「というわけで、シネ」
「!?」
混乱しているらしい影に向けて
軍刀を一気に振り下ろす
型を重視する剣道とは違う、『殺すため』という目的のために最大限磨かれた実践剣術
瑞鶴の支援と同時に俺自身がこの状態に慣れたのもあって、動きは滑らかだ
「!」
影は糸を繰り、すんでのところで一撃を逃れる、しかし
「ようやく晒したな?その顔を」
「クッ…」
影として纏っていた深海の呪詛は、動きについてこられずに剥落し
その姿は電灯の元に晒されていた
「…驚いたな」
そこに居たのは、モノクロにした千歳と千代田のパーツを混ぜたような姿の少女
大きな艤装は絡繰箱だったらしい
「殺ス…私ノ姿ヲ見タヤツハ
全部…!」
「はいはい、お前みたいな手合いとはやり飽きたの」
自重をやめたのか10本を遥かに超える糸を伸ばすちとちよ型深海棲艦
水母棲姫、といったところだろうか?
その伸ばしてきた糸を
余剰エネルギーを収束させた刀で切り裂き、端切れを奪い取る
その鋼線がいかに鋼の硬度を示そうと
魂の了、量に由来する霊的優先度の高さには勝てない
結果、無残にも切り裂かれた糸が
繰り返し伸ばされ、切られ
伸ばされてはまた切られていった
「…もうやめないか?」
「ヤメルワケ…ナイデショ!」
ついに糸が尽きたのか、直接攻撃をやめて絡繰箱に糸を繋いだちとちよ…
「死ニナサイ!」
「残念だよ」
飛来してくる爆撃型の白タコヤキに
同じ数の烈風が飛ぶ
迎撃は芸術的なまでに正確に
かつ効果的に行われ、甲崎提督には影響なく、白タコヤキの群れのみを破壊していく
「コノ…!」
「死ぬが良い」
「死ンデ…タマルカ…!」
刀を受け止めて、
そのまま俺ごと投げ飛ばすちとちよ型
そして、空中に投げ飛ばされた俺は…
そのまま、大規模な爆撃を食らった
「ぐうううぁぁぁっ!」
壱、弍、参、肆、伍
それぞれ印された字が違う機体が飛び交い、一つ一つが鋭い攻撃を仕掛けてくる
とんでもなく早い
展開速度はそうでもなかったが
流石は水上機、起動からの攻撃が早い
「体借りるよ!」
瑞鶴が肉体の操作を掌握し
即座に爆弾を切り返して反撃する
その速度は、爆撃と拮抗し
対艦魚雷が尽きるまで防ぎ切って見せた
「ふっふ〜、どんなもんよ!」
[俺の体で言われるとちょっと気持ち悪いな]
[気持ち悪いとかひどい!]
[はいはい、悪かったな]
瑞鶴相手に軽口を叩きながら
艦載機を射出、発艦させる
もちろん瑞鶴からの借り物達だが
それでも俺には従ってくれる
概念体から召喚したという点では
本来の艦である『瑞鶴』の航空隊から抽出されたメンバーというわけだが
妖精は載っていないのにまともに戦えている
「…貴様ハ…」
「なんだよ、その無様な箱はもう空っぽなのか?」
瑞鶴が俺の声で挑発しながら
艦載機達を差し向ける
素早く反応した艦爆隊による爆撃は
しかし、先ほどとは比べ物にならないほどの濃密な糸による防壁で塞がれる
「…コレガ私ノ唯一性
『絹繭ノ盾』ヨ」
爆煙から出てきたのは、白い壁
やはり、あれは鋼糸によって編まれた物らしい
が、それはつまり
[電気は通じるかな!?]
俺は換装を戻して、ポケットからあるものを取り出しながら飛び掛かる
「諦メナサイ!」
「おらぁぁっ!」
鋼製なら、通電はする
その電圧は一般的なコンセントを超える
その電流量は規格値を超えた軍用モデル
まぁ、だれでも子供の頃はやった事があっただろう、電池の両端子を銅線で繋ぐと
火花と共に、電流が流れる!
「っ!〜〜!っ!」
バジァァッ!という音と同時に
閃光が溢れ、火花が飛ぶ
それは鋼線を使い物にならなくして
同時にその線につながるちとちよ型の深海棲艦の腕に、深刻な火傷を付ける
「どうだよ、人類の力は?」
「認メナイ…認メナイ…!」
しょうがないなぁ、全く
「なら、これで終わりだよ」
取り出されたのは、手榴弾
防爆ピンを外し、それを投げて
反射的に『盾』を広げるちとちよの、目の前で煙が上がる
「残念だ」
俺はその言葉と共に煙に乗じて甲崎提督を抱え、執務室の奥側にある窓を割って跳躍
そのまま鎮守府裏の中庭まで飛び降りる
「さて、沖津丸!」
通信先は沖津丸、そこに残っている
ただ一人の医務官
里見君だ、
〈はい、こちら沖津丸、里見です
提督、状況は了解しているので大丈夫です、こちらに運んでください
一応の治療用意は出来ております〉
「流石頼りになるなぁ」
〈僕を頼りにしてはいけないんですがねぇ…〉
割れた窓から溢れる煙を狼煙代わりに
艦娘達が視線を向ける
そこに、山城の狙撃が突き刺さり
爆発が起こる
「悪いけど、建屋壊しちゃうよ?」
コラテラル コラテラルと呟きながら
沖津丸へと甲崎提督を運び込む
「はい、んじゃあこれ頼んだよ」
「はい、わかりました」
向こうに敵がいる、危険な時は狼煙を上げて知らせる、そんな馬鹿な話は信じていなかったけど
まぁ、実際に起きてしまったのだから、仕方ない
「不幸だわ…」
せめて、部屋の中の様子を確認できればいいのに
瑞雲もなしに弾着観測なんて
無茶振りを言われてしまったもの
不幸だわ…
狙撃を撃ち込んで、まだ煙の上がっている部屋に、第二射を行おうとした時
光がこちらに伸びてきた
咄嗟に回避すると、それは鋼線
「まだ生きていたのね…不幸だわ…」
不意打ちで当たったのではなく
回避されてしまったみたいね
「さて、提督が帰ってくるまでの間
私たちだけで持たせます、良いですね?」
加賀さんの言葉にうなずき
旗艦として陸上戦を指示する
…意味がわからないけど、これもある意味一つの選択ではあるらしいから
体を鍛えていてよかったかも知れないわ
600話記念番外編は
-
過去編軍学校
-
過去編深海勢
-
裏山とかの話を
-
テンプレ転生者(ヘイト)
-
ストーリーを進めよう
-
戦争が終わった後の話を!
-
しぐ……しぐ……