「…よし、切り抜けた
サラトガ、説明する時間もあまりなかったから説明できていなかったけど、人間は基本敵だと思った方がいい、特にああいった手合いは危険だよ
艦隊の指揮に関する能力もないのに艦娘をただ外見がいいからと手元に置こうとする輩だし、『艦娘を艦娘として有効活用する』などと言いながら死ぬまで不当な条件で働かせるような奴等だから」
やや怯えたような表情をしていたサラトガに早口の小声で言い聞かせていると、そう言い切ったと同時に第3大会議室に到着した
その扉をノックして
きっかり三秒待ち
「失礼します!横須賀鎮守府以下創海鎮守府所属、神巫蒼羅大佐
命令に従って参上致しました!」
「………誰もいないわね」
どうも徒労だったようだ
まぁ誰がいるか、あるいは誰もいないのかは扉を開けるまではわからない
可能性の重なりが存在するので実質シュレディンガーの猫だ
「先に待ってるか」「はい」
席…には座らずに、俺の席の前で立つ
俺の席がなぜわかるかって?ネームプレートがあるからだよ察しろよ(無茶)
意地悪くも連れ歩く艦娘のための席はない…秘書艦や進行役ならば立ちっぱなしでもいいかもしれないが、艦娘の席がないというのは少しいやな気分になる
香取、鹿島や長門といった例外以外は基本的に海軍の組織に働きかけるようなことはしないのでこういった体制はなかなか崩れていかないのだろう
「…………」
9:30から約25分間掛けた待機はようやく終わり、全員が揃って会議を開始する
「はい、それでは会議を始めます」
会議が始まったとほぼ同時に
金切り声が上がる
「その前に一つ言わせてもらうけど!アナタの連れているその娘はいったい誰なの?!」
「サラトガです、自分の建造した自分の艦娘ですよ」
「サラトガです、初めまして」
ペコ、と頭を下げるサラトガに物欲しげな視線を向ける何人かの提督
「新造艦やその子はうちで預かろう、リンガでなら十分活躍できるだろう」
「何をいっているのよ!この艦娘は私が引き取るわ!ウチなら空母部隊も十分に揃っている、水雷屋のアナタよりは活躍できる場を用意できるわ!」
「いやいや装備の試験運用もやっているうちのほうが物の揃いも良い
珍しい外国の艦娘なのだから十分に装備があるうちの方がいい!」
「水雷なんかと航空戦を一緒にしないでください!航空戦は繊細なの
野蛮な水雷屋なんかに運用できるはずがないわ!」
二人…単冠湾とリンガの提督はどうやらサラトガを引き取ろうとしているらしい…
「肝心のサラトガ自身の意見を聞こうともしないあたり末期ですなぁ…」
柱島の提督が呟く内容に目線だけで同意しながら大将の方を見る
そう、この会議を急遽開いたのは大隅大将なのだ
「みな静かに、戯言はそこまでとして早速だが本題に入ろう…これを見てくれ」
相伴していた鳳翔さんが取り出したのは…海図だ
「これはミッドウェー周辺の海図だ、見てくれ」
それは見覚えのある地形と島の配置を持った海図、しかも深海棲艦の出現場所、出現頻度や資材スポットなどが詳細に書かれた海図だった
「しかし、これはもう使えない
なぜなら深海棲艦の分布が大きく変わったからだ
そして上空からの撮影、および有志を募った強襲による威力偵察を試みた結果、把握できた情報をまとめたのがこの海図だ」
次に提示された海図は明らかに情報が足りていない、海底地形や島の配置が大きく変わる様な事は無いようだが、所によっては潮流も変化しているようだし深海棲艦の配置も大きく違う
俺にとっては見たことのある海図だが、やはり以前と似た部分と違う部分の混在する海図には混乱しやすいであろう
「…うむ…」
「見てもらえただろうか?潮の流れや羅針盤の指示先のズレ、敵編成の変更、一つ一つは小さな変化だが、ここまで積み重なるともはや同じように見えて全く違う海域と考えたほうがいいだろう」
大隅大将が黙り込む
「注意喚起は結構、もう十分です、しかしこの変化が本当だというのなら
以前との違いはなんなのですか」
「…それを知るために、直近にあった変化を挙げて、一番納得の行く説明が立てられるのが、彼の介在だ」
そう言い放った大将の視線は
明らかに、俺を捉えていた
「神巫大佐が姫級深海棲艦の六体、鬼級一体を殲滅した結果、深海側のパワーバランスが大きく変化したと思われる
事実として、彼が六重の連瑶を討伐した後、約一ヶ月ほどは深海棲艦による海域侵攻が認められず、どこの鎮守府も進出していないはずの一部海域にも解放現象が確認されている」
つまりは鬼、姫級が縄張りを変えた、と言うことだろう…一部海域とは
一期→二期でエリア自体が変化している海域の事だろうか?
