戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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努力

ずっとダンマリを決め込んでいる扶桑は

それでも少しずつ砲撃を入れて肉塊を消し飛ばし、水際で肉塊を防いでいる

だがやはり、入口ひとつ、2メートル程度のサイズの空間。その中を通り抜けようとしている肉塊だけを正確に射撃し続けるなんてことは不可能、

 

少しずつ、取り残しが出てくる

 

当然ながら、俺にはどうすることもできないというのは先ほど言った通りだ

しかし、何もせずに見ているというのも難しい

 

なにせその肉塊やそこから出現した触手は、大概が俺を狙ってきているからだ

 

いちいち避けるのも労力だが

迫りくるものを躱さずにいるわけにもいかない、脚からの血は止まるところを知らない

 

今は筋力で強引に留めているが

足にも限界がきてしまう

早く血を止めなくては…

 

 

「…っ!」

 

しかし緊急用のダクトテープと包帯、止血帯は艤装の中だ、クソッ!

 

「避けて!」

「なっ!?」

 

突然の声に、とっさに対応できなかったオレは、自分の腹に穴が開く光景を見た

 

「ぐぉぉがぁぁっ!」

 

人体に傷がついた時、その瞬間は何も感じないことが多いというオレの経験則は

見事に裏切られ

肉塊から形成された槍に腹を撃ち抜かれたオレは想像を絶するほどの熱を味わっていた

 

「…!……離れて!」

 

熱い 熱い 熱い 熱い 熱い

扶桑が何か言ってる

 

熱い 熱い 熱い 熱い

何を言っているのか聞き取れない

 

熱い 熱い 熱い

もう感覚がない

 

熱い 熱い

痛みが今更になってやってきた

 

熱い

 

 

もう 何も感じない

 

side out

 

 

「避けて!」

 

その声が聞こえた瞬間

俺はハウンド5に何かが起こったことを知った

 

遠くから聞こえる絶叫は

まさしくハウンド5の声

今は艤装を扶桑に預けた身であるはずの彼から、なぜそんな声が聞こえる?

 

〈扶桑!何があった!?〉

「撃ち漏らした…私が!

ダメ…死なないで…また私を置いて行かないでよ!」

 

クソ!扶桑まで錯乱している

まずい、これじゃあ正確な情報が伝わってこない!

 

〈まずは落ち着くんだ、扶桑

君まで冷静を失えば今度こそ彼の命が危ない!〉

「ならなおさら落ち着いて居られないわ!」

 

落ち着いてはくれないか…どうすればいいんだ?…こういう時は

どうすればいい

 

現場にいない俺では何か目立つ行動をとるような方法は取れない

なにか…なにか……

 

〈クソ…結局なにもできないのか!〉

 

〈焦らないで、今落ち着くべきなのはあなたよ、今到着したわ〉

 

姉さんの声と同時に、閉塞した思考の迷路から現実に引き戻される

 

〈総員爆撃開始

肉塊を打ち払いなさい!〉

(了解です!)

(ばくげきかいし〜!)

(2回目なのに範囲が広すぎる…)

 

(行って帰ってくるまでになにがあったんだ…これは)

(隊長、われわれも急ぐべきかと)

(今急いでるよ!)

 

妖精達の通信が次々に入ってくる

そうだ、なぜ考えて居なかった

俺はさっき言ったじゃないか

僅かな時間でも耐え切ればそれで勝ち、姉さんの爆撃隊が来てくれるって

 

それに俺自身だって爆撃機を送ってるんだ、本当に俺はなにを考えていた

冷静を失っていたのは誰だよ

 

〈今は自分を責めている暇はないわ

蒼羅、あなたも早く〉

〈了解!〉

 

全面に展開した肉塊を、次々に投下される爆弾がブチ抜いていく

今度投下されているのは陸地基地攻撃用の焼夷弾と対艦攻撃用の魚雷

両方ともであるらしい

 

互いに使うタイミングが違う武装を巧みに使い分けていく

 

〈私が道を開くわ、扶桑

あなたはその人を抱えて走りなさい!〉

「わかった!」

 

扶桑らしからぬ返事を発しながら

ハウンド5を抱えた扶桑は

爆発で肉塊が一時的に無くなった通路を駆け出し

 

その中を突破していく

 

「道を教えて!」

〈ナビゲートする、この先の通路をまっすぐ、視覚情報から場所を取るから

視線はまっすぐに廊下の先へと向けてくれ〉

「わかりました」

 

返事も徐々に冷静になってきた

扶桑は、まっすぐに視線を取り、艤装に搭載されたカメラの視界が安定する

 

「…どこで曲がれば良いの?」

〈ここから三つ先の曲がり角で左折、その先は階段や十字路はないから問題ない

全力で突っ走れ!〉

 

「了解!」

 

応えと共に加速する足は

僅かな踏み場しかない廊下を見事に捉えて、安定したスピードで廊下を抜けていく

 

(その辺爆撃がまだ済んでないでーす!)

(急いで掃除しますんで)

(いっぱいアウトレンジしよ!)

 

聞こえてくる妖精の会話も、まだまだ問題なさげだ

 

俺も安心して見ていられる

…そして加賀所属の彗星江草隊が稼いでくれた時間を使い、俺の放った彗星も到着する

 

(〈爆撃開始〉)

 

俺の声と、彗星部隊の隊長妖精の声が重なり、その瞬間

 

爆撃が開始された

裏の方まで一直線に進んで進路の確保を最優先とし、正面の障害物は無視していた姉さんの彗星江草隊と違い、瑞鶴所属の彗星は正面玄関側からすべての障害を除去するために絨毯爆撃…とは流石に言わないだろうが

それに近いことをやっていた

 

かなり広範囲の焼灼のお陰で空気は熱され、そして直撃を受けている肉塊は焼け焦げたカーペットに変わっている

 

そして、奥の通路から走って来る扶桑と、それに随伴して飛来する加賀所属の彗星江草隊を発見した

 

(どうしますか?)

〈ここでお前らの役目は終わりだな

一旦だが…撤退してくれ、ハウンド1の滑走路を借りよう、そうすれば臨時発艦もできると思うぞ〉

 

〈了解しました、祥鳳さんのコピー艤装の人に滑走路を貸してもらいます)

〈おう、いけ…んで帰りがけにこの柱に爆撃してくれ〉

 

(了解しました)

 

そして、建屋を脱出に成功したハウンド5と扶桑はハウンドチームと合流し、

俺の彗星による爆撃が建屋の心柱を破壊したのか、それとも元々無茶な改造や製法をしていたのかわからないが

何かが決定打となってしまったらしく

 

建屋は見事に倒壊した

肉塊達を下敷きにして

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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