「ようやく終わった……」
「まだ終わっていません」
「もう終わっただろ?!」
「いいえ、これは昨日の分ですから、これから今日の分が始まりです」
「嘘……だろ………」
思わずBLEACH顔になっていると
メガネを上げた大淀が
「そうだと思うのなら書類を見ればいいじゃないですか」
乗ってくることは無かった
クソッ…これで軽く空気を流せるかと思ったのに
[提督さん…あまり無茶なことを言うなよ…弱く見えるぞ]
[お前に乗れとは言ってねぇよ!]
もう何をやっても弱く見えるヨン様は置いておいて、まずはやるべき事を確認する
ここ一年程度では提出されたことのない書類もあるわけだし、俺にとって未知の書類もまだ散見する事はある、そう言う時は大淀の出番だ
もともと2世代前の提督の時代から
ずっと執務をやっていた事務艦である大淀は(たまに出撃させてあげると本当に嬉しそうな顔になる)
執務室に関しては俺よりよく知っているし、俺の知らないことでも知っている事は多い
「というわけで、この書類の書き方を教えてくれるか?」
「ん、わかりました
…これは、この内容欄のあたりはですね、こっちの報告書の中身と同じ内容でいいんですが、反省書きについては…うぅん
卯月ちゃん、文が適当過ぎますね
これは後で再提出にしないと…」
期限が迫っているような書類っぽい雰囲気を感じたのだが
「もちろん迫ってますよ?あと2日しかありません、ですがこの文章では理解できませんし
…そもそも語尾が文面に出ている時点でoutです」
「はぁ………あいつはそういうところあるからなぁ……」
面倒なことになった、とため息をつきながら、俺の手元に出てきた書類
反省文の認可とその感想、所管、有効性の確認とか諸々の書類をそのまま大淀に渡す
「これ、その再提出に合わせても一回くれ…んで、こっちは…鎮守府の改装についてか
これたしか一回却下したよな…」
(老朽化してきている場所もあるので、必要ではあると思いますが、その案が
なんというか刺激的なものばかりですね)
秘書妖精も困り顔だ
そもそもこの鎮守府は妖精、艦娘、提督という最小単位で構成された鎮守府であり
憲兵ですら元艦娘である
なので必然的に建て替えやらは要請に頼ることになるのだが…
その妖精たちは毎回なんというか
悪ふざけをしようとする
まぁ、その程度の話で済ませられれば良いのだが、そうも言っていられない
流石に海軍という組織にあっては悪ふざけを許していられる限界というやつがある
そして妖精は無邪気が過ぎる(といっても、どこまでが本気でどこからが遊んでいるのかの区別がつかないので無邪気であると仮定されているだけだが)
その限界を簡単に突き破ってネタじみた代物をポンポンと上げてくるのである
「なんで全周防御のイージスシステムを要求してきたんだ…?」
俺は書類の中の一枚…イージスシステムのレーダー、迎撃ミサイル、機銃の配置案…を翻しながら問いかける
(さぁ?…地対艦攻撃用ミサイルよりはマシだと思いますが)
「なんでそんなのが出てくるんだよ…あいつらはたしか旧戦時中の日本軍人の英霊なんだろ…?すでに由来が謎なだけに何しても不思議じゃねえけどさ
いくらなんでも50年近く先の時代の装備を要求するとかありえないだろ!」
(ありえてしまうのがイレギュラーなんですよ、あり得ないからからこそ
それが起こったときに騒がれるんです
コクチョウの事忘れたんですか?)
「ブラックスワンの実在証明か?
