戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

439 / 649
どうか

「…よし、みんな頑張っててくれてるな」

 

俺は瑞鶴との身体換装のもたらす影響

…視界の赤化と感覚の消失、減衰…

 

を勘案しながら、再び換装するか否かを考える

 

[二度めはダメだよ!提督さんっ!]

[場合によっては使わざるを得ないからな?]

 

立ち上がって…

少しふらつきながら姿勢を戻す

ゆっくりと手を握り、戻す

 

よし、弓は引けるな

 

「いくぞ、艤装はなし、再換装は肉体のみ、ただし戦闘は行わないものとする

艦娘達に、後を任せる!」

 

そっと手を握り、立ち上がる

陸式の銃弾だけは確保したが、元陸奥の輝那は使えなくなってしまったし

 

「まぁ、大丈夫だろう

彼女たちは強いから」

 

俺は急ぎ、モノクロームの建屋に向かった

 


 

「戦闘開始から、3分ですが

単独でこれを引き付けるのは…難しいですね」

 

「死ネ…死ネ!」

 

加賀が嘆息するように

膨大な量の糸を顕現した水母棲姫は

その全てを武器として扱い

無尽蔵にすら見えるほどの攻撃を放ってくる

 

しかもそれはひとつひとつが中破くらいなら行きかねないほどの威力

 

現状は躱しているが

それでもそろそろキツくなってくる

 

すでに弓の弦を切られ

発艦は不可能、攪乱を最優先している烈風隊も帰還不能となれば再出撃はできない

 

当然ながら、援護の弾幕も切れる

 

「状況が悪いですね」

「そんなこと言ってる場合じゃないクマ!」

 

弓を破壊されて困る…などということにはならないように、弓矢だけではなく

投擲剣型の艦載機も用意している

 

とはいえ、私の本業は弓

矢以外での命中精度はそう高くない

……けど、やる他にない!

 

「加賀さん!」

「はい」

 

陽炎の合図に従い

意識を敵のみに集中し、

動きを止める、全力の集中で弾道を形成し、ダークを握り、左手を照準に

右を大きく振りかぶって

 

山なりに上げた腕を体ごと前に出しながら正面に腕を出し、手首から先で微調整を掛けて

 

投擲する!

 

 

赤みがかった視界の中で

真っ直ぐに飛ぶ短刀は分解し

 

その概念を纏っていた彗星が出現する

 

すでに中破していた私の装甲から

発着艦は不可能と踏んでいたらしい深海棲艦に、不意打ちの爆撃が直撃する

 

「これで…倒れて!」

 

 

爆弾は、その白糸の壁をすり抜け

そして、本体に到達して

爆発した

 

「………やりました」

 

あえて、疑問形にはしない

だってそんなことをしたら

また出てきそうだから

 


 

姉さんの彗星投擲剣(スローイングダガー)

それが爆発した瞬間

俺はようやく駆けつけた

 

「遅いわ、提督」

「遅れました」

 

端的に答えて、

陽炎と球磨を回収する

 

川内は自力で飛び退くと信じているからだ

 

そして、その直後

視界を埋めていた壁の一部が崩れ

そこから手が飛び出してくる

 

「…!」

 

山城は紙一重で回避するが

姉さんはそうもいかない

 

が、俺がさせない

 

「ぬん!」

 

掴みかかってくる腕を

全力で握り込み…そのなかに、無理やり資材エネルギーを流し込む

 

無論、限度を超えたエネルギーは爆発的に荒れ狂い、制御を失ったエネルギーによって

腕は変異と破壊と再生を繰り返し

 

「ガァァァァッ!」

 

ベキベキベキベキという気持ちの悪い音と共に、巨大化したり縮小したりを繰り返す

 

その腕の持ち主である水母棲姫は

流石にそんな攻撃の対策は知らなかったらしく、資材エネルギーの制御に懸かり切りになっている

 

