戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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千年期

拳闘の構えを取る甲崎提督

その背は、つい先ほどまでとはまるで違う

 

「なるほど、誰かが…いや」

「そう、皆が力を貸してくれるのだ

 

行くぞ!」

 

突撃した甲崎提督は、拳で機関銃の弾丸を撃ち落とし、すべての攻撃を迎撃する

キンキンと響く音は重なり合って

もはやいくつの音が鳴ったのか

数えることもできない

 

「…やはり、出来るか…」

 

「お見事です」

 

目にも留まらぬ速度での連撃は

相手の機関銃よりも一瞬だけ長く続き

 

その機関銃を蹴り壊していた

「今だ」「り」

 

端的過ぎる返事とともに

軍刀が投擲され、これもまた

装甲を砕く

 

そして

 

「でぇぁぁぁぁっ!」

 

軍刀が水母棲姫の装甲に突き刺さるその瞬間、俺は地面を蹴り…その柄を蹴り込んでいた

 

「ガ……」

 

ずぶしゃ、という音と共に

肉体を貫通する軍刀

豊満な胸を一直線に貫いたその鋒は

誰がどう見ても致命傷で

 

そして、致命的に足りていなかった

 

「マダダァァッ!」

 

胸に突き立った剣を引き抜き、蒼褪めた血を流し、それでもなお臨戦体勢を崩さない水母棲姫

 

しかし

 

「…これで、終わりです」

 

涼やかな声と共に、

その傷口に矢が突き刺さる

寸分違わずに薄い刺傷を撃ち抜くその技は

 

「姉さん…!」

「はい、そして何より」

 

僅かに笑みを浮かべながら

その弓を挙げる加賀

 

そう、その弓は

 

「赤城さんの弓だからこそ、です」

 

赤いリボンの揺れる、その弓は

消滅した赤城から受け取った

『赤城の基礎艤装』たる弓

 

加賀の艤装には型違いとして

適合できないはずのそれを

いま、姉さんは…

 

「はい、私だけの力ではなく、赤城さんの強い願いが、想いが込められているからこそ

使えるのです」

 

「ク…マァァアッ!」

 

絶叫と共に、投擲される魚雷

それは惜しくも狙いを逸れて地面に着弾し、爆発と共に煙を立てるが

 

「取った!」

 

そのなかに、影が一つ

 

「川内!」「うん!」

 

苦無型魚雷を手に

爆煙の煙幕へと突入した川内は

そのまま突撃強襲を仕掛け

 

反撃や余波に被弾することも厭わず、全身を糸に斬られながらもついに魚雷を直撃させる

 

もちろん、それは無駄にはならない

 

大破していた陽炎は

消滅した磯風から無事だった主砲と魚雷発射機を受け取り、それを使って射撃を仕掛け

同時に山城と愛宕は今度こそ集中砲火を放つ

 

「換装…長門!」

「瑞鶴!力を貸せ!」

 

顕現した弓に矢を番えた俺と

人が持つには巨大過ぎる砲を肩に据えた甲崎提督は、同時に最後の一撃を放つ

 

そしてようやく

 

「コレデ…終ワルンダ…

オ姉ニ…届カナカッタ…私は

ここで、死ぬんだ…

 

え…?お姉の声…

 

浮上…してるの……?」

 

掠れた言葉とともに

砂のように、溶け崩れるように

その姿が消えていく

 

その後から

 

背中合わせに二人

…やはり、モデル通りというべきか

なんというか

出現したのは千歳と千代田の二人

…まさか両方くるとは思っていなかったよ

 

「…ふぅ………」

 

白い制服に戻った甲崎提督

相変わらず真っ赤な血が付着しているが、それに構うこともなく

提督は笑いながらこちらに手を差し伸べてきた

 

「さて、随分とメンバーが減ってしまったから、演習は中止とさせてもらえないか?」

「……そうですね、たしかに随分減ってしまったようだ」

 

軽く目を巡らせて

周囲の艦娘達…の残骸を見る

とはいっても、艤装だけだが

 

「これは、まぁ…深海棲艦による、襲撃を受け、多大な被害を出しながらも

これを撃退した…ってところですかね」

「そうなるな…さて、私はこれの言い訳を考えなくてはならないので失礼するよ」

 

「はい、では自分も

これで失礼させていただきます」

 

そっと下がり、そのまま沖津丸の方に向かおうとしたその時

 

「ちょっと待ちたまえよ」

「…?なにか?」

 

ふと、声をかけられて振り返ると

そこには長門の砲を消した甲崎提督

 

「君、あの子はどうする気なんだ?

置いていくなんて言わないよな?」

「え?この鎮守府の所属艦娘になるんじゃないんですか!?」

 

驚く俺に、微笑む甲崎提督

しかし彼は

 

「馬鹿を言うならもう少し真っ当に言うんだな、神巫提督、君が倒したんだから

君の鎮守府に所属する事になるに決まっているだろう?」

 

とんでもないことを言い出すのだった

 

「しかし、この鎮守府は甲崎提督の指揮、管轄する鎮守府であって

ここでドロップしたからには甲崎提督の指揮下に入るのが妥当であると思いますが!?」

 

「はて、撃破した艦隊を指揮していたのは神巫提督だろう?ドロップ艦娘達は二人とも君に帰順するべきだと思うが?」

「いやいやいやいや!」

 

議論はしばらく続いた

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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