何処かへ行った川内を追いかけるべく
執務室を出た俺だが…やはりというかなんというか、すぐに見失ってしまった
「………はぁ」
どうしようもない事だ
そう簡単に川内達が退役できれば苦労はしない、解体したら死亡する未来のない艦娘
それはいずれ避け得なくなる死への道
解体そのものが自殺行為
戦闘の継続は死線の連続
全く、
用量超過とはよく言うものだ
深海棲艦と同じ、戦いに縛られた者達
それが過剰適合の艦娘達
闘うことに適合しすぎて、人の道を踏み外した存在なのだから
「…適合率を人為的に上げる薬物はあった…だが、アレは881研のセクション7が残したブツ、一度使ったが最後、どうあがいても絶望だ」
そう、881研が作っていた『connect』と称される薬物は、艦と人に人工的な適合をもたらす
それをもってすれば通常では戦力として扱えないほどに適合率の低い人間でも、一時的に強制適合することが可能になる
だが、もちろんそんな夢のような薬、裏の一つもないはずがない
『使えば戦力を向上できる』
そんな売り文句につられてしまった艦娘はこぞってそれを使い
そしてものの見事に依存した
覚醒剤に代表されるアッパー系の薬物のように、一時的に脳機能を拡張し
人間側を艦側に寄せて調整する薬
それを用いた結果、使用中の全能感と性能向上に魅せられてしまった艦娘は次第にそれを乱用するようになり
副次効果として現れるエンドルフィン・ドーパミン・アドレナリンの大量放出も相まって
神経に負荷が蓄積し、攻撃的になり
そして思慮を失い、やがてはconnectがなくては字も書けなくなるという
『最悪の薬物』だ
それに使えば使うほどに耐性がつき、さらには人間側に現れる異常のせいで艤装適合率がさらに下がる
実験の記録でそれを打たれていた朝潮は最初、駆逐艦とは思えないほどの速度・火力・命中精度で凄まじいスコアを叩き出したものの、数カ月で能力が落ち、2年が経つ頃には艤装の装着すらできなくなって、最後は常態的に血を吐くようになり、失明したりと機能障害を起こして、やがては多臓器不全になって死んだという
そんなモノの使用を数年と言わずとも長期的に続ければ艦娘としての活動は不可能になるだけではなく、たとえ生きていても解体された後までconnectを求めるヤク中浮浪者じみた少女が発生してしまうわけだ
もちろんconnectは艤装適合率を上げる薬であり、艤装のない解体済みの元艦娘に使ってもなんの意味もないどころか体を壊すだけだ
「…逆に、人工的に適合率を下げる薬なら、どうかな…」
ダウナー系の薬物のように
艤装の機能を縮小、弱化し
艦娘を弱らせる薬にすれば
逆に適合率を下げられるかもしれない
艦側の魂を人側に寄せる
そうすれば川内を安全に解体できるかもしれない
………いや、何を考えている俺は
そんな薬物を川内に使おうだなんて、あってはならない思考だろうが!
やっぱり一人だと良い発想は出ない
考え込んでいると、いつもいい笑顔で方策をくれた川内も、ぶつくさと文句を言いながらも一緒に考えてくれた瑞鶴も、五月雨も相談に乗ってくれた陸奥も、大和ももう居ないのだ
もはや魂の接続を失った俺に
提督たる資格はない
しかし、うかつに退役すれば川内は自殺する、現状をこのまま放っておいても
いずれは深海棲艦が艦娘の弱体化に気付いて総攻撃を仕掛けてくる
そうなったら改二や高ランク装備に頼ることのできない俺達は敗北の一途を辿ることになる
やはり、どちらに行っても道はない
まさに八方塞がりといった所だ
「…どうする……」
「提督?」
「………どう…ん?」
考え込んでいると、すれ違ったらしい不知火に声をかけられた
「どうかしたのですか?何やら深刻なお顔のようでしたが」
「不知火、か…うん、実は俺、引退を考えているんだけどさ、それを相談しようとしたら、川内がどこかに走り去ってしまったんだ
川内がどこに行ったか分かるかな?」
「…はい、川内さんなら
向こうに行きましたよ?」
指示されたのは、医務室の方
「うん、わかった」
「待ってください」
さっと示された方に向かおうとすると
すぐに声をかけられた
「私も行きます」
そう、なぜか不知火がついてきたのだ
「…まぁ、着いてくる分にはいいか」
「はい、着いて行きます」
俺の歩いているポイントの丁度
1メートル後ろから歩いてくる不知火
鳥の雛のようで…なんか可愛い
「さて…」
川内を探して三千里、かね
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