そのうちに艦隊を集めて

 

「一斉射撃!撃てえっ!」

 

速やかに火力を集中する

 

そして、異形と化した腕の制御を試みていた水母棲姫はそのままノーガードで砲撃を受け

 

爆音と共に大破する

 

今度は煙で見えないなんてことはなく

相手の姿を見失いはしない

[「提督?」]

 

「てーとく、その視線止めるクマ」

 

球磨に視線を遮られる

…別に邪な意味ではないのだが

 

「服のあるないでどうこうはしないよ

今更な話だ

 

それに、奴は敵だ、敵は…殺す」

 

提督の支給品である軍刀

こちらは瑞鶴のとは違って資材エネルギーのない工業的量産品のサーベルだが

それでも通常使用には耐える

 

「…殺すぞ」

 

軍刀を抜き、油断なく相手に視線を定める

 

そして、飛び出してくる糸を

敢えて受け止める

 

鉄を削ぐような糸の一撃は

軍刀の鎬を削りながら

しかし受け流すことに成功した

 

が、斬撃とは違う

今度は明確に、刺突の一撃

 

片腕を失ったから糸を絞ったのか

最初から少ない糸でやるようにしているのかは知らないが、これをまともに食らえば

更新された新型の軍服である俺でも貫通されてしまうだろう

 

10ミリの鉄板クラスの対弾防御力を誇るこの制服でさえ貫かれるというのなら

まともに食らえば命はない

 

斬撃ならば防げたが、これにはそんな小手先の防御力は通用しないだろう

 

「ヨクモ…ヨクモコノ腕ヲ…ッ!」

 

「自分の片腕を、切り落としたか」

 

そう、水母棲姫は自らの片腕を切り落とし、暴走で体積をましたそれを盾として

攻撃を耐えていたのだ

 

「人間…提督…アンタハ…最初ニ!」

 

「残念だ、残念だよ」

 

白い髪は結い紐が解けたのか

後ろにまとめられていた髪が風に靡く

 

風が…吹き消えた

 


 

 

私はきっと、

お姉みたいになりたかった

 

でも、『私』では『お姉』にはなれない、だから私は、全力でなり切ることにした

 

私の本業(戦闘)の合間に

お姉の姿を、所作を、言動を観察して

全部を真似して、模倣した

髪型も、目つきも、声色も口調も

歩きかたひとつさえも

 

どれだけ真似しても、私はお姉になれない

お姉とは根本的に違う

私は、お姉になれない

 

嫌だ

 

だからお姉と一緒に、沈んだ

戦って、戦って、戦って

最後には航改二まで使った

 

当時の提督さんは良い人だったけど

そんなことは関係ない

私がお姉になるために

お姉と一緒にいるために

 

私はお姉と一緒に敵を全滅させて

それからお姉を殺して一緒に沈んだ

 

だから私は…お姉を取り込んだんだと思う

 

気づけば私の姿はお姉そっくりで

私は自分が大好きになった

声も、瞳も、指先も

全部がお姉になったと思った

でも、まだダメだったの

 

所作や表層は真似できている、同じものになっている、でもまだ違う点がある

 

「お姉に…ナリタイノニ」

 

もう同じ存在であるはずのお姉に

否定されたような気がして

私は自分が嫌いになった

 


 

「オ姉ノ腕ヲ…ヨクモ!」

 

「聞き飽きたよ」

 

艦載機の運用のためではなく

純粋に戦闘用らしき糸を放ってくるのはなんというか、殺意の高さを窺えるが

あまり長くは続かなかった

 

うちには、優秀な艦隊がいるからな

 

「…取ッタ!」

「舐めるなぁーっ!」

 

球磨が艤装の主砲を投擲して糸を防ぎ、その瞬間に加賀のダーツや川内、陽炎の魚雷が命中し

 

そして

「これで…終わりよ!」

愛宕と山城の砲撃が放たれる

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。