戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

458 / 649
Espérer

「行けるか…なっ!」

 

連続でトリガーを引き

無論正確に命中させる

 

俺の技能はパーツの新造

狂いの無い理想通りの銃身は、狙った通りの軌道を作り出す

 

「馬鹿ナ!」「死ねよ」

 

軽巡級の艦らしい何かの頭に9パラ弾を叩き込み、沈黙させる

 

所詮は軽量級の艦、2発で十分に殺せた

 

「よし」

「テートク!ワタシには!?」

「すまんな、材料切れなんだ」

 

以前のように艤装丸ごとを作ったりはもうできない、せいぜい拳銃一丁が限界だ

 

(今はもう無理ですね)

[拳銃一丁でも無理してるのは変わりないんだからね!]

 

「なら仕方ないデスネ!」

 

金剛も拳で重巡型を殴り倒し

砲撃を防ぎ、着々と深海棲艦を撃破していく

 

「おらぁぁぁっ!」

「レディが出す声じゃ無いよ金剛…」

 

「今はそんなこと言ってられないデス!」

硬質かつ柔靭なはずの深海棲艦の装甲を拳で撃ち抜き、果敢に立ち向かう長門、金剛

肉体的には人間と大差ない艦娘達を庇うためになかった日向と那智

提督達をまとめて守るために

艤装がないのにも関わらず

立ち上がった祥鳳と飛鷹

 

唐突な奇襲をものともしない

強力な支柱を得て、いまや艦娘達は立ち直りつつあった

 

「…だけど」

提督はそうではなかった

 

安全なはずの場所で

突然の奇襲、泰山と迎え撃つ算段をつけようとする方がおかしいのだ

 

そもそも前線に出ない職である提督は戦闘どころか殺気を向けられる事さえ慣れていない

 

「まずいね、艦娘達はどうとでもできるけど、やっぱり提督達は守り切れないよ」

 

「そうだな…戦える提督もいないでないが、やはり武器頼りな側面が強い」

「現状、一方的に勝てるのは甲崎提督と神巫提督、それに赤嶺少将と…鳥居大路大佐か」

 

「おい誰だ最後の」

「艤装技師の技術大佐だそうだが

…どう見ても前線なれしている」

 

廊下にまで下がって、角の陰で話し込む諸提督と長門の視線の先には

砲撃を鮮やかに回避していくドレスの美女の姿

 

これが普段濁音を撒き散らしながら管を巻いている輩などとは到底思えないが

どう見てもその顔は771研の一級艤装技師

飛鳥であった

 

「いっくよおーっ!」

 

天空に手をかざした飛鳥の元に

飛来する儀装『クロウバード新三改』それに飛び乗った飛鳥は

まさしく変幻自在の軌道でもって

空中を駆け回り

反射的に対空攻撃を試みようとする深海棲艦達は、その前に金剛と長門のパンチを受けて沈んでいった

 

徐々に、敵の数は減りつつあった

 


 

「チッ…なによ、あのバケモノ共!

全然殺せないなんて!この私がせっかくこんな指輪まで使ったのに!

無能なカスめ!」

 

戦況が落ち着いてきたと感じたのか、外の様子を伺って…そして、己の招いた深海棲艦側が徐々にすり減っていることを悟るや

隠し部屋の中に隠れたままで一頻り悪態をつく

 

「馬鹿大将を殺すんだよ!

早くしな無能共!」

 

「…無能は貴女です

バイパス程度の役も碌に果たせないなんて、思いもしなかった」

 

隠し部屋に、声が響いた

 

「何!?」

「航空母艦、加賀です」

 

それが艦娘だと気付いた瞬間

如苑准将は気を抜いていた

 

抜いてしまった

 

「もう貴女に用はない」

 

疑問に思うべきだった

自分と交渉していた深海棲艦が空母棲姫であったこと、この館に深海棲艦しか知らない隠し部屋があったこと、不自然なほどに強化されていた館の外壁のこと、自分に渡された指輪のこと

そして、深海棲艦しか知らないはずの隠し部屋に、艦娘が入ってきたこと

 

全てにつながる理由があって

それら全てを見落とした

 

その失敗は、まさしく無能の証明であり

そして、致命的なミスだった

 

「…愚か者には死を」

 

加賀がドレスの中から取り出したデリンジャーは、それに気づくよりも先に発砲され

如苑の脳髄を破壊していた

 

「…わざわざ指輪まで用意したのに

結局指輪に仕込んた位置ポータルキーしか役に立ちませんでしたね…まぁいい」

 

加賀は邪悪な笑みを浮かべて…次の瞬間

崩れ落ちて気絶する

 

そして静寂が部屋を満たした

 


 

一旦は状況を有利に進めつつあったはずの艦娘達、しかし

 

「ダメだ、数は減ってもまた補充されるぞ!」

「…クソ!弾切れだ!」

 

「蒼龍!起きろよ蒼龍!お前帰ったら間宮スペシャル食うんだろ!おい!

