城…大丈夫なのかしら?

 

「ほら蒼羅、起きなさい…いつまでも寝ていたら扶桑さんに迷惑でしょう?」

「ん…あぇ?」

「あえじゃないわ、加賀よ」

 

聞いた後で雷ちゃんのことを思い出して

つい笑ってしまう…あぁ加賀さん怒らないで

 

「…姉さん?…なんで?あれ?扶桑さん」

「はい、先ほど加賀さんがおやつ頃だから、と起こしに来てくださったんですよ?」

「…なるほど、わかった」

 

直接視線の届かない膝の上でもわかるくらいに急に顔を引き締めた提督は

そのままぱっと起き上がり

加賀さんに引っ張られるままに畳を降りて靴を履き直して去っていった

 

「行きましょう?」

「…はひぃ…」

 

未だに呂律が回っていない山城の手を引いて歩く、山城は少しふらついていて

姿勢が安定しないみたい

 

「山城、もしかしてあなた」

「ひゃいっ!」

 

「正座で足を傷めてしまったの?」

 

深海棲艦になって以来、正座なんてしなかったとしたら、十分に考えられる

 

「ダメよ山城、無理をしたら」

「え?…ふぃああの…大丈夫れす!」

 

「それは大丈夫に聞こえないわ」

 

そっと山城を抱いて、耳元に囁く

「いい?山城、あなたを失ってすぐの私は、笑うことができなかった

そのあと、長い時が経ってから

ようやく私に感情が戻ってきた

私はもう二度と、山城(えがお)を失いたくないの、だから無理をしないで

少しでも辛ければ相談して

私を置いて行かないで」

 

「…お姉さま…」

 

そっと、山城の手が私の背に回る

 

「私は、大丈夫ですよ

お姉さま、もう二度と、置いていきなんてしません」

 

「山城…」「お姉さま」

 

 


 

 

…あの二人は一体…なにをやっているんでしょうか?

 

「あ、里見さんっぴょん!」

「卯月ちゃん。こんにちは」

「こんにちはっぴょん!」

 

ぴょこぴょこと跳ねているうさぎにかまいながら、視線を戻す

廊下で抱き合っている扶桑型姉妹に

 

「ちょうどよかった、卯月ちゃん

あの二人に悪戯を仕掛けましょう」

 

「え?どういう事っぴょん?」

「そうですね、これが良いでしょう…」

 

卯月ちゃんに作戦を説明して、その場を離れる

 

そして

 

「………ぴょーん!」

 

床を匍匐前進していた卯月が跳躍し、飛び出した先は…二人のスカートの中

 

「きゃぁぁあっ!」

 

山城が大声を上げながら飛び下がり

扶桑も山城に回していた手を離す

 

「二人ともなにしてるっぴょん?」

「…えっと、姉妹艦のスキンシップ、というものよ、私はほは、

山城と長い間会っていなかったもの」

 

慌てている扶桑さんは

やがて当初の目的を思い出したのか、

 

やがて食堂の方へ向かった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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