戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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厭離

「…よし着いたぞ、降りて先に正門の方から入っててくれ…あ、これ渡しとくよ

門のところで待っていてくれ」

 

「はい、分かりました」

 

サラトガを下ろしてから車を停めるために駐車場のある裏側へと回り

警備兵に挨拶する

警備は民間の警備会社を雇うのではなく、警備部の人員で担当するのだが

やはりというかなんというか

ここ数ヶ月で何度も訪れている俺は何度も挨拶していた人物…山根浩一さん(31)が警備室にいたため、

身分証はサラトガが持っていることを説明すると監視カメラの映像を回してサラトガがいることを確認した上でOKを出してくれたので

いつもの通りに停車手続きを行う

 

然るのちにサラトガを追いかけて大本営の庁舎に入る、玄関を入ったあたりで待っていたサラトガに身分証のIDカードを返してもらい

 

二人で並んで歩く

基本的に大本営は官営だけあって大きな建物であり、通路の幅も3メートルほどあるので、二人なら並んでも問題はない

 

というか、新庁舎になってからは提督+艦娘の二人か三人での連れ歩きを想定して

意図的に通路を広く取っていると聞く

 

「よし、呼び出された場所は…第三大会議室か…ここもよく行く場所だなぁ」

 

「提督はそんなに頻繁に大本営に来ているのですか?」

「いや、基本は年何回かとかなんだが…最近は来るたびにここに来ているから、それを揶揄しているだけだよ」

 

話しながら歩いていると

 

「おっと、これは大佐殿

随分とめずらしい艦娘をお連れのようで」

 

「…准将殿、ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません」

 

突然、声を掛けられた

ニヤニヤとした厭わしい笑みを浮かべた白髪の…60近いだろう爺さんだ

そしてその顔はブラックリストで知っている、艦娘軽視派閥の一人、結川剛三郎(ゆがわごうざぶろう)准将だ

 

「いえいえ、して、その艦娘はどこのどなたですかな?」

「こちらは…」

「初めまして、レキシントン(Lexington)級二番艦のサラトガ(Saratoga)です」

 

俺の隣から一歩出て流暢な日本語で挨拶するサラトガ、しかし、その相手は彼女に対して敬意や好意を向ける気はなさそうだ

体を無遠慮に見ているのが側から見てよくわかる

 

「ほうほう…なるほど、アメリカの艦ですか」

「えぇ、彼女のオリジナルはアメリカ籍の艦、サラトガです、しかし今はウチで建造した創海鎮守府の艦娘ですよ?」

 

先んじて口を出し、『うちの艦娘』を強調する

そのくらい露骨にしないと『私が引き取ろう』などと言って強引に奪われてしまう可能性もあるのだ、何せ准将とは言え将官、大佐の自分にとっては目上に当たるのだから

 

結川剛三郎、彼は提督適性無し、妖精の認識能力もなし、指揮適性も無しで現場にはまったくもって不要な人材ではあるが、政界とのパイプも持ち、後ろ暗い場所にも通じる人物で在り、上ではポストを用意するに足りる人物であるらしい

 

…まぁそのせいで名誉将官として大日本帝国軍に存在しなかった『准将』の階級を作ってそこに押し込むことになったもはや上がり幅のない人物である

 

准将はだいたいそう言った『上でポストを用意する必要があるがあまり高い場所には置けない人物』のための場であったり、本人が昇進を嫌がったりする時のための暫定的な置き場で、本来は存在しない段階であるが故に昇進ではスキップされることの多い特殊な階級でもある

 

「外国の艦を建造するとは珍しい

どうですかな?一つ私に預けてみては、必ずや上手に運用して莫大な利益を生んでみせましょう」

 

来た、交渉の体を取っているつもりの脅迫だ

「すみません、彼女はウチの艦ですので、彼女自身の意見を聞いてそれを検討した後に返答させていただきます」

「ん、ここで決めれば良いでしょう」

 

随分と脅迫を急いでいるな…?

どうかしたのか?それとも単にサラトガが好みなタイプなのか?

 

結川准将は艦娘軽視派の中でも小森中将と近い艦娘≠兵器論を唱える人物で

その方向性は…輪をかけて劣悪

そう、艦娘を単なる兵器として使い、そして捨てる艦娘兵器論者と違い

彼らは…艦娘を見目のよい女子として、最初からある程度の教養を持った自立人形として、そして兵器として、あらゆる方向で使うのだ

 

洗脳を施して高額な商品として売却したり、賄賂として贈ったり、性的な産業に''消費’'したりするのだという…いかに強力な艦娘でも艤装を外せば普通の人間より少し強い程度、屈強な男ならば取り押さえるなども可能なのだろう、建造直後の状況説明を行わないままに捕縛してそのままトラックか何かで『出荷』しているというならおかしくはない

 

大方サラトガもレアな外国艦娘、などと言って売り飛ばそうとしているのだろう

 

(サラトガ、危険だ…わざと乗ったフリはやめておけよ)

 

聞こえない程度の小声と

口元を袖で隠す小技を使ってメッセージを伝えつつ、俺の方が答える

 

「鎮守府の戦力バランスやローテーションなどにも関わることなので

一存では決められないのです

後ほど検討させて頂きます

それでは、呼び出しを受けているので失礼します」

 

一礼して、サラトガと共に

小走りで通り過ぎる

 

「調子に乗るなよ…小僧が…!」

 

小声の捨て台詞は…聞こえなかったことにした

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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