「これで、決着」
「待ってくれ!」
終わりを告げる砲撃が放たれる瞬間
声がかけられる
「!甲崎提督!?」
「…その深海棲艦は
ウチの艦娘達の命綱なんだ!」
そう、最後の障害は、それに尽きる
「遠隔操作で、体を動かしているだけの死体に過ぎない」
「しかし、ウチの子達は….!」
「あなたが艦娘を大切にしているのはわかった、だが、それでも
この深海棲艦を見逃すわけにはいかない
それはより大きな被害を、悲劇を無限に連鎖するからだ、今、一つの鎮守府を壊滅させたこいつを野放しにするわけには…行かない!」
一時中止したら砲撃を再開しようとした瞬間、甲崎提督は射線上に割り込んできた
「私は裏切り者の汚名を被っても
撃たせるわけには…行かんのだよ」
「ならば貴様ごとでも!」
「モウイイワ」
その瞬間、俺の腹を、鋼の糸が貫いた
「…なに…が…」
甲崎提督の声はかすれ
消えかける風前の灯のように弱い
そう、その糸は甲崎提督を貫通して、それから俺を狙って突き進んできたのだ
甲崎提督は背から糸に貫かれ
倒れることもなく血を吐く
「モウイイワ、モウ、コレデ
終ワリナノヨ」
絡繰箱を捨てた水母棲姫は
そこから機関銃にも見える何かを取り出し、俺に向けた
そして
「死ニナサイ」
銃弾は放たれる前に消えた
〈…いっこうせん…の…誇りは……〉
機関銃を貫き、撃ち抜いた矢
それは弓を失った加賀ではなく
遥か遠く洋上の、
「赤城さん!!」
「ナ…何故…」
「まさか」
そう、赤城は死んでいる筈だ
しかし、それは轟沈という形で
海中に沈んだ艤装も、
しかし完全停止までは機能する
もしも、赤城達は完全に死んでいるのではなく、ただ意識を喪失しているだけだとしたら?
それは、夢を見ているような
気分でした
どこかゆっくりとした、薄い色の世界
かつて轟沈したはずの私は
なぜかまだここにいます
でもこれは、きっと夢の中
轟沈して、死にゆく私の夢の中
一瞬でも長く、楽しかったかつてのことを思い浮かべようとする本能の働き
いわゆる…走馬灯というものでしょう
そこでは体を動かすことはできず
ずっと、自分の動きを見つめるだけ
褪色もひどく、薄暗い
夕焼けの世界が永続しています
でも、その中で
唯一明るく見えるものがありました
私たちの提督です
でも、その表情はどこか暗くて悲しそうです
私は何かしてあげたいのに
体はやっぱり全く動かなくて
何もできないのはひどくもどかしくて
そして、この日がやって来ました
演習相手の鎮守府の提督さんを案内して、そのまま戦場となる水面に出た『赤城』は
やはりどうしても動かなくて
分かり切っているはずの罠に掛かり
艦載機達を失っていく
実弾を使用する演習なんて、ありえないと思っていたけれど、夢の中なら
あり得るのかしら?
そう、思っていました
「一航戦の誇りを無くした貴女では
この私には勝てない!」
その瞬間までは
そんなことを言うはずがない
私に取って、加賀さんは
そんなことを言う人じゃない
だから、気づいた
気づくことができた
此処は、私の夢じゃない
此処は、此処こそが
私の生きる…現実なのだと
あぁ、ならば
否定しなくては
私は一航戦の誇りを捨ててなどいないと
私こそが大日本帝国海軍の
栄光の第一航空戦隊旗艦であると
しかし、どうしても体は動かなくて
あぁ、このまま私は朽ちて行くのかと思っていた
血を吐いて
倒れることも叶わずに頽れる提督を見た瞬間、私は動かない体を動かして
「提督を…ハナセ」
赤く染まる視界と
口の中に溢れる血の味に構わず
弓を構えて、射ていました
やはり、私は
一航戦であることの前に
『提督の娘』であったのでしょう
でも、それは私が
赤城であることと矛盾はしない
だから、私は
「一航戦の誇りは…
…失うわけには行かない」
血を吐いてでも、身を砕いても
立ち上がる、それが私
「私は…一航戦の赤城です!」
「貴様…残留思念の分際で!」
「確かに私達は残留思念、ですが
この微かな残滓にも、出来ることはあります!」
その声が聞こえた瞬間
モノクロームの視界に色が溢れた
「これは…」
「提督、今まで一人にしてしまって申し訳ありませんでした」
白く染まった視界
描かれるのは極彩色の空
「司令、やっと会えた!」
「お久しぶりです、大淀、帰還しました」
「提督殿、また、会えたでありますな」
「いっちばーん!」
「久しぶり、提督」
「帰ってきたでち」
声は聞こえる、だが、姿は見えない
陽炎、大淀、あきつ丸
白露、最上、伊58
それだけではない、さまざまな声
「赤城さんが呪縛を破ってくれたおかげですね」
「ボク達もこっちにこられて良かったよ」
最上と神通か
「お前たち…沈んだのでは」
「沈んださ、確かにな
だがそもそも、私たちは艦の魂
死と生の境界線など、気合で乗り超えられる程度のものに過ぎないよ」
「さて、会って早々だが
私たちが此処にいられる時間は長くない」
長門の声が聞こえる
「そうですね、私達は所詮沈んだ艦娘の残滓、出来ることはあれど
長くはこちらに止まれない」
赤城の声は静かで、まるでそれが規定事項であるかのように話す
「だから、ほら、立てよ提督
オレたちからの、最後の言葉をくれてやる」
「私たちは草葉の陰なんかに隠れてやる気はないよ、靖国で待っているから
ゆっくりと来い」
木曾と磯風の声
「最後なので、提督…ちゅっ」
この声は…酒匂か
「あーっ!それはダメデース!
