「行ったか…よし」
二匹のケモッ子の撤退を見届けた俺は
そのまま全力で走ってホールに戻り
持久戦を展開する
「金剛!行けるな!」
「まだまだデース!」
元気のある返事とともに、敵の群れから金剛の姿が覗く
よし、まだいける…っと!
「死ネ…愚カ者!」
「愚かなのはお前だよ」
深海化して、左目から蒼い輝きを漏らしながら、襲いかかってきたタ級の砲を強奪し
「…よぉし…っ!
飛鳥さん!これっ!」
「りょーかい!」
飛鳥さんがドレスの胸元や足元から取り出した工具が奔り、一瞬で鋼材にまで分解される主砲
そして
「15.2センチ連装砲完成だ!」
足元に向かって投げつけられたその砲は、ちょうどその方向にいた熊野に華麗にかわされ
三隈が受け取ると同時に発砲
正面にいた深海棲艦の武装を破壊する
「こんなものかな…」
「くまりんこ!」
意味不明な叫びとともに放たれる砲撃
しかし、流石に艤装コアなしの彼女達では、一、二発が限界のようで
それ以上は弾が続かない
「仕方ない…ですわ!熊野!」
「はいっ!」
所属は違えど同型艦か、正確に投擲された主砲を受け取った熊野は
これも見事に正確な砲撃を放つ
「確かに受け取りましたわ!」
ダァン!という低い音とともに、軽巡が沈んでいく…艤装コアである深海呪華に直撃したのだ
「!クリティカルですわ!」
「いってる暇ないって!」
砲を次々に受渡し、殲滅速度を上げた艦娘側と、それに対応すべくさらに召喚される深海側
情勢は天秤のように揺らぐ
そして
「鍵が、あるはずだ」
気付きを得たものがいた
「深海棲艦がなんでもありだからって、突然陸上のあるポイントに召喚されるなんてのは流石におかしい!召喚されるべき理由があるはずだ
それこそ、座標をマークできるピンみたいなものがあるはずだ!」
どこかで、誰かの声がした
「どこかにピンがあるはずだ!それを探さなくては!」「それを破壊すれば、転送は終わる!」
叫ぶ青年の背後から
ほのかに漂う、梔子の香
それに気づいた時は、手遅れだった
「目敏いですね、ですが…
死んでもらいます」
「!?」
そこにいたのは、航空母艦
空母棲姫
「なにいっ!?」
無言で一撃を放ち、未来ある青年の頭蓋に閉じ込められていた叡智を解き放ってやるその瞬間
爆轟と共に、艤装がはじかれる
「やらせはしない…その人は!
菅野提督は!私の提督だぁぁっ!」
叫んだのは、戦艦 山城
撃てるだけ撃って弾を使い尽くした砲を放り投げ、後続に渡して
そのまま突撃して殴り掛かった
「練兵ガ足リナイワネ、出直シナサイ」
「なっ…このぉっ!」
普段の口調などどこへやら
いままで一度たりとも出さなかった全力全霊を使ってまでの突撃は
しかし、ふわりといなされた
「ソンナニコノ人ガオ好キナラ
一緒ニ死ニナサイ」
「山城!」「あぐぅっ!」
自分の勢いごと壁に叩きつけられた山城に、艤装そのものの質量攻撃が迫り
そして、その身を打ち据えた
「山城ぉぉぉっ!」
「貴方ニ心配ナンテスル時間ハナイワ」「お前もな」
あるだけの弾を撃ち尽くす
生身の部分に向かって、正確に照準し、一撃一撃を丁寧に、全く同じ箇所に集中して狙い撃つ
「持ってけ16連射だ!」
「ソンナ事ヲシテモ無駄ヨ?
大人シク私ノモノニナリナサイ」
全弾を撃ち尽くす連射を叩き込む
空母の装甲に対して9mmパラベラムがいかに非力でも、構うことなどない
できることを、全力で成す
それだけだ
球数を気にしなくていい刃物があればいいんだがな…まぁ、人間ならともかく鋼鉄の硬度を持つ軍艦相手に包丁がなんの役に立つか
と言ったところだが
弾切れの銃よりはマシだろうか
「来ナイナラ…コッチカラ!」
「っ!」
宣言と同時に、襲いかかってくる空母棲姫
やはり、この動きは姉さんと同じ
「何をどうやって…その体を乗っとった!」
「ベツニ?…タダ私ノホウガ主体性ガ強イダケヨ」
拳を受け止め、ねじ切るように捻り上げながら問うが、やはり
痛みなど無いかのような平然とした笑みが返ってきた
「サァ、イラッシャイ
私ノ世界へ」
濁った海、暗い空
何も起こらず、何も許されない
「姉さん」
「なぁに?そら」
「…もうやめろ、これ以上被害を広げるなら、俺がお前を殺す事になる」
「出来なかったのに?
それにもう、今更遅いわ…ここにきた時点で、そらはもう私の手の中にある」
世界法則が変動する
その前兆を感知した俺は
全力で加速して、姉さんに掴み掛かる
しかし
「見えない壁、あるかしら?」
ガキィィッという音と共に
謎の壁に弾かれた
「突破方は…っ!」
「教えてあげない」
虚空から取り出された
巨大な砲が、俺に向けられる
「私のものにナリナサイ」
「無理、だって姉さんは…我儘が過ぎる!」
魂の中だからこそ
多少の無理は効く
俺は自分の魂からエネルギーを出して
撫子を召喚し、砲弾を切断破壊する
「言うことを聞いてよ!」
「聞いてどうなるってんだよ!」
不利なフィールドではあるが
それを苦にするようでは川内が泣く
散々魂の中で模擬戦をしていたのだ
実戦でもそう簡単に負けてはやらない
「所詮カケラの魂では
このフィールドで私には勝てない
大丈夫よ、一生、ずっと一緒にいてあげる」
「すまないが…それはお断りだ」
出現したワイヤーを切り、弾を斬り
姉さんの投げる剣を叩き落とし
ひたすらに迎撃する
しかし、俺の攻撃は届かない
「クソ!なんだよこの壁!法則が掴めねぇ」
「教えてあげるわ…
その壁は、心の壁、あなたが私に対して持っている、隔意が形になったものよ」
「…そういうことかよ」
つまり、姉さんは俺を攻撃できて
俺が姉さんを攻撃できないのは
俺が姉さんを敵として見ていて、姉さんが俺を敵視していないから
…クソ、手詰まりだ
「理解できた?…諦めなさいな」
「そう簡単に諦めるわけにはいかない!」
吼えると同時に
世界にヒビが入る
「な…なに」
「俺が攻撃できないなら、
俺は俺以外の手段を使う!」
ひび割れた世界に、声が響く
そして
「手段なんてひどい呼び方、しないでよね」
顕現したのは瑞鶴
「さぁ、一航戦、加賀!勝負よ!」
「五航戦…瑞鶴、来たのね
海を裏切った半端者!」
向かい合う瑞鶴と姉さん
火花は火口へ、種火は放たれた
600話記念番外編は
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過去編軍学校
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過去編深海勢
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……