戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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Transient prayer

プラズマ化した百光が

俺の腕を焼き尽くし、消し炭になってしまった腕を再生するでもなく

強引に圧を加え続ける

 

その最中

 

どこかで、何かが砕ける音がした

 

 

「ぁ………」

「蒼羅ぁぁっ!」

 

急速に視界が暗くなる

 

 

駆け寄って来た瑞鶴の声が聞こえない

 

これは…まずいかな……

 

side change

蒼羅side out

 

瑞鶴side in

 

「提督さんっ!」

 

提督さんの体が、魂が

存在を証明する意思が、砕けていく

 

死なないはずの提督さんが

死ぬ事ができないはずの提督さんが

砕けて消えていく

 

「ダメぇぇぇぇっ!」

 

その叫びは、どちらが上げたものだろうか

そんなことはどうでもいい

 

「何か手は…!」

「ない!魂が壊れてしまった以上

それを回復できる手段なんてないの!」

 

さっきまで艦載機をぶつけ合っていたなんて誰が信じるのだろうか

倒れた提督さんに二人して駆け寄った私達は

敵意をぶつける余裕すらなく

その状態を確認して

「…そんな……いや…」

ヒビと裂傷、そして重度の火傷によって傷だらけになった体を抱きしめる

 

「居なくならないで…そら!」

「提督さん!」

 

必死に呼びかけながら

頭のどこかでは

もういいんじゃないかなって思ってる

 

自分の意志で戦って、魂を砕いて

こんなにボロボロになって

それでも死ねないなんて悲しすぎる

 

もう、自由になっていいのかもしれない

無理をしなくて良いのかもしれない

 

「提督さん……」

 

自然と、涙が溢れる

どうしようもない感情があふれて

みっともなく縋り付きたくなる

 

でも、それはもうできない

 

縋るべき相手は、もういないから

 

「…」

「そら、勝手に居なくなるなんて…

許せないわ」

 

「だから…起きてよ……また

前みたいに、笑ってよ…!」

 

いつも冷静だった加賀の声が揺らぐ

 

そして、

加賀さんと私の腕の中から

提督さんの欠片が飛散して…消えてしまう

 

「魂の負荷が高すぎたんだ…そのせいで

もとから壊れてた寄せ集めの魂が、バラバラに散らばっちゃった…」

「拾い集める事は…出来そうにない」

 

「なに言ってるのよ…やるに決まってるでしょ!」

 

死を持たない提督さんの魂は

砕けても停止するだけ

形を取り戻せば再起動できる

 

魂を、生物最後の秘蹟をモノのように扱うのは嫌だけれど、それしか希望はない

 

「提督さんに繋がる魂の糸、絆を集める、応急修理女神と同じだよ!」

「形を取り戻せば…

そらを…生き返らせることが出来るの?」

 

「えぇ、その辺については知悉してるわ、それを回復する手段も、ね

以前に私は、提督さんの魂に掛かる物凄い負荷をなんとかしようとして

艦娘のみんなを沈めて、縁を切ろうとした

でも、それじゃあいけなかった

私は失敗したわ

 

…だから、代償を支払う事になった

提督さんは死を自ら放棄して、私と、私に巣食った無数の呪詛を殺して

私は提督さんの砕けた魂を集めて

私と同化した」

 

「まさか」

「そう、でもこの魂の同化は

私と提督さんの波長が近かったこと、私の魂自体が変異する中途であったこと

深海の呪詛が提督さんと共鳴したこと

なにより提督さんの魂が砕ける時、私が即座に回収できたことが原因なの」

 

顔面蒼白な加賀さんの手を強く握る

「今度は、加賀さん、貴女がやるのよ」

 

「……えぇ、わかりました

絆を集めて、蒼羅の魂を再構成する

……やります」

 

魂の中では外界と時間流が違う

だから、外と中よ境界線に魂のかけらが流失してしまったら、その時点で回収不可能となってしまう

既に崩れて散ってしまった無数のかけらを、一つ一つ、丁寧に拾い集めなくてはならない

 

欠けてしまった魂は

それこそ二度と戻らないから

 

「私なら…!」

 

加賀さんは魂のなかから

記憶を引き出し、それを糸へと変える

 

「蒼羅のことを、

だれよりも前から知っているから…!」

 

記憶の糸は思考を紡ぎ

かけらを繋ぎ合わせていく

 

しかし、やはりというべきか

 

「足りない、わ」

 

「なら…私の魂から、提督さんに繋がる部分を抽出するわ」

 

 

今度は私が、思い出の糸で

欠片達を繋いでいく

 

「だめ…私たちだけじゃ、足りない!」

「このままでは…」

 

魂のかけらが流失してしまう

それだけは、避けなくてはならない

 

焦る私達に、一筋の光明が差した

 

「軽巡、川内!参上っ!…あれ?

提督は?」

「ごめん川内、ちょっと力を貸して!」「どういうこと?」

 

即座に、それを察した川内に

通り一遍の説明だけをして、力をかしてもらう

 

「わかった、私と提督との思い出が、提督を呼び戻すために使えるなら!」

 

川内の糸が、さらに欠片を集め、重ね、少しずつ元の形を取り戻していく

 

「私だって…伊達に提督との一緒にいたわけじゃないもん!」

「ありがとう、瑞鶴、川内」

 

「「アンタのためじゃない!」」

 

二人の声が重なる

そして

 

「ふっ…そうね、私のためじゃない

蒼羅を取り戻すためだものね」

「そう!あくまで提督さんの為なんだから!」

 

そして、欠片を集め

記憶と絆を紡ぎ、魂を再構築して

 

「帰ってきて…蒼羅!」

「提督さん!」「提督っ!」

 

ひび割れた彼の魂に、あるべき形を取り戻した

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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