すまない、神巫提督
出現当初の深海棲艦に奪われ、
かつて私達が奪い返し、そして守ってきた海域を好き勝手に荒らされるのは我慢ならない、しかしもはや
今の私にはどうすることもできないのだ
「耐えてくれよ…」
私は傲慢じみた光景を
せめて目に焼き付けはことにする
それが償いになるとは思わない
私が救われる日などこないと分かり切っている、しかし、それでも
私は、失いたくなかったのだ
若き提督の想いが、成してきた事柄が、踏みにじられるその光景をもう二度と見たくない
だが、それは確かに目の前で起こっていることだ
ならばそれは私の罪、
いつか訪れる罰に捧げるために
いまはこの罪を記憶として刻もう
〈ねぇ!どういう事なの!〉
「…仕方ないんだ、沖津丸は洋上での艦娘の回収は自力に頼ることになるけど
外付けエスカレーターみたいなのがないから、後部スロープを開放せざるを得ないんだが
扶桑型の戦艦は艤装がデカ過ぎ+重過ぎてスロープが耐えられないという結論が出ている」
〈なら私が緊急出撃するのはおかしいでしょう!なんで先行して私を出すんですか!〉
「一番火力出るし、近接できるし
なにより戦艦相手なんだから逐次小型艦を出すより戦艦を一気にぶつけた方が良い
以上、戦術的見地からの理由」
〈…くっ…悔しいわね…不幸だわ…〉
「すまない、だが艤装を迂闊に解除するわけにもいかないし、それで我慢してくれ」
〈分かってるわよ〉
通信が切れる
「蒼羅、気にする必要はありません、必要な犠牲ですから…それと、回収した重巡洋艦『那智』は寝かせておきました」
「姉さん…分かったよ
むこうの鎮守府はもう見えているんだが…ついたら文句を言ってやろう」
「えぇ、生憎私たちには意味がなかったけど、即応体制で待機しているのが駆逐艦だったりしたら危険でした、その点は厳しく追及するべきであると思います
提督を危険に晒すとは何事か、と」
姉さんの口数が普段より多い
これは怒っている…ものすごく怒っている…ちょっとサイドテールが震えている…
「ね、姉さん?いきなり爆撃はよしてくれよ?」
「五航戦なんかと一緒にしないで、あんな直接的な手段ではスマートな解決法とは言えないわ、行うべきは社会的、および経済的制裁であって、物理的なものではないのよ?」
[バカにしないでよ!爆撃するわよ!]
[鶴頭、だからバカ呼ばわりされるんだよ、姉さんは直接的手段じゃうまい制裁にならないって言ってるんだよ、理解しようぜ?]
[むぅ〜〜!]
[はいはい、不貞腐れるのはいいが
頭の中でバタバタしないでくれ
お前ただでさえ場所取ってるんだから、俺の思考のためのスペース残しておいてくれよ]
[むぅ〜!!]
それを聞いてより暴れる瑞鶴を宥めすかしつつ、とりあえず向こうの警備体制に対する信頼度を大きく下げる
アクシデントと称して攻撃される可能性も考えなくてはならないか
「よし、あと5分ほどで到着だぞ」
「了解しました、山城にも伝えてきます」
「頼んだ」
姉さんは操舵室を出て行き
俺一人が残る
みんなのある待機室(会議室)には里見くんが待機しているし、別に心配はないだろうが
取り敢えずソナーを掛けておくと
…………
「マジか!総員第一種戦闘配備!」
緊急連絡用の無線で通告を流す
そう、そこには
潜水ヨ級が2隻、深海忌雷2基の
絶対にこんなところにはいるはずがない組み合わせが感知されたのだ
「やべぇか…山城に対潜装備はない!」
戦艦として潜水艦に弱い山城は、ただでさえ低耐久な扶桑型なのだ、直撃を受ければただでは済まない
ワンパン大破もありえてしまう
「陽炎!」
〈了解、艤装装備完了よ!陽炎、抜錨します!〉
「球磨!」
〈球磨ちゃんにお任せクマ
球磨、出撃するクマ!〉
返事に続いて、少し遠くから
砲弾の着弾音や爆発に似た着水音が二つ聞こえる
もちろん砲弾ではなく、その二人が飛び降りた音だ
飛び込み着水に加えて急速起動した艤装、調子を悪くしてもおかしくないが
普段から整えているだけあって
いうことを聞いてくれている
「これで…間に合うか…!」
急速回頭し、海域を離脱するべく
七時の方向に向かって舵を取り
「これより本機は急速離脱を試みる、戦闘エリアを脱出後、洋上で停止する!」
アナウンスだけを残して全力で退避する
この沖津丸は戦時改装型…というなの艦娘用母艦である、艦隊運用能力だけでなく『戦闘エリアからの独力のみでの離脱』を可能とした艇なのだ
「離脱するぞ!総員、衝撃に備えろっ!」
姉さんたち直衛はのこしながら
艦娘たちを当てて撤退
戦略上はこれで正しいが、なんというか胸の痛い作戦だ
[全力加速……!]
逃さじとばかりに展開された
沖津丸は平時の海に戻る
そして、艦娘たちはそれを確認して、戦闘を開始した
「邪魔者は消えるクマー!…
消えろ」
「司令に褒めてもらうんだ……えへぇ…ねえ、死んでよ、あんた達が死んだら司令が褒めてくれるの、だから死んでよ!」
「…姉様…あぁ姉様…会えないなんて不幸だわ…」
提督たちの海域離脱を見るや、一斉に目からハイライトが消える三人の艦娘たち
そして、
互いに違う艦種でありながら
見事な連携を取り、互いに分担した分野で戦闘を進めていく
「いくわよ…」
「クマ」「やっと終わる」
球磨と陽炎が淡々と潜水艦を沈め、それと同時に山城が自動的に増殖する無数の忌雷どもを破壊、爆破する
戦闘は極めて簡単に、読み合いは高度に、そして勝利は確実に
〈司令!褒めて褒めて!〉
ややもせず
犬のような声色の通信が
提督の通信機を鳴らした
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