戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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注意

本章はちょっと胸糞エピソードやマイナス面の描写が強くなります

よって、『俺は明るい艦娘・提督間のエピソードが見たいの!』というお方は
日本語サブタイトルの話の方に集中してお読みいただくか、ブラウザバックを推奨します

(もちろんしばらく待って次の章から読み直すでもいいのよ?)


double cross

金剛と一曲踊ったあと

 

「私と一緒に、踊っていただけますか?」

「はい、お受けいたします」

 

次の一曲のパートナーに選んだのは、妙高型の羽黒

道具派、結城少将の相伴だ

 

「…巫女さん、本当に私で良いんですか?」

「どこででも『巫女さん(それ)』出てくるね、俺はなぁなぁでパートナー選んだりしないよ、間違いなく、君を選んだんだ」

 

やはり二年前の大本営所属の艦娘はみんなその呼び方を知っているのだろうか…?

 

「もぅ…そういうことを言うから貴方は…」

「何か言ったかな?」

「なんでもありませんわ」

 

軽く話していると、

そろそろ曲が始まるようだ

「さぁ、お手を」

「はい」

 

その手をとって、違和感に気づく

「…はい」

「やはりか」

 

羽黒の白く、細い手

その手の中には

似つかわしくないような黒い矩形

そう、メモリーカードだった

 

「人権派の提督に接触できたとき

渡すつもりでした、お願いします」

 

曲が始まり、足を踏み出すそのタイミングで、羽黒が小声で話しかけてくる

 

「…わかった、お受けしよう」

 

羽黒からメモリーカードを受け取った

「データは?」

「提督の諸違法行為、ならびに艦娘達の現状報告と提督更迭の嘆願」

 

「了解した」

 

簡潔な言葉だけをかわして

ステップを刻む

 

そして

「ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとうございます」

 

羽黒と分かれて、

次のパートナーとなる艦娘を探す

 

……そうだな、人気がすぎるが

鼎大将の方とか、行ってみるか?

 

「あ、神巫提督、私と…」

「おっと、これは失礼しましたレディ」

 

唐突に話しかけてきたのは

……またしても艦娘兵器派

佐野馬将(さの ばしょう)准将の艦娘である、青葉

 

「よろしくお願いします」

「こちらこそ!」

 

この青葉もなんというか…苛烈な性格をしているようで、普通は男性側から誘うのだが

わざわざ俺を探していたらしい

 

パートナーとして随行していた主

佐野提督は随分と人望がないらしい

 

艦娘の青葉も本当に随行が嫌だったようで、一曲踊って体裁を作った後はすぐに逃げてきたと見える

 

「おっと」

 

隣の組と当たりそうになって

ギリギリで回避する、その瞬間

 

「たすけて」

 

そう、聞こえた

 

声の主人は、春日丸

 

[…提督さん]

[聞こえたな]

 

青葉と踊りながらも、躊躇はない

 

「すまない、青葉」

「いいえ、青葉にも聞こえました」

 

その声と共に、俺は青葉よりも

春日丸の方を優先することを決意し、移動しながらも春日丸とそのリーダー

単冠湾の提督を追う

 

「…行けますか?」

「十分な練度はあるつもりです」

 

青葉に協力を取り付け

単冠湾の提督と大鷹の組のすぐ横につき続ける

 

無論、ただ横につくだけではない

その動きを逐一観察し、邪魔をしながらだ

 

そして、曲の終わり側に青葉に視線を向けて

 

「はい、青葉が行きます」

「すまない、頼んだ」

 

「「ありがとうございました」」

 

俺は次の組に、春日丸を選んだ

「俺と踊ってくれないか?」

「!…はい、喜んで」

 

それが、何であるかも考えず

少女は俺の手を取った

 


 

笑い声が響く

くすんだ色の空に、赤く染まった海に

その笑い声が響く

 

「うふふふっ…あは

アハハハハハハッ!」

 

「もう、馬鹿な連中ね…要人が

わざわざ一箇所に集まるなんて」

 

()()()()()()()()()

 

その言葉は、どこまでも寒々しく

そして虚に響いた

 


