戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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ここからは久しぶりに戦闘シーンに入ります




逆巻く疾風

「…やはり、力は落ちていますね」

 

右側から赤城さんの声が耳を打つ

 

「…そのようです、私の出力も低下しています、このままでは、いずれ真っ当に力を振るうことも出来なくなってしまうでしょう」

「今はまだ、提督の力の残滓が私たちに力を貸してくれていますが

それが尽きれば、という事ですね」

 

二人で再び弓に矢を番え

 

「「第二次攻撃隊、発艦!」」

 

声を揃えて矢を射る

最新鋭装備だけあって、飛ぶ姿は堂々としたものだが、やはりかつての威風には及ばない

 

「不慣れな陸攻の操作をしていた加賀さんが心配です、ここは早く終わらせましょう」

「そうですね、私たちのためにも

提督のためにも、加賀さんのためにも

早く終わらせましょう」

 

一撃必殺の決意を込めて

放たれた矢の名は流星

 

その翼は空を斬り、敵の元へと駆け抜ける

 

「止めは、頼みましたよ」

 


 

「主砲、発射用意!」

(はい!)

 

私の指示に対する妖精の声、威勢は良い、けれどそれだけ

 

確実に力が落ちている

出力という単独の意味だけではない

装備に宿っているはずの概念の密度が下がっている

 

『私』という存在が『駆逐艦・神風』であることを証明する力が落ちている

実艦に近い力を発揮するはずの艤装の出力が低下しているのは、つまりそういうこと

 

「…行かないわね…撃てっ!」

 

ドン!という音と共に、

やはり出力に比して軽い反動

そして、軽いはずなのに揺らぐ体

 

私自身の身体能力まで、練度低下の影響が及んでいる

 

「体が、本当に動かなくなる前に…

撃ちまくりなさいっ!」

 

ドン!ドン!ドン!ドン!

連装砲からの連撃、四発の砲撃は

一気に敵駆逐艦に着弾し、全弾命中を知らせる観測員の声と共に

駆逐艦が沈んでいく

 

「まだよ!雷撃用意!突貫するわ!」

 

私のスペックはただでさえ低い

高威力な酸素魚雷といえども

さしたる効果は望めないでしょう

 

「けれど…」

 

それが何もしない理由にはならない!

 

「十分な威力はないかも知れないけど!」

 

突貫した私は、敵中枢部にいた重巡級に肉薄し、思い切り身を縮める

 

「つっ!!今っ!」

 

敵の至近距離に接近したことで

機銃や副砲がこちらに向かってくるが

「狙いが甘い!」

 

サイドステップ、思い切り踏み込む

接触寸前の距離にまで飛び込んで

 

至近距離雷撃、61センチ四連装酸素魚雷が敵重巡に突き刺さり、爆発を上げる

 

「よし!」

 

反転し、急速で下がる

 

その背中に追いすがってくる重巡は

装甲を見るだけで使い物にならないと判断できるほどに破損しながらも、なお砲と体を守り切っていた

 

「!」

 

「惜シカッタヨ…神風ッ!」

「名前まで!?」

 

全力で撤退しようとして、伸ばしてきた手をかわす

 

しかし

 

「きゃぁぁあっ!」

髪を強引に掴まれて、引っ張られる

 

「オ前ハ強カッタ、ソレハ私ガ認メルヨ…ダガ、コレデ終ワリダ」

 

深海棲艦の歪んだ声が

私の耳朶を打つ

その内容は、聞きたくもないようなものだ

 

「…だから…何よっ!」

 

髪を掴まれた状態、姿勢は後ろ向き

体格差、出力差は大きい

圧倒的に不利な状況

 

もはや覆せない…

 

「総員退艦!急いで!」

「サセルカ!」

 

せめて妖精だけでも逃そうとした

私の背中に、拳が叩きつけられる

 

「うっぁぁっ!」

 

「潔ク…死ネ!」

 

衝撃が背を打ち潰し、そのまま体の中を通り抜けていく

全身がめちゃくちゃに壊されたように痙攣して、真っ当に動いてくれない

 

「…ぅ…ぐぅっ…」

 

痛みに耐えながら、なんとか妖精達を脱出させようとするものの、やはりそのたびに殴られる

 

「死ンデイケ…愚カナ艦娘達!」

 

だんだん周囲の色が薄れていって

感覚が消えてくる

 

痛いのに、どこが痛いのかわからない

熱い…熱い…痛い…

 

「…けて…」

 

思わず、声が溢れる

 

「…たす…けて…」

 

「フ…フハハッ!コノ期ニ及ンデ命乞イダト?コレハ傑作ダナァッ!」

 

「…助けてって、聞こえたからな

あぁ、神風…助けてやるよ」

 

その声は、どこから聞こえたのか

誰の声だったのか

そんな事はわからない

けれど、それを聞いた時

私の目からは涙があふれた

 

「そこのテメェ!神風から

離れろっ!」

 

爆発音と同時に、手が離れる

…いや、手は残っている

 

私を掴んでいた手、それに繋がっていた腕が丸ごと消失したのだ

 

「グァァァッ!」

悲鳴が上がるのを背中に感じながら

全速力で主機を回して

 

なんとか前方へ…助けてくれた

摩耶さんの元へと走る

 

「摩耶さんっ!」

「おう、遅くなったよ、神風」

 

流石に接触はできないけど

最接近して、そのまま後ろに抜ける

 

「後はあたしに任せな、行くぞっ!」

 

砲と装甲を肩に、重巡同士の殴り合いに突っ込んでいく摩耶さんの姿は

私にはとても眩しく見えた

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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