戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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double standard

「もう来たから」

 

その言葉の直後に

衝撃と共にバリアが破壊され、消滅する

 

よし、小春とコン剛がやってくれたな

 

「提督っ!」

「司令官ー!」

 

バン!と扉を開けた吹雪が

天龍、長門と共に突撃して来た

 

「大丈夫か?提督」

 

「…あぁ大丈夫、コン剛から救援要請を受けてくれたのか?」

「…?金剛?いや、私達は鎮守府から提督の異変を感じ取って来たのだが?」

 

「そうか…じゃあコン剛達は無駄足になっちゃったかな…まぁ仕方ないね

それより今は、深海棲艦が湧き出て来ているんで、その対処をお願いするよ」

 

「了解した、それくらいなら

今の状態でも可能だ」

 

長門がホールに向かい、それと同時に駆け込んできた吹雪に転送装置のポータルである拾った指輪を渡すと、その指輪を破壊してくれた

おそらくこれでもう深海棲艦が増えることはない

 

そして、艤装を装備した艦娘は犠牲装甲によって、被弾を恐れる事なく攻撃できる

 

「いくぞ!諸兄らは離れていろ!」

「特型駆逐艦、吹雪!突撃します!」

「行くぜ行くぜ行くぜぇっ!」

 

一人だけ鬼がいたが、気にすることはない

 

「さぁ、提督、道中お送りいまします」

「…いや、まだだ、俺はアレらを殲滅するまで、ここに残る

 

第一、俺たちが逃げたら、ドロップ艦娘達を誰が迎えてやるのさ」

 

その言葉に、何かの衝撃でも受けたような顔になる赤城

 

「…だからといって、提督が流れ弾でも受けたらそのドロップ艦娘だった悲しむと思います

提督はできるだけ危険を避けなくては」

 

「そうだな…俺が死ぬ展開は避けられないとしても、できるだけ先であった方が良いだろうし…あぁ」

 

「では、一旦下がりますよ」

「待った、それより先に、やるべきことがある!」

 

俺は赤城と共に、ホールに向かい

 

その隅に倒れていた加賀を拾い

他にもいるドロップしたと思われる艦娘や、負傷している提督、艦娘達を少しでも安全な場所に運ぶように指示をだす

 

「どのみち味方を気にしていては火力を出せない、今最優先で行うべきは

味方への誤射を防ぐことだ」

 

体は十分な状態ではない

相変わらず身体の再構成もできない

深海の力も使えない、俺自身の魂からもどこにもアクセスできない

どころか瑞鶴の接続すら消えてしまった

 

だが、その程度で諦められない

ここにはこの世界の未来があるのだ

日本海軍の重鎮達が死ねば、必ず軍の体制は揺らぐ

 

それは下にも波及し、警戒網に大きく隙を作るだろう、そしてその隙は

深海棲艦にとって、格好の狙い目となる

 

そうなったら…第二次深海大戦が起こる

 

「こんどは…艦娘達も、深海棲艦も、かつてとは比べ物にならないほどに進んでいる

被害も、より大きくなってしまう

沿岸地域の放棄程度では済まない

より大きな被害が…出てしまう」

 

それだけは、避けなくてはならない

 

その一言を飲み込み

抱えた加賀と共に移動し、ひとまず館の外に出る

 

「…よし、殲滅戦だ」

 

再び館に入って、できる限りの艦娘、提督を運び出した後、俺はそう宣言する

 

「提督!」

「なぜ来たんです!?」

 

比叡と大和の驚愕の声

 

「………………」

 

「提督っ!」

 

大和の再びの呼びかけにも、俺は答えない

応じる言葉などないからだ

 

そして、そのまま

来る途中で隠し部屋から拾った

意思のない加賀の体を放り捨てる

魂を姉さんに塗りつぶされた結果肉体だけが残った骸、これにはもはや『加賀』としての機能も、艤装も、どころか魂すら存在しない、ただの骸だ

 

「本当に何やってんですか!」

 

普段はたとえ意識がなくても丁寧に扱う艦娘を、俺が乱雑に捨てた瞬間を目の当たりにした大和は、混乱のあまりに叫ぶ

 

「別に、俺は俺の望むことをした

それだけだよ」

 

もはや霊力の宿らない拳銃はすでに空

役に立たない銃を投げ捨て

俺は笑った

 

「これでいい」

 

砲撃に不発弾でもあったのか

館に火の手が上がる

 

姉さんの関与した証拠は全て消さなくてはならない、遺体も回収してあるとはいえ

指輪そのものを証拠として押し付けるだけではやはり確証にはならない

あの准将に責任を押し付けるためには

現物として存在する証拠全てを消し去る必要がある

 

