「不知火、後で陽炎型を集めてくれ」
「わかりました、現在鎮守府に居る陽炎型を呼び出し、16:00に執務室に集合させます」
「おう、無理するなよ?」
「はい、了解しています」
歩いて行った不知火から離れ
俺は朝遠征に出ていた艦隊、そして朝遠征枠だったとある艦娘を迎えに海辺へと向かった
「…お帰り、龍田、千歳、睦月、卯月、弥生」
「ただいま帰りました〜」
旗艦だった龍田が遠征班の帰投を宣言し
ドックまで各自向かって解散する6人
経験の浅い千歳に近くの海域を探らせ、海域や海底地形、資材や渦潮などの発生ポイントを覚えてもらおうというのが趣旨であり
遠征慣れした睦月型が後衛、実務輸送役となり、龍田がコースを先導する
護衛兼輸送兼先導という
合理的な陣形を組んでいたわけだ
「さて、龍田…ちょっとお願いがあるんだ」
「なんですか?」
「いや大したことじゃなくてさ
気付いてるよな?」
「………提督の体の事かしら〜?」
それとも…魂の事かしら?」
「後者だ」
相変わらず察しの良い龍田に
神妙な顔で見つめられながら
俺は答えを提示する
「まず、前提としてこの前のパーティ、深海棲艦の攻撃に遭った、その際に俺の魂にまで侵入してきた侵食タイプの深海棲艦を撃破するために
俺自身の魂を崩壊させて、自壊した魂を外部から再構成した」
嘘は言っていない、が
事情を知るものが聞けば大嘘と断定するくらいは事実から乖離している情報を
「その影響として、一時的なのか、それとも永続的なのかは分からないが
魂の力が大きく減退していて、艦娘との縁も全部切れてしまっている
一部艦娘はその影響を既に悟っているようだが、このままでは艦隊の弱体化が敵に露呈してしまう、それは危険だということで、艦隊指揮に適任の人物に提督の座を譲ることを考えている」
今度は簡潔に事実だけを伝えて
「だが、それを川内に伝えたら『提督が辞めるなら自分も辞める』と言い出してな
知っての通り、
いま探していたんだが、もうあらかたの場所は探したから、おそらく軽巡の寮に隠れていると思ってね」
最後に本命のポイントを出した
それを察したらしい龍田は笑顔で
「分かったわ〜私が入れてあげる、だ・け・ど〜天龍ちゃんにはイタズラしちゃダメよ〜?」
「しないよ、流石にしない
そんなにふざけている余裕はないんだ
…この件にカタがついたら俺は提督を引退する、鎮守府を引継いだ後のために、川内という強力な艦娘をみすみす失うわけには行かないんだ
幾ら本人が望んだとしても」
深刻な表情を見て察したのか
ふざけた口調が消え、真面目な一面が顔を出す龍田
「大丈夫、分かっているわ
川内型の部屋と、それからめぼしいポイントを探すのよね?」
「その通りだ、よろしく頼む」
「頼まれます」
艤装を解除した龍田に手を借りて軽巡寮に入り、龍田と一緒に川内型の部屋に行く
軽巡型の寮長艦娘はイマイチ決まっていないため、龍田に手を借りたが、本来は寮長艦娘に入寮許可をもらうのが必須である
「…失礼する」
「失礼しま〜す」
ガチャバンとばかりに扉を開けた俺は
一気に室内に侵入し、
「川内は居るか?」
「な、那珂ちゃんだよ〜?」
キャピ!と言わんばかりのポーズをとる那珂に問いただすと、やはり
「川内!」
「ひうっ!?」
怯えたような顔の川内が部屋の奥に隠れていたのを発見した
「川内」
「ひゅ…」
「……逃げるな、別に詰るわけでもない」
それを聞いてようやく無駄な試みをやめた川内、その手を取って、真っ直ぐに目を見つめる
「いいか、川内
俺はお前の方が好きだ、だからお前をむざむざと失いたくはない」
「…!」
「川内、俺はお前を失わないために、お前を解体する事はできない
どうか、分かってくれ」
「提督…!」
目を逸らしていた川内も、ようやく
俺の目を見てくれた
「逃がさないぞ、川内、俺が居る限り
お前を逃しはしない」
川内を抱きしめて、ゼロレンジから最後の一撃を叩き込む
「こんな風に言いたくはなかったがな」
「提督ぅ…」
川内が身を寄せてきて、
屈んだ俺に手を回す
俺もそれに応えて抱きしめるように腕を伸ばして…
「あらあら〜?」
「…ちょっ…」
龍田と那珂がこっちをガン見しているのに気付くのだった
「「…はぁ……」」
完全に雰囲気が粉砕されてしまった川内と、恥を覚悟でブチかました過去最大の誤魔化しが完全に無意味と化した俺の声はシンクロした
「川内はちょっと執務室にこい、
龍田、那珂」
「は〜い?」「なぁに?」
二人の気の抜けた返事に
特に頓着はせずに告げる
「迷惑をかけたな、ありがとう」
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