戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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この影に、貴女と

「姉さん、良い加減に聞き分けてください…!」

「やだやだやだやだやだ!

蒼羅さんからはなれたくないいっ!」

 

神通に抱えられて、体を空中に浮かされてなおジタバタと足掻きながら喚く川内は

執務室の天井から吊るされていた

 

「執務中なんだが…」

「その提督のためですから

これを少々お願いします」

 

俺は女の子を荒縄で縛って喜ぶ変態ではないのだが…

 

「ていとくー!ていとくーー!」

「はいはい…ちょっと大人しくしてなさい」

 

ばたつく川内を押さえ込んで

そのまま神通の帰りを待つことにした

 

「…大丈夫か?川内」

「む〜っ!」

 

どこかへ去った神通と

ジタバタする川内

そして今日も元気に歌って踊っている那珂ちゃん(解体はされていない)

 

暴れても抑えられるようにそばに待機して、首筋などにゆっくりそっと触れる

 

「ほら、暴れるなよ…大丈夫

落ち着いて…大丈夫だから」

 

「ガルルルルルゥ……」

 

唸っていた川内はやがて徐々に大人しくなり、

 

「ていとく…」

ようやく、落ち着いてくれた

 

「蒼羅さんは、どこか行っちゃったりしない…?」

「する、絶対する、むしろ

お前を置いていく事になるし」

 

再び暴れそうな気配を見せた川内の首に手を掛けて

 

「落ち着け川内」

 

一言で鎮静化する

 

「結局、いつかは別れることになる

艦娘は不老だし、俺は人間

…って言って良いのかは分からないけど

まぁいつかは死ぬだろうさ

だから結局、俺はお前を置いていく事になる、それについては絶対的な確定事項だ」

 

「それでも、提督としていられるうちは、俺はここの、創海鎮守府を離れる気はない

そんな期間限定の提督さんだけどな」

 

「俺は多分、色々と置いてきた物が多すぎるんだよ、瑞鶴は頑張ってくれてるけど

俺の魂には限界が来ている

感覚の消失、記憶の喪失、挙句肉体自体の変異、深海がどうとか浸食率がどうとか

そんなチャチな物じゃあ断じてない

魂自体の磨耗と劣化が激しくなっているのさ」

 

少し語っていると、いつのまにか時間は過ぎていたらしく、神通が帰ってきた

 

「提督、火消しは終わりました

これからは…あまり波風を立てないように、お願いしますよ?」

「あぁ…波風?」

 

新しい陽炎型か?なんてくだらないことを考えていると、その考えは伝わっていたらしい

 

「陽炎型でも白露型でも島風型でもありません、事象ですよ提督」

 

ピシャリと先手を打たれる

「じゃあなんの?波風が立つってことは、それなりの原因があるんじゃないか」

「えぇ、火のないところに煙なし、しかし根も歯もなくとも土や苔はあるでしょう

提督で言えば…鹿島さんとか」

 

ふと笑いながら、神通が隣室を指す

それはつまり………

 

「マジ!?見られたっ!?」

「はい、半裸の鹿島さんをお姫様抱っこで運んで隣室へGO!する姿を、

何人かの艦娘が」

 

「…………死んだ…俺……」

「提督、大丈夫です、まだ死んでいません…偏った場面しか見ていない子達はともかく

全部を見ていたという空母棲鬼さん達が火消しをやっていますので

そうたいした問題にはならないでしょう

大丈夫ですよ」

 

ゆるりとした微笑みと同時に告げられたのは、自分の首が皮一枚で繋がったらしいという情報…いや、それはつまり

 

「姉さん達とかは?」

身内込みでの公開処刑の可能性微レ存…!

 

「はい、ちゃんと火消しをやってくれていましたね」「oh……」

 

つまり、公開処刑済みと

いうわけだよ…終わったな俺

 

[提督さんっ!元気出してよ!ねえったら!]

[しばらく引きこもるから、よろしく、探さないでください]

 

[探さないでってそれは家出の典型例でしょ!なんで引きこもりを探さなきゃ行けないのよっ!…逃げた]

 

何も聞こえないほどの深層に潜行して瑞鶴の追撃を逃れた俺は、この際だから瞑想することにした

 

「はぁ………すぅ……」

 

意識だけなのだから

呼吸をする必要はない

しかし、呼吸をしないのはのちに差し障る可能性があるので、息を整えておく

 

「……んで、やっぱり居るかよ」

「ソウネ…私達ハ…ズット一緒ヨ

 

ソラ」

 

「そうか…全く嬉しくないね

深海棲艦…空母棲姫(白い姉さん)

「ソノ表現ハ少シ間違ッテイルワネ…本来ノ神巫羽美ハ…私なのよ」

 

「はぁ…?」

 

空母棲姫の姿から、赤城成分が抜ける

純然たる白い加賀になった空母棲姫は

そのあとさらに…僅かに、姿を変えた

 

「これが私、私の本来の姿

あ…神巫羽美の加賀になる前の姿」

 

僅かな変化だ、比べなければ分からないレベルの微細な変化

だが、それは確かに

 

「姉さんの顔…だな」

 

人間として、見覚えのある姿

それは間違いなく、俺の姉の姿

 

「私が轟沈した後、深海棲艦側(深海珠華)の意識として覚醒した彼女に

私は体を奪われて、そしてそれからずっと、コアの中と魂のネットワークを行き来した

その結果、私はある程度『加賀』の行動を掌握できることに気づいてね

轟沈するために、蒼羅のもとに行くために、ずっと全てを操作していたの」

 

深海から、心だけ存在として

俺をずっと追っていた

その言葉はどこまでも重く、同時に

とてもとても、甘かった

 

「大好きなそらのために、戦況も、士気も、戦力比も、精神性も、全部をいじって

そらを英雄として仕立てた

直接干渉できないのだから苦労したけれど、もういいの、その苦労も報われるわ」

 

姉さんの左手が、俺に触れる

そして、それを撫でるようにして指先を滑らせた

 

「瑞鶴なんて捨てて、私とひとつになりましょう…そうすればもう

別れる必要なんてないわ…」

 

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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