戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

436 / 649
に抱かれて死ねぇっ!


闇の炎

「青葉、ユーは戦闘海域より即時撤退せよ」

 

その言葉を無線越しに聞いたか、二人は合流してエリアの端まで移動し、そこから鎮守府のドックの方に向かっていった

 

本来演習に使われるペイント弾ではなく、今回使っているのは正真正銘の実弾であるため、下手をすれば『艦娘同士での戦闘で轟沈』なんてバカな可能性もあり得る

 

俺ならサルベージの可能性は無いわけでもないが、戦闘中の海域に飛び込んでサルベージを試みる余裕はない

 

「大丈夫かな…」

「大丈夫だよ、彼女らは私の命令なら従う、たとえそれがどんな命令であっても」

 

甲崎提督は椅子を立ってドックのほうに向かい、俺もそれに従う

 

「おかえり、青葉、ユー」

「ただいま帰りました」

「…きとうしたよ」

 

機械的な返事に、光のない瞳

総じて、意思の伺えない人形じみた佇まい

 

「やはり…分かるか」

「はい」

 

艤装を外したユーと青葉を抱いて

苦しげにそれを口にする甲崎提督

 

「この子達は、既に轟沈しているのだ」

 

「…」

「轟沈した艦娘は、艤装の完全停止による機能喪失まで、生きている

だが、その艤装の機能が停止すれば

水圧によって身を砕かれ、呼吸の一つも叶わずに即死する…そのはずだった」

 

「私は、悪魔と契約した

…轟沈した艦娘を、死なせない方法がある、この子達はまだ生きている…そう言われた私は、その手を取ってしまったのだ…深海棲艦、水」「言ワセナイワ」

 

その瞬間、銀の光と共に

白の制服が切り裂かれ、赤く染まった

 

「ウッソだろ!?」

 

見た目、着心地からは想像もつかないほどに高性能な制服を、一撃で貫通してきたその攻撃は、あろうことか『斬撃』だった

より威力のある刺突ではなく

あくまで範囲の広い斬撃

 

それが制服の防刃繊維を切り裂くレベルとなると、もはや防ぎようがない!

「…………」

「…………」

 

二人の艦娘達は止まったまま

甲崎提督は血を流しながら倒れている

俺は儀装もなし、護衛艦もいない…まずい

 

 

[なんてね」

 

銀色の光が再び走る、その瞬間

俺は瑞鶴によく似た姿に変身していた

「mode『Decisive battle』」

 

陣羽織と軍刀、白い鉢巻、暗緑の衣が出現し

それらは軍服を遥かに上回る強度で銀の斬撃を…極細の鋼糸を防ぎ切った

 

「ナニヨ…ソレ」

「これか?これはね…瑞鶴と俺の力」

 

困惑する声に、軽々と返事をして

俺は軍刀を抜いた

 

「ということで、シネ」

 


 

「司令!」

 

「え?どうかした?」

 

時間は戻り、沖津丸の中

 

「司令、ちゃんと褒めてよね!」

「お、おう…偉いよ」

 

すいっと頭を差し出す

司令が褒めてくれる時は、こうやって頭を出すと…

 

「ん、いつもありがとう」

 

撫でてくれる!

 

撫でられると頭がふわふわして気持ちいいの、だからいっぱい頑張っていっぱい撫でてもらう

 

「ん〜♪」

 

「なんか上機嫌だな」

「んふふっ、当然!」

 

司令はなんだがよくわからないものを見るような目をしているけど

球磨さんは若干恨めしげ

…私の方が先に出たんだし、文句はないよね?

 

「はい、ありがとう!

じゃあ続きは球磨さんにしてあげて?」

 

名残は惜しいけど、鎮守府の軽巡洋艦第四位からの反感を買うのは痛い、雷巡組にまで波及したら危険

 

だからおこぼれくらいは上げるわ

そんな事気にならないくらいに、愛してもらうから…ね、私を愛して?

セ、ン、パ、イ

 

 

 

そっと手を引いた先輩が

球磨さんの方に移ってその頭を撫で始める、アホ毛が『乃』字型からハート型に変わって

球磨さんもニコニコしている

 

……なんかちょっと嫌な気分になる

けど大丈夫、なによりまずは仕事のことを考えなきゃね!

 

「んじゃあ改めて、概要を説明するぞ

今回連れてきたみんなは…陽動隊だ」

 

「え?」

 

みんなが頷く中、

私は一人困惑の声を上げる

 

「まぁ陽炎には説明していなかったからわからないと思うが、今から向かう鎮守府はどうも、艦娘達の様子がおかしい、俺は直接提督のところに話をかけに行くから、艦娘達はみんないい感じに引きつけて時間を稼いでから倒してくれ

 

また、どこで盗聴されているか分からないから、作戦開始以降は無線を封止してもらう

…あと、ここの鎮守府には未確認型の深海棲艦がいる可能性がある

くれぐれも、気をつけてくれ」

 

《了解!》

 

みんなの返事を確認したあと

司令はサッと部屋を出て行き

操舵室に戻って行った

 

 


 

桟橋に降りた提督と別に

ドック側に行っていた私たちは

提督と合流して、そのままこの鎮守府の執務室に向かった

 

鎮守府の構造は基礎設計から把握しているけれど…だいぶ古いタイプね

あまり資材が充実していなかった時代に建てられた旧式の鎮守府建屋をそのまま流用しているのかしら

 

「失礼します、本日の演習相手を務めさせていただく…」

 

司令の声だけを聞きながら

周囲に意識を集中する

愛宕さんもやはり同じように集中していて、既に何かを見つけたっぽい

 

「…」

無言での目配せで指示されたのは

注意しなければわからないほどに細い糸

 

あれが、盗聴の原因、かしら?

 

「…ん」

「……(コクッ)…」

 

そうみたいね

 

「先に出撃に向かわせていただきます」

 

どうも話が終わったみたいなので、私は司令の後ろについて…足音を消して歩く

 

司令を先頭にして単縦陣、

一番前が私、続いて球磨さん、川内さん、愛宕さん、最後が加賀さんと山城さんの順番に並ぶ

 

川内さんはずいぶん落ち着いているみたいだけど、愛宕さんはソワソワしている

…気分が悪いのかな?

 

「旗艦は山城、全体指揮統括は加賀

一対一を徹底して、対多は避けること

最後に、どこから何が来るか分からないから、接敵しても、敵が視界にいなくても

索敵は絶対に欠かさないこと」

 

司令の口調は飄々としているけれど

いつもより僅かに硬い

それはすこし…違和感があって、私は嫌

 

でも、それは私達のことを想ってくれている証拠だから、そう考えると

頭に走るノイズ(いたみ)が薄れていく気がする

ふわふわと感覚が薄れていく

 

あぁ…想われている

それだけで…キモチイイ

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。