戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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ash and dust

少し時間は戻り

 

「さて、と…お仕事も終わったし

これで深海棲艦も終わりだ、

……随分派手に燃えちまってんな」

 

「あー…たしかに、これはダッシュじゃ抜けられない、かもなぁ」

知らぬ間に火が随分と回っていたらしく、絶賛炎上中の回廊を抜けるのは現実的とは言えないだろう

 

「だが、そんなら…」

 

俺は火の手が上がる前に、走り回ったホールの中で、片面がガラスの大窓になっている西の壁に近づく

 

庭につながる大窓を開けて

「…クソ、マジかよ、熱で変形してやがるのか?」

 

開けようとして、全く動かず

ぼやいた瞬間

 

背後から声が聞こえた

 

「しれーっ!しれーっ!!」

 

…時津風か

だがウチの鎮守府に時津風はいない

救助された提督達の艦娘なのか?

俺以外にも応援を呼んでくれた提督がいたとは驚きだが、それ以前にまず

燃える建物の中に突入する勇気を出せるとは珍しい

 

「…いや、まぁここは崩れる心配はないからなぁ」

 

どれだけ燃えようと芯材となっている壁は強固であり、耐破壊性が強い

崩れる心配は無用だろう

 

「しれーっ!」

 

向こうで叫んでいる時津風に

それを教えてやるべきだろうか?

 

「しれー!」

 

屋根や壁、燃えている部分もお構いなしに蹴り付けて、空中を走ってくる時津風

 

いやお前、そんな無茶をしたら

 

「しれーっ!!」

 

ぼふん、という音と共に

俺の方に飛び込んできた時津風

 

「うぉっ、時津風か…」

 

…ん?

 

 

「お前もしかして、創海鎮守府の憲兵になった時津風…か?」「はい!」

 

ぴょん!と飛んで笑うトッキー

その表情は明るい

 

「お前、艤装もなしにどうやって

それに憲兵だろう?!」

 

「私は憲兵ですが、鎮守府の風紀綱正を担うという大義名分があるので

堂々とついてきました、それに

外装強化型の改造艦娘は凄いんですよ?」

 

自分の足をチラリと見る、その視線に気付いた俺は、逆に目を逸らした

 

「お前…」

「はい、私は足を改造されたせいでもう海を走れない、でもそのかわり

陸上でなら、だれよりも早く走れます

それに…みんな来ているんですから

私だけ行かないなんて嫌です」

 

ぎゅうっ、と抱きつかれる

…犯罪にならないか?この絵面、そんで

 

「羨ましければ吹雪にやってもらえ」

「!べ、別に羨ましくなど…」

 

「長門、無理をするな…それより

早く脱出するぞ…トッキー、移動ルートは?」

「しれーを、探してた時に走り回ったせいでよくわからないです

それに炎の中を抜けるのは私か提督ならまだしも、通常の艦娘では危険ですよ?」

 

「…うん、じゃあこうしよう」

 

俺は助走を大きく取り、

「ぜぁらぁぁっ!」

対弾対電対刃対衝強化ガラスを蹴り飛ばす

 

扉の枠が大きな音を立てる

「もうちょいだな…っと!」

 

天井の留め金が熱に耐えかねたのか、ガシャァァアン!という音と共に突然落ちてきたシャンデリア、そのの真下にいた金剛を抱き寄せ

 

「すまんな」

 

彼女を抱き抱えたまま

 

「でりぁぁあっ!」

 

ガラスを蹴り飛ばして、ついに扉の枠が外れ、勢いのままに体ごと飛び出る

 

「ぷ…はぁ…よし、オーケー…

お前ら、何で来たんだよ」

 

真剣に問うと、愛宕は一瞬身を固めて

 

「提督の魂の接続が急に切れたせいで、いてもたってもいられなくなっちゃって

………きちゃった♡」

 

すぐに茶化してきた

 

 

「……まぁ、いい

心配させてしまったからな」

 

取り敢えず一旦は不問として

まずは燃える館を離れることを優先する

 

「特に愛宕と霞、お前たちは感覚器官強化型なんだから、無理をしちゃいけない

摩耶もな?」

 

「しれー…」

「時津風はよく頑張ってくれたね

でも無理に燃えてる中に入るのは危ないから、できればやめておこうね?」

 

そっと頭を撫でて、一緒に館を離れる

ごうごうと燃えている館は

…原型自体は残っているが、もはや館としての再利用は難しいだろう

 

「来て早々で悪いが、一旦退くぞ

少し目立ちすぎた」

 

「提督は暴れまわってたからな!」

「暴れまわってなんていないぞ

むしろ金剛に前線を任せて指揮に専念していた、これぞ指揮官の本領ってやつだよ」

 

「どの口が言うか全く」

 

ハイテンションな天龍の言葉に、事実で答えた直後に摩耶に突っ込まれる

「そんなんこの口にきまっいてててて」

 

「嘘をつくような悪い口はらいらないよなぁ?」

 

グイグイ引っ張られる痛みで涙目である

やめて、俺今脱水症状気味なの

熱中症的な初期症状でてるの

さらに水分を奪ったりしたらダメだ

 

「摩耶、やめなさいな」

 

幸いにも俺の状態を察してくれたのか、愛宕が摩耶を止めてくれた

 

「ありがとう愛宕

…取り敢えず、自販機とか…あ」

 

財布、鎮守府(いえ)だ……

 

「やべ、財布置いてきた

いや、あの中じゃないから大丈夫

鎮守府だから…うん」

 

どっかで水を飲みたいところだ

流石に熱気に晒され続けるのは辛い

 

「テートク、そろそろ下ろして欲しいネ」

「……ん?…あぁすまん」

 

ずっと抱えていた金剛を下ろす

 

「…なんか向こうで騒いでるし

ちょっと行ってくるよ、みんなは待機」

 

「了解」「ワタシはついて行きマス」

 

そっと手を引いて金剛を連れ

あくまでも当事者ではない第三者を装いつつ、群れに合流する

「………」

 

喧々轟々とまた騒がしいことだが

どうにも責任の押し付け合いやら足の引き合いやらをやっているようにしか聞こえない

 

…下らない…だが

この場にいないというのは問題だ

死人に口無し、現場に居ない人には拒否権はないのだ、いくらでも責任を押し付けられる

 

というわけで、取り敢えず混ざり込む

 

そして、まぁ下らない時間を過ごすことになった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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