たしかにあれは大騒ぎになったと聞くが…まぁそれはおいてだな…」
秘書妖精とコントをしながら
話を続けていると
そこに一筋の光明が舞い込んできた
「提督、お仕事は終わった?」
「まだ書類に忙殺されてるよ」
川内だ
「なら、手伝ってあげようか?」
「ぜひに、頼む、お願いだ、期限ぶっちぎってやがるやつもあるんだ」
今日はなんて日だ
川内が天使の様に後光を背負って見えるぜ
「後光背負ってるのは仏教でしょ、天使とは関係ないって」「どっちも似た様なものだろ
そもそも後光ってのは天の意思に従ってるっていう証明なんだから」
どうも口に出ていたらしく、
それに苦笑する川内に反論する
「それで、書類は?」
「これこれ、出し方分からんやつとか、書式自体があってないようなやつとか
そもそも様式がなくて、自分で作って出すやつとか、色々あるね
ワードで書類作るってめっちゃ時間かかるんだけど、今日終わらせられるか不明」
「じゃあそれ急ぎで、私たちはこっちのできるやつからやるわ」
パッと書類を分けて、概要の説明だけしたら俺はパソコンを占領してワードで書類を作り始める
「こんなの元工場職の旋盤工にやらせんなよ…いくらNC旋盤のだからって
プログラム作るのとは違うんだぞ…」
書類作るのに慣れている人はともかく、エクセルの表すらまともに使いこなせない俺からすればワードなんて何をすればいいかわからない
ツールバーの機能説明から読み込むレベルである
「さて…えっと……?
とりあえずはA 4サイズの…えー…『新規開発儀装のメンテナンス及び定期検査手順書』
っと」
事前にある程度形にした表を
エクセルからワードにコピーして
文章をつけていく
まずは空の表を入れて、チェックする内容を提示、そのあとに昨日の説明と同様に
この表が何をするためにあるのか、どのように使うのかを文章にしていく
写真を貼って…あとはひたすら誤字を潰しながら文字を打ち込む
『誤用のないよう、上のようにネジの識別は色テープを用いて行い…』
[これ読んで理解できる〜?]
[文面読んで理解できなければ読む側の問題だろ、文節は間違ってないし
接続詞も
別に俺は士官用のカリキュラムで勉強したわけでもない…佐官ではあるが、あくまで提督としての佐官だ
きっちりした水兵でもなければ、上等な教育を受けたわけでもない
そんなきっちりした作文が出来るわけではないのだ
「上の方が騒いだらまたそれはそれ、俺が責任を取るわけでもないし。
俺としてもそりゃあきっちりした書類あげたいけどさ、高卒の工場職なんてのはロクでもないんだし、諦めが重要だろ」
「そっか、そうだね…
うん、上ってのはいつでも面倒くさいものだし、抽象論ばっかだしね
なんとかしろ、なんて言われてもどうしようもないし、そもそもできないことをやるってのはナンセンスだよ」
川内はどこか遠い目で返してくる
そういえば、川内の最期は缶水喪失だったな、そりゃあ水がなきゃ蒸気は作れないよ
「んじゃあ提督、これ手伝ってあげるから、なんかちょうだい♪」
「お、急に話変わったな」
打ち込みは止めないが話には乗り
目の前に山積みになった問題から目を逸らす
「提督と1日デート、前に金剛さんがしてたじゃない?」
「………アレのこと?響の壮行会のための買い出しだろ?」
「提督がデートって言われてわかるんだったらそれはデートだよ…だからね
私ともデート、してくれないかな?」
「………」
少し、手を止めて考える
予定が空いている日はあったか?
あるな、よし…
「来週の月曜でいいか?すまないがちょっと手間がかかる仕事が入ってるんだ」
「ん、そんな早くていいの?」
「逆、それ以降だとしばらく忙しい…だから、俺から誘うぜ
俺と来てくれ、川内」
「〜〜ン!ンッ!」
謎の表情で頷く川内
おそらく肯定だろうと解釈して、それから俺は、少し意地悪を仕掛ける
「川内、はっきり答えてくれ
川内、お前は俺とデートしてくれるのか?川内」
ゆっくりと、低めの声で何度も名前を呼んでいく
次第に反応の鈍る川内
その表情はどことなく緩んでいて
目の焦点があっていない
「さぁ川内、俺と、デートしようぜ」
「…………はい……」
とろりと蕩けた声で、返事をしてくる川内は、どこか遠くを見つめながら
とても幸せそうな表情だった
好きな人に名前呼ばれたら、嬉しくなるよね
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しぐ……しぐ……