起きろよ……何寝てんだよ…」

 

倒せど倒せど倒し切れない

幾ら減らしてもすぐさまに何処からか補充されていく深海棲艦の群れに、戦う術を持たない艦娘と提督達は、徐々に押されつつあった

 

「…すまない、提督」

「うるさい…静かに寝させろよ

オオバヤシ…あとは頼んだぞ…」

 

「木葉提督、城戸提督…すみません

命令は…まもれそうにありません」

「ごめんよ天龍…指輪、なくなっちゃったよ…」

 

徐々に暗くなりゆく情勢に

飲み込まれていく艦娘達

 

そして

「…出られない…!」

 

廻廊の端まで逃れ、

なんとか逃げ切ろうとした若き大佐が、その事実に気付いてしまった

 

艦娘や深海棲艦の砲撃、雷撃すら防ぐ戦闘エリアの境界によって

扉を開けることができないのだ

 

「クソっ!どうなってんだよ!」

「どけ!俺がやるっ!」

 

「なら…窓のガラスは!?」

「無駄だよ…ガラスは全部耐爆、耐熱、耐衝撃、私たちの軍服と同じような強度だ

仮に壊せたとしても体が保たない」

 

そう、この館の設計建築は881研究室の担当だったのだ、高性能軍服と同様

尋常ではない強度を持った装甲化会館、それがこの吹鳴館なのだ

 

戦艦の砲撃を受けても大丈夫!

などというキャッチコピーは伊達ではない

 

「どうしろってんだよ…!」

 

若き大佐の怨嗟はただ塒を巻くばかりだった

 


 

「テートク!」

「おうっ!」

 

金剛と背中を合わせて戦っているわけだが…めっちゃ安心感あるね

長門だとなんか…庇う以前の問題として攻撃とか平然と受けてそうだし

扶桑さんだとそもそも艤装がデカすぎてそういうのできなそうだし

それ以前に耐久性がなさ過ぎる

 

やっぱり金剛型が運用に於いて一番都合がいいって事だな!

(第二次世界大戦並感)

 

「うるさい」

 

戦闘になってから姿を現した妖精

それに頭に乗せたまま、銃に弾を込め直す

 

「テートク、戦闘フィールドは解除できまセンカ?」

「無理、俺にはできない…密室、だよなぁ…」

 

連れてきた妖精達は…流石にそんな特殊技能持ちはいないか

 

「ん、待てよ…」

 

その瞬間、俺の脳裏に電流が走った

 

「金剛、ちょっと耐えてくれ!」

「テートク!?……任務、了解!」

 

急に俺が離れたことに驚きの声を上げた金剛だが、すぐに気を取り直し

高速戦艦としての本来の戦いかたに戻ったのか、敵に突撃していく

 

一方俺は、全力で走り出し

階段を一気に上り切り

二階で開いているはずの換気用の窓を探す

 

「………ないか…っ!」

 

戦火飛び交う戦場において

そんな事をすればひどく目立つ

そして目立つということは…狙われやすいということでもある

 

「目障リナンダヨ!」

「シネェェッ!」

 

執拗に追いかけてくる深海棲艦を躱し

横から殴りかかってきた重巡を受け流してぶつける

 

そのままホールを横断し

館のなかのある部屋を目指す

 

「……よし!」

館としてであろうと、施設には

絶対に存在する、その部屋

 

給湯室

その換気扇を外して

 

「狐春、コン剛!」

内ポケットに隠し持っていた

金剛のリボンと初春の扇

それらに資材エネルギーを注ぎ込み

 

マスコット(ケモッ子)達を召喚する

 

「すまない、コン剛、狐春

護衛退避、できるな?」

 

ひょこっと出てきた妖精は、

艦隊司令部妖精

その機能は護衛退避

数少ない、戦闘フィールドを無視して離脱できる方法だ

 

「鎮守府に戻って、応援の艦娘と金剛の艤装を持ってきてくれ!」

 

「りょうかいデース!」

「わかったのじゃ!」

(いきますよ!)

 

希望の船は旅立った

 

換気扇の煙路から

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。