 

 

「…!」

 

曲はいくつか過ぎて

次で最後という曲に辿りつき

 

加賀と踊っていた、そのときだった

 

「うふふっ…it's show time」

 

強く、手を引かれ、体勢を崩しかけた

その時

 

空が、赤く染まり

夜の帳が切り裂かれる

あるはずのない陽光が、天を満たした

 

「…なんだ?」

 

その気配に気づいたのは

会場の中で、わずか五人の提督達

 

「…来たな」「ハイ」

「那智」「了解している」

「ふむ…龍鳳」「はい」

「長門」「あぁ」

「提督」「うん、わかってるよ」

 

そして、惨劇の幕は上がった

 

深海棲艦が、突如として出現したのだ

会場となった館の中に

 

「アハァ…ギャハハハッ!」

「ジュギィァァァッ!」

「ギィィァァァァッ!」

 

さまざまな姿、さまざまな艦種

どれも共通するのは

歪で欠けた艤装と白黒の彩色

そして生気のない、殺意に濡れた虚な瞳

 

「いかん!」

「長門!」「分かっている!」

 

それに対応できたのは、本当に僅かな提督と鍛え抜かれた艦娘達だけだった

 

「祥鳳!」

「きゃぁぁぁっ!」

「提督!逃げ」「加古ぉぉぉぉっ!」

 

一度戦闘エリアが展開されれば

そこは巨大な密室と成り果てる

そして、中には脆弱な提督と

艤装のない艦娘達

 

深海棲艦が押し寄せれば、どうなるかは火を見るより明らかだ

 

「提督早く逃げてください!」

「お前を置いて行ぐぁぁぁっ」

「提督っ!」

 

飛鷹を庇った提督が倒れ

硬直する飛鷹に砲弾が浴びせられる

 

死が目前に迫る、その時

 

「装備は無くても、艦娘ではあるさ」

 

日向がその左手を犠牲にして砲撃を防ぎ、そこに飛び込んだ長門の拳で深海棲艦が吹き飛ばされる

 

「…我々はここを、提督達を守るぞ」

「了解…!」

 

隻腕となってしまった日向は

それでもなお衰えない気迫で拳を握り

長門と共に、深海棲艦の群れへ殴り込む

 

「テートク!私達も行きマショウ!」

「いけ、金剛!」

 

武器はない、艤装も、拳銃も、佩刀も

全てを置いてきているからだ

 

平和の宴に、武器はいらない

そこに血を持ち込むべきではないからだ

しかし、それを逆手にとって

鏖殺を狙う者がいた

 

「なら、徒手空拳でも…抗うマデ!」

 

金剛がドレスの裾を揺るがしながら跳躍し、ダンスホールの中央へと躍り出る

 

「テートク!」

「了解っ!」

 

俺は瑞鶴の魂から、鋼材を捻出して

「こんなものか…ねっ!」

 

一丁の拳銃を形成する

込められた弾は16発 ワルサーp99だ

 

「上出来デス!」

 

平和の宴は

硝煙と血煙の舞う戦場へと堕とされた

 


 

真っ先に逃げようとした愚かな提督がいた

そんな奴は誰も助けなかった

 

艦娘と共に戦おうとした提督がいた

力無き人は蹂躙されるだけだった

 

提督を守ろうとした艦娘がいた

彼女に力はなく、

そして敵は力を振りかざしていた

 

血は流され、悲鳴は上がる

そんな中、笑う者がいた

 

ダンスパーティの中

一人隠れ、笑い声を上げる者がいた

 

「これで…これで私は元帥よ…ぁはぁはぁはぁはぁ」

 

将官や佐官が皆死ねば

適任者のいなくなった元帥の座は

自動的に生き残りへと譲られる

 

そう、彼女がその座を手中に収めるために、深海棲艦を呼び寄せたのだ

 

「死ね…馬鹿大将…あは…アハハッ!」

 

リンガ第二鎮守府

提督 上城如苑(カミシロ ジョオン)准将

自らが権力を握るために

分を越えた力を使おうとした

 

愚かな裏切り者の名である

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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