具体的には、姉さんが使っていた『リンガの加賀』の体、姉さんが現地に『空母棲姫』として転送されて来た事実と、同じように転送されて来た深海棲艦、そしてこの館そのもの

 

その全てを確実に抹消するためには

俺が現場に残って工作を続けざるを得ない

 

なにせ川内や瑞鶴の支援も

姉さんとの魂の接続もない

俺一人でやるしかないのだから

 

火が上がったのは想定外だが

むしろ好都合だ

 

「手間が省けたな…

総員撤退だ、このあとは俺がやる」

 

後半は声を張って、思いっきり見栄を張る

少しでもボロを出せば芋蔓だ

 

ここは思いっきり頑張って、ハリボテをすこしでもマトモに見せなくては

 

「……」

 

頭の中で作戦を考えつつ、用意を整える

 

そして

「提督はどうするんだ?!」

「俺…?まぁ、この深海棲艦を処理できたら帰るわ」「そんな確実性のない話ではない!」

 

おいおい、長門なんでこんな時だけ勘が効くんだよ

 

「…するべきことが、あるからな」

「それは、私達では出来ないことなのか?」

 

相手をしているのは軽巡のフラグシップ、いかに長門といえど改もなしに渡り合うのは至難の技であろうが、それをたやすくいなしながら、長門が問いかけてくる

 

「あぁ、お前達の手には負えない

俺がするべきことだよ」

 

そう、俺が、やるべきだ

元を正せば俺の身内が出した問題

俺以外に波及する事はない

 

それに、これは汚れ仕事だ

艦娘なさせるようなことではない

艦娘の手は、綺麗でなくてはならない

汚れるのは俺たちだけでいい

 

硝煙や鉄錆に塗れるだけじゃない

汚い仕事をするのだから

 

せめてこれだけは、俺がやる

 

せっかく普段とは違って黒い格好なんだ、多少汚れても目立たないさ

 

「そうか…ならば深くは問わない

だが、その背に、何か負うものがある事は分かった」

 

「司令! ここは   !」

比叡の声が、より一層強くなった炎によって遮られる

 

「テートク!何してるデース!」

「金剛?!」

 

ホールから回廊に出て来たのは

金剛

 

ドレスだった金剛は、誰かの血やら、戦場の煤やらで酷く汚れていたが

その美は損なわれてはいない

 

「早く撤退するネ!」

「いや、やるべき事が、だな」

 

「バカ提督っ!」

 

ゴン!という音が聞こえて

それにすこし遅れて、痛みがやってくる

 

「っ!…何しやがる!」

「何するつもりかなんて見れば分かりマス!大型深海棲艦の連中の策略を隠蔽するつもりデショウ?保身に走って何になるノ!?

それにテートクがするべき事はこんな館なんかで死ぬような事じゃないネ

縁が切れたとき…どれだけ心配したと…思ってるでーす…」

 

食ってかかろうとした、その時

凄まじい剣幕で反論される

しかも俺の目的さえ一瞬で看破されていた

 

「…すまん、金剛」

「許さない…絶対許さないんだからぁぁっ!」

 

俺にすがりついて泣く金剛

もはやどうすればいいかもわからない現状に嘆息する俺と、そんな余裕すら許さない炎

 

「建屋に火が回って来た、そろそろ脱出しないと危険だぞ、金剛」

「テートクと一緒にじゃなきゃ嫌」

「あ、提督っ!こんなところに!

金剛さん?……急いで出なきゃ!」

 

「金剛さん、撤退しますよ…満足ではないけれど、この赤城が援護します」

 

「…はぁ…」

 

仕方ない

 

「金剛、長門、天龍、吹雪、鹿島、明石、蒼龍、赤城、お前ら…地獄に落ちる覚悟しろよ」

 

「…なんか巻き込まれてますけど」

「うるさい工作艦、お前も地獄行きだ」

 

「地…地獄なんて行きたくないです」

「見ちまったからには仕方ない

悪い子になっちまったな、吹雪」

 

それぞれ何か言っているようだが

大半は一致したようだ

 

「…よし!もう時間がない、俺指示出すからよろしく!

加賀の遺体はここで焼却、残念だけど弔ってる暇はない…今居る深海棲艦全員倒すぞ!

臨時艦隊を編成、構成は旗艦長門以下、比叡、蒼龍、赤城、天龍、吹雪以上!

建屋の損害は気にするな

後で詳しく説明してやるから今は無駄なこと考えるなよ!」

 

《了解!》

 

火が周り切る前に、決着をつけよう

 

「臨時艦隊、総員抜錨!」

《応!》




大和「ナズェキタンデェス!?」
大和「オンドゥルナニシテンデスカー!」

提督「館が保っているうちに、決着をつけましょう」

いかん、何視聴てたかバレてしまう…

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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