戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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インヘリット

「はい…提督」

 

手を引いて、そっと神通を立たせる

そして

 

「もう時間だな、限界が来た」

 

突如として出現したベルトから燐光が放たれ、その限界時間を知らせる

 

「提督、それは?」

「だから言ったろ?お前が戻って来てから、話を始めよう」

 

空中に手をかざして、外に出ようとする

その瞬間

 

「提督っ!」

 

背後から、怖気の震うような気配がした

 

咄嗟に神通と共に飛び、体を動かす

 

そこには、機関室にて死んでいた骸のうち何体かがあった…いや、その表現は正確ではないだろう

 

正確に言うのならば

居た、だ

さらにそれは、明確に死体でありながら

動いていた

 

「…クソっ!」

 

掴みかかって来たその死体に

蹴りをたたき込み、吹き飛ばす

 

「神通、これはお前に宿った無念や怨嗟の声じゃない」

 

弾を変えた拳銃で実弾を撃ち

頭を撃ち抜く

 

「これはお前の、自責そのもの」

 

拳で死体を押し返し、秋雲の整った顔を血に汚しながら蹴り倒す

 

「…所詮命も、魂もないただの残滓

俺でも倒せる」

 

限界が高い、ベルトの燐光は激しさを増し

それが点滅音すらはじまる

 

「…だから神通、お前はこんな連中に今更捕まることはない」

 

拳銃を連射して、

摩耶や天津風の足を射抜く

弓を持ち出した赤城の弦を切り

その足で顎に膝蹴りを喰らわせる

 

「ここの連中は俺が引き受ける」

「でも!」

 

「なぁに」

 

刀を抜いた天龍からそれを奪い

袈裟に斬り捨てる

 

「こう言うのはいつだって、責任者の仕事だ」

 

その言葉を最後に

そっと神通の背中を押す

 

「さぁ、お前は幸せになりなさい

ここは俺に任せろ!」

 

トン、という音と共に、神通の体が消える

意識が浮上したのか、

 

それを確認した直後、俺は

 

「必殺っ!」

 

恥も外聞も捨てて叫び、

ベルトのギミックを作動させる

 

〈full drive …shining burst!〉

 

なにやら必殺技らしき音声が鳴ると同時に

四本の探照灯が空中に仮想展開し、そして起動、点灯する

 

その探照灯は、ただの光ではなく

極太ビームを発射して

前方の広範囲を焼灼した

 

群がって来ていた死体達はまとめて一気に焼却され、甲板への道が開く

 

そして、俺のダイブはついに限界を迎え

強制的に弾き出された

 

反転

 

医務室のベッドの前で目を開けた俺は

川内が隣にいることを確認して

 

そして、同時に目を覚ました神通を見た

 

「神通!」

「神通っ!」

 

声を上げた俺より早く

川内が神通に飛びついた

 

「神通ぅ〜っ!」

「川内ねぇさん?」

 

飛びついた川内に神通が応じる

その姿が、とても眩しく見える

 

「………」

 

そっと俺は病室を後にした

「里見くん、ブラックコーヒーかタバコをくれないか?」

「僕喫煙しないので、あとコーヒーなら自分でどうぞ…それとその前に

ベルトは外したほうがいいと思いますよ」

 

「……そうだな」

 

タバコは冗談だったのだが

それは置いておき

付けっぱなしだったカンムスドライバーを外して、バックルのみの状態に戻ったそれに

里見くんは大興奮していた

 

「どんな素材なんですかそれ

それにホラ、ベルトの部分が消えているじゃないですか!」

「まぁ…妖精だからな」

 

大概それで説明がつく

そうとしか言えないようなものだ

妖精のすることは未だ未解明な技術もある

 

それが体系化される過程で

艤装整備技術に始まり、建造制御や家具の作成、鎮守府自体の増改築と多岐にわたる技術が生まれてきたのだ

 

どれにしても、ポンと産まれた技術ではない

 

「だからまぁ、気にしても仕方ないと思うよ?」

「まさか玩具でもなく、本当にベルトとして役立つベルトが作られるなんて思いませんでしたけどね」

 

まぁ、里見くんもそういうロマンを夢見た時期があったということだろうか

 

「…そうだな、俺もそう思うよ」

 

「神通さんは、どうなりましたか?」

「連れ戻したよ、あの子はまぁ

いままで、辛い体験をしてきたようだから、今度は幸せになってほしい

実際に俺が体験したわけじゃないし、言葉そのものも川内の受け売りだがね?」

 

ちょっと暴力的な手段になったが、なんてつぶやきながら、適当に座る

 

「んで、なにがどうなったんです?」

「神通は…どうも昔に一緒に戦った艦娘や深海棲艦の仲間たちが沈んでいった事に

責任を感じていたらしいんだ

その自責の念が、彼女を深海棲艦たらしめていた」

 

「だから、俺がそこに介入して

神通を引き留めようとする『自責の念』そこでは、艦娘達の遺体の姿だったんだが…それをぶちのめした」

「わーお…随分と具体的かつ物理的」

 

「仕方ないだろ?極端に簡易化されたエフェクトの処理なんて、そうもなるさ

だが、結局…深海棲艦としての神通

軽巡棲姫のどうこう、がどうにか出来たかは定かじゃない一旦は目覚めても

また『海』からコンタクトが来る可能性もあるんだ、その点ではやっぱり警戒が必須かな」

 

そっと空中に手を伸ばす

結局、今は強引な手段でなんとか出来ても、根本的な解決には程遠い

いずれは綻びが生まれ、穴を突かれる

 

その前に、次の世代に託さねばならない

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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