戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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しぐしぐのタイプ

「帰るぞサラトガ…ほい」

 

手渡したのはリンゴジュース(300yen)500mlのボトルとカロ○○メイトのスティック一本分(100yen)

 

正直、ぼったくりとしか思えないのだけれど、この世界ではそれが普通なのだから仕方ない

 

「ん!提督、ありがとう」

「待たせたからな、その分だと思っておけよ」

 

車を滑らかに発進させて

俺とサラトガの二人は

再び鎮守府を目指して走り出した

 

「……来るは時は思わなかったけど、なかなか遠いわね」

「鎮守府が待ち遠しいかい?」

 

「そうね…建造されてすぐに大本営に来たから、あんまり思い入れはないはずなのだけれど、それでもなんだか、鎮守府にいるのが自然だと思うのよ

これって、いわゆる『思い入れ』なのかしら?」

「そう言えると思うよ」

 

サラトガがペットボトルを開ける音を聞きながら返事をして、また道を曲がるのだった

 

「……よし、お疲れ様」

「疲れたわ……」

 

車を降りて、一緒に鎮守府に戻る

 

「お疲れ様、提督」

「おかえりなさい提督!」

「おっそーい!」

「お待ちしていました、司令官!」

 

いつのまに察知していたのか、

長門、川内、島風、吹雪のお出迎えが来ていた

 

「さきほど陸奥から連絡があってな、提督が帰ってくる、と言うことで

急遽声をかけてみたのだが、予想以上の人数が集まってな、制限をかけさせてもらった」

 

「お、おう」

 

「さて、早速……」

「いっくよー!」

 

川内と島風が俺の後ろを取り

さらに吹雪が飛びついてくる

 

「さぁ提督!懐のソレを出してもらおうか!」

「あるんでしょー!提督早く出してよー!」

 

グイグイと引っ張られながら

鎮守府の方に引かれる

 

「なんでもこの子たちは指輪、というアイテムに興味があるらしいぞ?」「そうですよ司令官!さぁ指輪を出してください!」

 

普段主張しない吹雪すらもがグイグイと来る、そんなに指輪が欲しいのだろうか

 

「欲しいんです!」

「提督よ、ここまで駆逐軽巡がアピールしていて応えないというのは無いだろう?」

 

ひょこひょことジャンプしている島風の頭を捕まえて

 

「まずお前は練度を上げて出直してきなさい…ブッキー!」

「……!私ですか!?」

 

「おまえも帰れ、練度が足りない

あと川内はちょっと待て、お前はたしか指輪いらないって言ってただろう!」

「言ってない!そんなこと言ってない!本命じゃなくていいから指輪は欲しい!」

川内は俺の後ろから組みついてきて…マジか!?

 

[すごい…川内柔道とか出来たんだ]

[投げられるとか予想外すぎる!]

 

もちろん体幹筋を酷使しながら体勢を取り直して着地するが、その隙を取られ

「取った!」「!」

 

陸奥から渡された箱を取られる

 

「にっひひぃ…指輪ゲット!」

 

箱を開けようとする川内…しかし

「これロックが複雑…」

「よっと!」

 

複雑なロックを解除しきれなかったらしく、箱を開けられないうちに取り返した

 

「…残念ながら没収だ……今度執務室に招集をかけるから、その時に、な」

「!」

 

そっと希望を持たせておいて

長門に縋り付いている吹雪と、もういなくなっている島風一瞥して…

 

「長門、帰るよ…俺は執務室にいるから、何かあったら声かけてくれ」

「了解した…しかし、真正面から入ってはいけない、艦娘に押しつぶされるぞ」

 

「マジ?…じゃあ裏から行くか」

 

長門の話ではどうも金剛や駆逐や軽巡だけではなく、扶桑や蒼龍や赤城、感覚過敏は治っていない筈の愛宕、霞まで来ているというのだから驚きである

 

「…玄関前で出迎えができない分、玄関に入ったら全員押し寄せるだろうな」

「死にそうだからやめよう」

 

俺はそっと正門(地獄の門)を回避するのだった

 

〈長門、後は頼んだ〉

〈私用に通信を使うな、全く……それも『なんとかしろ、頼んだ』などというあやふやな指示でどうにかできると思っているのか?〉

 

Yes you can(長門ならできる)trust me(トラストミー)!」

〈それが信じられるか!〉

 

正直に言えば俺だって自分が信じられないが、それでも長門にはやってもらわざるを得ないのだから、どうも仕方ない

 

そっと通信を切って走り出す

[うわ……]

[引くなこら、俺も自分に引くけど]

 

[なら態度を正しなさいよね]

[正した結果は酷いことになったから、俺はもう態度を正したりはしないと決めているんだ]

