戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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これが主人公……?

「……………」

 

「結局、なんの進展もないまま辞してしまったわけだが…」

 

結局一度も口を開かなかった姉さんと向かい合いながら、呟く

 

「姉さん、何か方策とかはないかな?」

「ごめんなさい、私は魂がどうこうというのは感覚的にしか扱えないの

いくら弟とはいえ、自分以外の魂を弄り回して、元通りに修復できる自信はないわ」

 

やはり、姉さんにもそんな心得はないらしい

そもそも艦娘は戦闘用の存在であって、そんな細やかな技能に通じるのは一部の特殊艦か、訓練を積んだ艦娘だけだ

訓練も何もありえない魂関連についてはどうしようもないだろう

 

「自然治癒、とは言い難いよな…」

 

やはり、魂の傷というのは

そうそう簡単には癒せない

『十分な時間』がどれほどの期間なのかも分からない現状、その手は得策とはいえない

 

やはり、隠居するべきなのだろうか

いや、先ほど氷雨先生に諭されたばかりでそれはないだろう

 

「俺にできる事を、探るか…」

 

そっと、呟く

 

「大本営に掛け合うのは、よした方が良さそうよ?」

「あぁ、最初からあまり期待はしていない」

 

そもそも大本営に魂がどうのなんてオカルト話は通じない、提督、艦娘間では当たり前のように認知されている霊魂が、大本営では未だに迷信扱いであったり機密事項であったりするのだ

 

「…そんな所に専門家がいるものかよ」

 

吐き捨てながら、あてを探す

普段から魂やら霊力やらという話題には事欠かないが、生憎俺はオカルティックな話にはあまり知見がない

運用できるエネルギーだから運用する

活用できる武器だから使ってみる

 

そういうレベルの話なのだ

 

「それに、情報が正しいとも限らない」

考えればキリがないが

周囲から仕入れている情報自体が間違っている可能性も否定はできない

 

「……一番確実な方法は…うん」

 

知り合いのなかで、

一番魂について詳しい人物

 

皮肉にも、提督としての働けなくなった俺が、艤装技師に戻るためでもなく

一級艤装技師資格を取るためでもなく

提督に戻るために頼ろうとしている伝手は

 

一級艤装技師、更造技師だった

 

「…力を貸してもらう

とは安易にはいかないよなぁ…」

 

彼はただでさえ俺が提督業をやっているのには反対だった

常に俺を一級艤装技師として

 

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として迎え入れようとしていた

 

それが出来るから、と言って

 

「彼は間違いなく、俺を技師側に引き戻そうとするだろうなぁ…」

 

 

だが、だからといって

俺はもう、安易にそちらへは戻れない

 

氷雨先生に言われたこともある

それだけではない

陽炎、神通、川内…長門達に至るまで

皆が俺を鎮守府へと引き留めている

 

提督として、俺は根本的な解決にならない手法に逃げるわけにはいかない

ならば、俺は

俺自身の魂の完全な修復に努めなくてならないのだ

 

「まずは、771研究室に連絡、かな」

 

今後の予定をまとめて

とりあえずは鎮守府に帰ることにした

 

山の麓に止めてあった車に戻り

道が不安定な長い林道を注意深く運転して

ようやく舗装路に戻った頃

 

「…ねぇ、そら?」

「なに?」

 

「運転、代わるわ

長い間運転していると、集中力が落ちるもの」

 

「…姉さん、そんな配慮するのか」

「何かしら、私が運転を替わろうと言い出すのはおかしい?」

 

どことなくからかいの気配がする言葉に、その意図を察しながらも乗ることにして

 

「おう、おかしいよ

普段の姉さんらしくない

さては姉さん、また何かと入れ替わったな?」

 

「その通りよ…今の私は…なんてね」

 

冗談めかして笑う姉さんの横顔を見ながら

 

幹線に入るジャンクションに行く前にいったん道を逸れ、細道で止まって席を入れ替え、姉さんにハンドルを譲った

 

「はい、姉さんの運転技術はどれほどなのか、期待しているよ?」

「はいはい、姉として弟には負けないわ」

 

「……言ったな?」

「あ、家事とか戦闘では負けるつもりはないわ…でも、細かな仕事とか作業は

大型艦としてはどうも向いていないの」

 

「姉さん、それは手先が不器用だと自分で白状しているんじゃないかい?」

「…そんな訳はないわ、私はちゃんと小手先の仕事だってできます」

 

言い合いながら高速道路に乗り

そのまま鎮守府へと帰った

 

「おかえりなさい、提督、加賀さん」

「おかえりなさい!司令官!」

 

出迎えは吹雪と赤城さん

今から帰ると連絡をしたわけでもないのに出迎えてくれたのは驚きだ

どうも相方の出迎えに喜んでいるらしい姉さんを先に下ろして、俺は車を車庫へと回した

 

「ただいま」

「おかえりなさい!」

 

待っていてくれたらしい吹雪に

いい笑顔で手を取られる

 

「…なぜ?」

「だって、司令官が帰ってきてくれたんですから、

 

司令官、いつ帰ってこなくなってしまうかって心配だったんですよ?」

 

「…おう、悪かったな、突然いなくなって」

 

そっと片手を離し

吹雪の頭に乗せる

 

「今日、ちょっと怒られちゃったんだ

だから辞める以外の方向を探ってみるよ」

 

ゆっくりと優しく撫でてやると

目を細めながら嬉しそうな顔をする吹雪

 

うん、やっぱりここの吹雪は可愛い

氷雨先生とは大違いだ

 

「か…かわっ!」

 

「かわ?」

「なんでもありません!」

 

吹雪はどこかに走り去ってしまった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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