戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

448 / 649
ウィッチクラフト

一歩、歩み寄ってくる姉さん

 

しかし、それ以上は進まない

姉さん自身が進めるのはここが最後なのだ

 

この姉さんは俺の魂に混入した空母棲姫の力を頼りに顕現している、いわば分霊

主体として存在する俺と瑞鶴とは魂の比率が違う

 

「さぁ…一緒に…ね」

 

「………」

 

半歩、また半歩

僅かに進む視界、引き寄せられるような魅力と同時に、背骨を引き抜かれるような感覚

氷を詰め込まれたような悪寒と

そして掠れていく視界

 

それら全てを認識した上で

 

「姉さん、ごめん」

 

俺は、姉さんを拒絶した

 

「俺は姉さんにはなれないよ」

 


 

「姉さん、ごめん」

 

わたしの目の前は、真っ暗になりました

今は夜ではないはずなのに

ここは深海では無いはずなのに

 

深海で見えていた光が

消えてしまったのです

 

「俺は姉さんにはなれないよ」

 

その一言は、残酷なまでに苛烈に

そして唐突に、わたしの胸を切り刻み

迷うことなどなかった目を眩ませて

 

わたしから希望を奪ったのです

 

「そんな……そら…!」

 

「姉さんは存在を諦めて、魂の中に引きこもっているんだろう?

現実側に出て来ることもできない姉さんは、結局なんの主体性もない

そんな状態になるわけにはいかない」

 

一言一言、声が放たれる度に

わたしの魂は傷つき、力は衰える

 

ならばもう、これ以上は話せない

わたしがそらを手に入れるためには

これ以上の損害は許容できない

 

「ごめんなさいね、そら」

 

わたしは一言だけを残して

そらの魂から離脱して、加賀の方へと意識を戻し

 

[この力は…失くさせはしないわ]

 

こんな時に加賀ならば

蒼龍や五航戦に邪魔はさせない

なんて言うのかもしれないけれど

 

わたしはわたし、あくまでもそこは変わらない

 

加賀としての私と人間のわたしは同一でありながら別の心を持っている

 

そして、わたしはそらを手に入れるために、あらゆる事をしてきた

魂を行き来し、空母や戦艦の魂を渡り歩き、それを奪い、乗っ取り、

時に艦娘を轟沈させ、時に鎮守府を壊滅させ、そして時に深海泊地を破壊した

 

これから少しだけ、

それが増えるだけのこと

 

[なにも変わらないわ…]

 

そう、そらの心を

壊すだけ

 


 

とか考えてるんだろうな姉さんは

まぁ俺もそれを読んでいるわけだが

 

「さて、そうはさせないぜ姉さん

海より空の方が広いってこと、教えてやるよ」

 

俺は現実側に復帰したのち

速攻で体を回収して加賀の…姉さんの元へと向かう

 

火消しは終わった、なんて言っていたが

その迷惑よりも重大なものがある

魂に時間は関係ないので、時間が存在する俺たちは急がなくてはならない

 

「加賀!」

 

「はい、航空きゃっ!」

 

押し倒すような勢いで加賀に取り付き、そして加賀の目を真っ直ぐに見る

 

「加賀、お前の力が必要だ

手を貸してくれ」

 

その手を取って軽く握り、心拍数を確かめる

「いいか?」

「…………はっはい!」

 

加賀らしからぬ上ずった声を聞きながら、返事を肯定とカウントし

俺は加賀に指示を出す

 

「まずは自分の魂の中の状態を確認してくれ、そこから接続している艦娘や深海棲艦を洗い出す」

 

「わかりました」

 

ふと目を閉じた加賀は、そっと手を胸に

 

「…………………」

「………………」

 

俺の手が加賀の手を握ったままだったから、直に当たっているんだが…

俺がその気じゃなければ風紀上は問題ない!ヨシ!(現場猫)

 

「終わりました、報告します

まず全国の加賀の存在数に対して接続数は約1000多く、うち800程は不明な接続先となっています、これが提督の言っていた条件に合致する『深海棲艦の接続先』であると思われます」

 

「お、おう…本当に総当たりでやるしかないか」

「いいえ、まだ終わりではありません

全体の接続先のうち、加賀本体が複数回使ったと思われる接続先は約400件

これを絞り込めば良いはずです」

 

加賀の書き換え後に使われた

つまり本体がアクセスした接続先は400件、その中でさらに複数回と絞り込めば…

 

「条件は3回以上のアクセス、非過剰適合、最新の5件を表示して」

「了解しました

…私、原霧鎮守府、舞鶴第二鎮守府、南方深海泊地、漂流中の空母棲姫です」

 

「…ってことは今は」

「空母棲姫に宿っていると見ました、もしも私にアクセスしてきたらそのまま捕まえましょう」

 

「頼んだよ、姉さんとは少しお話しが必要だから」

「了解しました、ではそのように」

 

そっと手を離して、

こっそりと戻す

 

「姉さんを取り戻すために、力を貸してもらうよ」

「はい、提督」

 

その返事を聞きながら、

俺は全力で思考を逸らした

 

「さて、秘密兵器でも作るかね」

「提督は仕事に戻ってください」

 

その瞬間、聞こえた声の出所は

 

 

大淀

 

「嘘だろ…」

「嘘で済んだらどれほど幸せなのでしょうかね…仕事を終わらせないと嘘の一つもつけませんよ?て、い、と、く?」

「グッ…返す言葉もないぜ」

 

メガネを輝かせる大淀は強かった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。