「…でね、提督が辞めるつもりってのはわりとみんなに伝わっちゃってるんだよ」
「おう、そうだな
氷雨先生に怒られなかったら辞める寸前だったし、実際に後継者の選定してたからな」
川内に事情を聞くと
別段ずっといたわけではなく
一、ニ時間ほど前から出そうだが
一時間も待たせてしまったのは少し心苦しいので、吹雪に間宮券を渡して
「…で、なんで俺まで?」
「いつか司令官と一緒に来たかったんですよ!」
そんなことは恋人に言ってやれ
と思うようなセリフを投げられた俺は、一瞬フリーズして、すぐに再起動する
白玉餡蜜と間宮スペシャルを注文して、しばし待ち、出てきたそれを見やる
「間宮スペシャルのサイズって
いつ見ても人の頭並みに大きいんだよなぁ…」
「え?そうですか?」
食べ始め30秒ですでに2割ほど無くなっているアイスと、その容器を眺めて
問い返してくる吹雪に視線を送る
「…俺たちは気にしてないんだが
艦娘って体格に応じてなのか、すごく食べるからな、飛龍とか赤城とかがわかりやすいけど」
実は扶桑さん達も戦艦相応の量を食べている
大和達の半分程度ではあるが
それでも駆逐艦の6倍近く食べるのである
(吹雪が燃料消費15、扶桑が85)
ちなみに俺は駆逐〜軽巡程度
数値的には高くても20くらいであろう
軽巡以上のサイズの艦娘からは小食と評されるが、駆逐艦と大差ない食事量なので
十分な養分自体は取れている
「まぁ、ご褒美なんだし
ケチ臭いのも難だろう?」
「…ん、はい!」
元気の良い返事だこと
「あ、司令官
全然食べてないじゃないですか」
「ん?今更気づく?…良いよやるよ」
スプーンでそっと寒天と蜜を掬い取って、吹雪に差し出す
「ぁ〜」
「………あのねぇ…」
吹雪は当然のように目を閉じて
口を開く
「はいはい」
口の中にスプーンを入れてやると
吹雪は幸せそうな表情になる
やっぱり女の子は甘いもので機嫌をとるのが上策なのだろうか?
間宮スペシャルほど高価でなくても
餡蜜で十分な効果が期待できるんじゃないか?いや、そもそもこの寒い冬場にアイスは大丈夫なのか?
お腹を冷やして体調悪くなったりしない?
そんな心配や懸案が頭の中を駆け巡るなか、吹雪の口からスプーンを抜く
「ん、ありがとうございます」
「…はぁ…」
何気なくもう一匙掬って、
今度は俺自身が食う
やはり、味覚の減退している俺でも感じられるほど甘い、糖分値は気にするほど高くはなかったと思うが、継続的にこれを食べるならやはり心配するべきだろう
「はい、司令官、お返しです」
「いや良いよ、それは吹雪のだし、ちゃんとした褒賞として受け取ったものなんだから」
「私のものだから、お裾分けしたいって思ったから、ではダメですか?」
「………君には敵う気がしない」
諦めのため息をつく俺の前に
スプーンが差し出される
「はい、あーん」
「……はぁ……んっ!?」
喉にまで直接突っ込まれるのは
食べさせているとは言わない
この感想で、何が起きたかはわかるだろう
吹雪と分かれて提督私室に帰ると
そこに展開されていた光景は
「…………お前ら」
白露型総出で部屋の模様替えの最中だった
いや、正確には漂白だろうか?
ありとあらゆる私物、インテリアを回収していたわけだから
「……てい……とく?」
なにやら枕を抱きしめていた村雨とと
タンスの中に居たらしい山風が
愕然とした顔でこちらを見てくる
「……おう、ちょっとお前らの提督であり続ける自信がなくなってきたけど提督さんだ」
「提督っぽーーいっ!」
布団に乗っていた夕立が飛び上がってきた
「うぉぉっ!お前っ
ちょっとは着地の心配をしろって」
慌ててキャッチして抱えた夕立が
ぽいぽいぽーいと頬擦りしてくる
「ぽ〜い!」
「はいはい」
そっと下ろしてあげてから
背後に感じていた殺気の源
時雨の刺突を回避する
「時雨、お前危ないだろ?よせよ」
「放っておくと提督は一人で勝手に出歩いてしまうからね、僕が留めておいてあげないと…」
「生憎、波止場に留まっているような余裕はなくてね」
時雨はそのまま抱きついてくるが
一本背負いで布団に投げる
「あっ!…提督のお布団…」
「うわっ…お前どうした本当に」
投げられた後余裕で受け身を取った時雨は、布団にダイブしてそのまま目を閉じる
いや、何故そうなるのかは分からないがとにかく
「お前ら、持ってこうとした物返せば許してやるよ、あ山風?お前
俺の帽子返して」
江風、涼風、五月雨以外はみんな何かを持って行こうとしていたらしく
時雨は俺の数少ない私物の一つである本を懐に隠していたので没収した
「んで、お前らなにを持っていこうとしてたんだ?」
「ん〜…提督さんの匂いっぽい?」
指先を頬に当てて首を傾げながら答える夕立
「俺そんなに臭い?」
俺そんなに臭い?ちゃんと毎日体はしっかり洗っているはずだが…
「大好きな匂いが消えちゃうのは嫌だから、少しでも保存して置こうと思ったっぽい」
「……お前らは犬か」
「ぽーい!」
そのためだけに、絶対そんなことしないだろう海風江風まで動員して
わざわざ俺の私物を全回収してくれたわけか?
「いや、そもそも俺が帰ってこないことを前提に考えていたのか?」
「っぽい??」
不思議そうな目で俺を見上げる夕立
その額を指先で擦りながら
俺はまず、行うべき指示を考え始めた
600話記念番外編は
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しぐ……しぐ……