「だとしたら彼のせいで海域の変動が起こったと言うべきでしょうね
どう責任を取ってくれるのかしら?」
「ウチの艦娘に轟沈が出たらどうしてくれるんだ!?」
……言うなぁ、艦娘兵器派が
「私はあくまで、鎮守府近海に侵攻してきた深海棲艦を撃破しただけです
それで海域を解放したわけでも、なんらかの特殊な事があったわけでも無い」
俺の言葉はあくまで事務的に
無感情に響く
「それに、彼が討伐した結果だというのなら、敵戦力を削げていると喜ぶべきじゃないですか?…特に一体『未確認型』もいたと聞きますし」
俺を擁護するような声は隣から聞こえた、そこに座っているのは三鷹少佐…いや少将だ
「深海鶴棲姫、艦娘の瑞鶴に酷似した深海棲艦です…これは特に強力でした
現在では『
由縁は…この深海棲艦が戦闘に否定的であり、他の好戦的な深海棲艦を押さえつけていたであろう、という妖精の言から取ったものです」
「ならばなぜそれを討伐したのですか!そのままにしていればよかった!」
「そのままにすれば海域どころか陸上にまで侵攻を許していたでしょう
そしてそのまま大本営まで攻め込んできた可能性は高いですよ」
金切り声を上げる馬鹿に冷たく返しながら、三鷹少将は笑う
「彼がそれほどまでに影響力を持つ深海棲艦を撃破したことを喜びこそすれ
本土に上陸される危機を防いだことを責めるような真似はできない…違いますか?」
視線は鋭い
やはり、三鷹少将は未だ足元が定かではないにも関わらず、強引な手に出ることに躊躇は無いようだ
正論で殴るスタイルはたしかに反論しづらいが、しかしそれは疎まれやすいと言うことでもある…逆に心配になってしまうな
「二つ名級は復活する、そのメカニズムは不明だが、それなら復活した
それに、これは二つ名級の討伐という慶事でもある、彼を責めるのはやめたまえ」
大隅大将の一言は
よほど深く刺さったか、二人の少将が押し黙る
「中将達はすでに対策に当たっているが、事ここに至っては諸君ら少将にもこの海域変化についての調査にあたってもらいたい、今回の議題はここだ」
どうもここまでは全部前振りだったらしいな…
「どこの海域を調査するか、またその対象となった海域の調査はどの程度が適当か、といった所ですか?」
「その通りだよ…ところで
連れている艦娘の…サラトガくんと言ったね?」
「!はい!」
「うん、外国の艦娘は日本では万全な力を発揮できないことも多い
後ほど艤装の調整と改造を行うように」
「はい」「はい!」
サラトガの艤装ならば担当技師は俺…しかし、サラトガの艤装を改造する事は不可能、すでにそう結論が出ているし、それは大隅大将も知っている、つまりは…『会議終了後に大本営に残れ』と、こういうことだろう
サラトガもそれを察しているらしい
表情に疑念は見られない
「さて、調査海域は…」
俺に振り分けられた調査海域はエリア5
つまり、南方海域である
レ級と遭遇するエリアでもあり、高い制空が必要な海域だ…レ級やフラヨ、フラリに苦しむ提督達は数多いはず
「ここを調査、ですか」
「難関だろうが、頑張ってくれ
貴官の鎮守府に揃った艦隊は精強であるため、高難度な海域を任せる事になっている」
「…了解しました」
三週間後に再集合し、その時点での海域情報を記した海図を提出する事になるらしい
「それでは、これで本会議を終了とする」
大将の言葉に対して座礼を返して
会議を解散する
「…ん、」
俺はサラトガと会議室に残り
大隅大将の話を聞く
「よし、最後に残ってもらったのは他でもない…大本営に裏切り者がいる
そして、おそらくそのものは将官級、あの二人のどちらかまたは両方と
…それ以外にも何人かいるはずだ
いまは我々大将達がその裏切り者の割り出しを急いでいる、会議というのも建前ついでにすぎん…こうやって直に顔を合わせれば
誰が裏切り者か程度ならわかる…それと…深海棲艦、未確認型が一体、5-5エリアに確認されている
この討伐を頼みたい」
「…だから俺を南方に回したんですね…了解しました、未確認級深海棲艦
討伐任務承ります」
「うむ、よろしく頼む
未確認級の解明と討伐は我々の最優先事項でもあるのだ」
「はい、それでは失礼します
サラトガ」「はい」
サラトガを連れて、会議室を出て行く
責任は重大
戦力は十分だが、辛い戦いになりそうだ
600話記念番外編は
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……