 

スタコラサッサと走り、

工廠の方から静かに侵入して

二階にある執務室に入る

 

「……ふぅ……」

 

「あ、来たわね提督」

「うん…追い詰めよう」

 

そこには……時雨と村雨がいた

 

「時雨、村雨…」

「うん、どうしたの?提督」

 

 

「お前ら、どうしてこっちに?」

「えっと〜、本当は前期白露型みんなでお出迎えに行こうとしたんだけど」

「僕達は…うん、あの人混みを抜けるためには出力が足りなかったからね

だから、絶対に提督が来る場所に先回りすることにしたんだ」

 

秘書艦の椅子から降りた時雨が

とてとてと歩いてくる

 

「本当は夕立と白露もいたんだけどね…夕立はあの人混みに飛び込んでいって…白露は島風に負けて多分部屋でいじけてるよ

春雨は私室のほうに行って潜伏してる」

「でも、こっちに来たってことは春雨ちゃんとは会わなかったのね」

 

村雨が部屋の角から徐々に接近してくる

 

「………」「………」

「お前ら、なんか雰囲気がおかしいぞ」

 

「「………うふっ」」

 

その瞬間、俺は静音性などかなぐり捨てて全力で扉を蹴り開けて逃走し、

時雨は瞬間移動じみた移動速度で追いついてきて…村雨は時雨が消えたことに驚いていた

 

「時雨!お前そんな強引な事をするような子じゃあなかっただろ!?」

「だとしたら提督に変えられたんだよ、こんな幼い女の子を自分好みに作り替えておいて放り捨てるなんて、酷い提督だ…責任を取ってよ」

 

廊下を全力で走りながら

時雨の貫手を右アッパーで迎撃し

急速停止して左腕を体の正面に立て、左足を上げてガード姿勢をとったその瞬間、時雨の小さな体からは想像もつかないほどの衝撃が俺の体を叩きつける

 

「跳び膝蹴り、入った筈なのに」

「格闘タイプ取って出直してこい!」

 

俺は受け止めた時雨の右太腿に肘を乗せて肩をバネに体を支え、同時に右足を強く蹴り出して跳躍

反時計に半回転する形で時雨の頭上を取り、同時に天井を蹴ってオーバーヘッドキックを仕掛ける

 

「!!」

「オラァッ!」

 

「やるね、提督」「時雨ェ…お前こそ」

 

そう、俺のオーバーヘッドは

時雨が背に回した腕で受け止められていた

 

「でも僕が足を取った以上

僕の勝ちは揺るがないよ」

「果たしてそうかな?」

 

空気相手に左裏拳を大きく振り切り、左足を強くひねる、これに抵抗するなら腕の骨を折るほどの負荷を掛けて

 

「自分の足を折るつもりかい!?」

「構うか!」

 

「このバカ提督!」

 

時雨が離した足の状態を軽く確かめつつ着地、同時に霊力から鋼糸を還元して

両脚に巻きつけてサポーターに仕立てる

 

「ついに人外になってきたね…」

「言うな、艤装使ってる艦娘には勝てないし、そんな大規模でもないだろうが」

 

呆れたような表情になる時雨に

そのまま殴られる、しかし

 

「それは!!」

「残念だったな」

 

帰りがけに自販機で買っておいたカロリーメイトが犠牲となって砕け

そのかわりに俺は時雨の拳を凌いでいた

 

※後でスタッフ(俺)が美味しく(?)頂きました

 

 

「なんて提督だ…酷いよ」

「仕込みアイテムを使っちゃいけない、なんて誰が言った?」

 

鳩尾を蹴り込み時雨を5メートルほど吹き飛ばす

 

「全力状態の俺には及ばないがね

それでも簡単に駆逐には負けられないのよ」

 

笑いながら、時雨の元まで歩いて

時雨を抱き起こす

 

「また明日、な」

「…うん……また……あし…た…」

 

狙って打ったとはいえ

やはり痛かったか、と

意識を落とした時雨を抱き上げながら思う

 

「…時雨!提督!」

 

そこでようやく、村雨が追いついてきた

 

「あ、村雨……時雨頼める?

どうも『寝ちゃった』みたいだし、部屋に運んであげてくれ」

 

背負った時雨を示してあげると

面白いように顔色が変わる村雨

 

「……あ、明日は確か、おやつがプリンだったよ」「私が運んでおくから提督は休んでいて良いわよ!」

 

お前必死だな

 

[プリンは魔法のアイテムだもん、提督さんは甘味の方がわかってないよ!]

[そんなものは分からなくていい]

 

さて……部屋に「ぽぉぉぉぉい!!」

 

どうもまだ続くようだ




時雨のタイプが
「あく」「はがね」になりました

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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