戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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「それじゃあ次は僕達のターンだよ」

 

「オレのターン!ドロー!」

天龍が俺の首根っこを掴む

 

「ちょちょっちょっちょっと!

流れるように俺の首を引き抜き(ドロー)しないでよ!?」

 

「うるせぇお前のためだ」

「No-----------!」

 

金剛そっくりな声をあげながら

首だけでグワングワン振り回されて、挙句投げられる

 

「ぐへぇ」

「っぽい」

 

起こしてくれるのかと思えば

夕立にすら蹴られたのだが

 

「ちょっと?!」

「提督さん、提督さんには失望したっぽい、だからちょっと床で反省しててっぽい」

 

「いっちばーん…でもないけど

とりあえず悪い提督にはお仕置きが必要だよね」「行こう、白露」

 

時雨とアイコンタクトを取った白露が

天井近くまでジャンプする

そのまま柱を蹴って反転二段ジャンプし

俺の方へ

 

「ロケットドリルキーック!」

 

時雨はやや助走を取って水平ラインでに飛び蹴りの姿勢をとり、低空からの横攻撃

 

「ライダーグライド!」

 

見事な連携の同時着弾を決めてくる

正確な一撃だ

だからこそ、予測しやすい

 

「せぇい!」

 

即行で立ち上がった俺は

時雨のライダーグライドを掴み取り、そのまま手首を返して床に誘導しつつ

自身に運動エネルギーを柔かく受けて

時雨は減速

 

白露のロケット(無し)ドリルキックは自分も蹴り込む形で足裏を合わせつつ

これも減速して受け流し、地面着弾寸前の状態で共に掴み上げる

 

「わわわわっ!」

「!!」

 

「女の子がそんな危ない真似をしちゃいけません」

 

減速しきれずに床にぶつかってしまった白露はごめん、だが私は謝らない

 

「危険をするのはそっちじゃないか

なら僕たちだって怒っても良いはずだよ」

「あのね、俺とお前らじゃ立場が違うの、女の子なんだから自重しろ」

 

時雨を拾い上げて立たせて

白露は…異常なさそうだな、ヨシ

 

「女の子…」

(あー…これは勝てないかな…)

 

白露の足の状態を確認していると

なにやら白露が呟いている

……どうかしたか?

 

[提督さんには関係ない事だから聞き直さなくて良いよ]

[そうか]

 

とりあえず、俺は

白露を医務室送りにして

まだ表情の晴れない時雨に向かい合う

 

「ライダーキックは危ない、できるのはライダーだけだから、真似をしちゃダメ

DVDでテロップに出ていただろう?」

 

(真似をして頭を打ったり、足を折ったりする子供が出てきたために

今では必ずと言って良いほどにテロップにある『良い子は真似しないでね』の文言)

 

「どうせ僕は悪い子だよ」

「そんな事は無いだろう」

 

「提督…」

「俺から見れば時雨はいい子だよ、そもそも悪い子だったら今頃布団の中でゲームしてるんじゃないか?」

 

「………………」

「だから、自分を勝手に悪い子にしちゃいけないよ、時雨は俺の艦娘なんだから

俺の許可なく悪い子にはなるな」

 

「…ぅぅ…この天然たらしめ…」

「聞こえてんぞ時雨」

「……………」

 

「いいか、返事は?」

「はい」

 

こくん、とうなずいた時雨の頭をそっと撫でて、どこか羨ましそうな視線を向けてくる夕立と五月雨に怪訝な表情を浮かべて

「よし、それじゃあ一緒に間宮行くか」

「あ、私の存在感どこに行ったんですか!」

 

完全に忘れ去られていた吹雪が

飛びついてくる

 

「これでも主人公なんですから!

初期艦なんですから!」

[メタいんだが?…まぁ、吹雪が初期組の中でも一際早く人と接触した艦娘である事は確かだが]

[メタい?…よくわかんないけど

主人公って、どういう事?]

 

[俺にもわからん]

 

瑞鶴の問いは鋭すぎて困るようなモノだったので、無回答としておき

とりあえず吹雪の頭を撫でておく

 

「すまんが俺の初期艦は…強いて言えば隼鷹なんだ」

「…………」

 

涙目でこちらを見上げてくるの本当にやめない?精神的ダメージ大きいんだけど

 

「あのな、吹雪」

「はい」

「とりあえず、別段にお前のことを忘れたりはしないから安心しろよ」

 

「…はい!」

 

きゅっとした表情の後に笑顔

本当に可愛いなこの子は

 

「んで、オレは戻るぜ

他の連中を呼んでこなきゃな」

 

「もう遅いのです!」

「ハラショー」

「呼ばれて来たわ!」

「最初から居たわ!」

 

暁だけなんというか…

いや、あえてなにも言うまい

 

言うだけ言った白露型が撤退して

天龍も帰って行き

吹雪は敬礼して…今出て行った

 

と言う事は

「この執務室は暁型が占拠したわ!」

 

「一人前のレディーはそんなはしたない事しないんだけどなぁ…おっかしいな

俺は暁のことを一人前のレディーだと思ってたんだけどなぁ」

「占拠なんてするわけないじゃない、そんなお子ちゃまな事はしないわ!」

 

芸術的なまでの掌返しだった

 

「司令官、少し温いよ」

響が耳元に寄ってくる

「そうか?」

 

「うん、このくらいはしないとね」

 

響に頬を引っ張られる

 

「いてててててっ」

「司令官、私は怒ってるよ

急に居なくなって、三週間も留守にしたんだ、責任は取ってもらう」

「言っても極秘任務なんだから仕方ないっての!」

 

「へぇ、司令官にとって私たちは任務一つで連絡も無く別れられる程度の関係なんだ

…………ひどいよ」

 

「ぐふぁ…」

 

吐血するような声で応えながら崩れ落ちる俺に、さらなる追い討ちが掛かる

 

「司令官さんはひどい人なのです

私たちをみーんな依存させて

急に居なくなっちゃうなんて」

 

「依存!?」「なのです」

 

いや、『こく』と頷かれても

 

「大丈夫よ、司令官

これからやり直せるわ!

辛くなったらいつでも頼ってね」

 

「これは…うん、分かったよ」

 

膝に乗って来た雷に頭を撫でられる

…なんというか、新しい扉(シャア)が開きそうな気がするが、

 

「大丈夫だよ雷、分かっている

特務だからっていきなり辺さんに任せた俺が悪いんだし、仕方ないよ」

 

俺はシャアにはならなかった

 

「………むぅ………」

 

ぷくー、と膨れている暁

これはどう扱えばいいんだろうか?

 

[ほっぺたを突いてみれば?]

[爆発する未来が見えるな]

 

「………むぅ…………」

[いっそ本当に突いてみるか]

 

そっと手を伸ばすと、

なぜか頬に溜めていた空気は消え去り

頭を出した暁は何かを期待するような表情になる

 

「…あ、そういう…?」

 

あまりに目が輝いている暁を裏切ることなどできずに、俺は暁の頭を撫でるのだった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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