…抜け駆けokなら…ワタシだって!」
競うな金剛、本当にお前は子供相手にでも大人気なない子だな
「オレから掛ける言葉なんてねぇよ!」
「あらあら〜?さっきまで提督〜って泣いてたのに?」
「うるせぇっ!」
龍田と天龍か、仲の良い事だ
「…さよなら」
山風、よく声を出してくれたな
引っ込み思案なお前の事だ
随分勇気が要っただろうに
「向こうで待ってるからね
…あんまり早く来ちゃダメだよ?」
北上、こんな時まで茶化すな
いや、それがお前か
「ごめんね提督!多聞丸に怒られちゃうよね?」
飛龍、多聞丸はどこにいるんだ?
…いや、靖国か
「あとは今いる艦娘たちに任せます、私たちはもう行きますので」
不知火、お前は最後まで飾り気ない子だったな、もう少し甘えても良いのだが
「人間50年とは言いますが
人生は百までとも言います
ゆっくり待っているので、楽しんできてくださいね?」
飛鷹、お前はよく気の回る子だな
こんな時にまで心配をかけるのが不甲斐ないよ
「みんな提督の方が大好きなんですね
…最後だから言っちゃいますけど
私も好きだったんですよ?」
吹雪…すまない、
こんなジジイの初期艦になってくれたお前にも迷惑をかけたな
深海棲艦出現当時のことが懐かしい
が、あまりそうも言っていられない
「そうよ司令官!ガツンとやってあげなさいな!」
応とも、と暁の声に答えながら
老いた足腰に鞭打って立ち上がる
「さぁ、気合!入れて!上げます!」
バシィッ!と腰を叩かれる
「いたたたたたっ!腰…腰はいかん
もう歳なんだぞ…」
「あぁすみません提督、比叡姉様が失礼を…あ、こんなことに最後の一言を…」
「霧島、大丈夫です、榛名がまとめて言ってあげます…提督、頑張って!」
それは纏め過ぎではないだろうか?
「あの生意気な軽空母型にはお灸を据えてあげないとね?提督」
そうだな、陸奥
「今ならば、彼のように出来るはず
さぁ、皆の力を集めてください」
扶桑の声と共に
光が集う
「こんな暗い場所でも、私達は貴方の道を照らします、たとえもう二度と触れる事が叶わなくても、私たちは貴方と共にあります」
「だから、どうか迷わずに
真っ直ぐに、進むべき道を進んで下さい」
鳳翔、明石に背を押されて
私は
「私は…立ち止まっている訳には
いかないな!」
背から胸まで、貫通している糸をつかむ
「ぬううっっん!」
「ナ…提督…!?馬鹿ナ
自分ノ艦娘ヲ見殺シニスルノ!?」
「私は…もう…過去には捕われん
なにせ、娘達自身に送られてしまった身だ」
血を吐きながら、糸を丸ごと奪い取る
胸に空いた穴から血を吹き出して
しかし、その傷は即座に修復されて行く
明石がくれた、高速修復剤か
「換装、あきつ丸」
確信を持って、一言唱える
その瞬間、身の内から『黒』が湧き出す
「換装、完了」
細かいことは、詳しくはわからない
だが、これだけはわかる
私には今、あきつ丸の力が宿っている
「行くぞ神巫提督、合わせてくれ」
「了解です、甲崎提督」
軍刀を構える神巫提督と共に
私は拳を握り、拳闘の構えをった
600話記念番外編は
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過去編軍学校
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過去編深海勢
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……