戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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中破

「さぁて…あたしの仲間をさんざんいたぶってくれたんだ…覚悟は出来てるんだろう?」

 

「貴様ガイウナ!屑ガ!」

 

「あ?」

 

主砲よりも先に拳が放たれる

その一撃は既に崩壊寸前だった装甲を貫通し、素体へと直撃する

 

「アゴォァァ!」

「死ね!」

 

急速接近からの拳打による牽制

そして流れるような連撃による装備の破壊

 

それらは極めて高効率かつ的確に行われ

そして見事に結果を残した

 

「人の悪口言って良いのはなぁ

言われる覚悟がある奴だけなんだよ!」

 

ドスの効いた声と共に最後の一撃が重巡の顔面に突き刺さり、そのまま転倒させて

 

「死ね」

 

ドゴォン!という

私とは明らかに一線を画する一撃

駆逐艦と重巡洋艦、全く違う艦種だし、武装の世代や開発時期から艦体そのものの大きさだって全く違う、私と摩耶さんはかけ離れていると言っていいでしょう

 

けれとも、やはり

少しだけ、その力が羨ましくなる

 

私にはない力

どれどけ努力しても決して得られない

私の限界以上の力

 

それをこともなげに振るう姿は

とても格好良くて、同時にどこまでも冷たく、恐ろしく見えた

 

「ギュギィィィァキィィ…」

 

飛び込んできた駆逐艦が爆沈し

その身をもって一瞬の時間を重巡に遺し、その一瞬で身を翻して逃げ始めた重巡級

 

しかし、その進路には

 

「どこに行くつもりかしら〜?」

 

薙刀が振り翳される

 

「ドケェェッ!」

「お前がな」

 

摩耶さんはその背後でニヤリと笑って言う、顔は見えないのに、その様ははっきりと分かった

 

(第二次攻撃ついでのおまけだ!)

(余った爆弾は全部突っ込んじまえ!)

 

爆発音、

 

摩耶さんの真上を通過した蒼龍さんの爆撃機が、急降下爆撃を仕掛け

重巡は最後の一言すらなく爆沈した

 

「あらあら〜…随分とあっけないのね〜」

「龍田、さっきまで軽巡の奴とバトってたのは棚に上げるのか?」

 

「その辺りについては〜まぁ棚にあげさせてもらうわね〜」

 

にこにこと笑いながら

龍田さんが薙刀を振って

 

飛来した砲弾を切り払う

 

「お返し…よっ!」

 

1.2.3のリズムで構え、狙い、撃つ

早業を見せる龍田さん

その技量には、些かの衰えも見とることはできない

 

「どうやって…?」

 

「あら?興味がおあり?

陸に帰ったら教えてあげるわ〜」

 

ふわふわとした笑顔を浮かべたまま

薙刀を振り続ける龍田さん

今度は機銃掃射を薙刀の柄で防御している

 

「効かないと…わからないなら

……沈めっ!」

 

薙刀を一気に投擲、軽巡の首に突き刺さる

そして、そのまま沈んでいき

 

数秒後、薙刀だけが浮いてきた

 

「ひぇ……」

 

思わず声が出た私は悪くないと思う

 


 

 

「さて、雷撃用意、北上

…んで、そこで何をしている、大井」

 

〈私はただあるべき場所に居るだけよ〉

 

通信機から聞こえてくるのは

…まるで北上の隣に座るのは自分以外ありえない、と言わんばかりの宣言

 

たしかにペア艦ではあるが

お前たちは札対策に別運用することも多いんだからやめてくれ…

 

いや、この世界に限っては

札はないので問題ない

 

キョンシー現象は起こらないのだ

 

「…すぅ…はぁ…よし

いったん落ち着け、現状、魚雷は北上単独の能力だけで十分に間に合っている

大井には別の役に回ってもらいたい」

〈拒否します、私たちの運用について学び直してください〉

 

「…あのねぇ…そんな事言われても

今戦闘中で、俺、司令官よ?」

〈いつのまにか提督やめてた人に言われたくありません、司令官名乗るなら

せめて縁くらい戻しなさい、それが出来ないなら私の信頼返してください〉

 

「…そう言われると何も言えないんだが」

 

大井はやはり俺が原因で

改二や改が使えなくなってしまっていることに気付いていたようだ

 

だからと言ってこんな急場に謀反じみたことをやらかしている以上は

相応の処罰は必要なのだが

いまはまず貴重な雷撃戦力である大井と北上を

 

「…ん?」

 

ひとつ、疑問が浮かぶ

もともと鍛えていた艦娘たちは

俺の力を失っても素で十分強い

それはわかる

 

だが、流石に改二が使える艦娘はいないはずだ

 

外見だけならともかく

能力までも相応になど、ありえない

 

「じゃあ北上は…?」

 

〈は?なんの話ですか?〉

 

刺々しい声が通信機越しに耳に突き刺さるが、そんなことは関係ない

 

北上はなぜ、改二を発動しているんだ?

いや、なぜ発動できるんだ?

 

「…」

 

考え込む俺に、痺れを切らしたのか

大井が声を上げる

 

〈いい加減に悩むのやめなさい!今は深海棲艦と戦闘中なんだから

辞めたいなんて我儘をゴネるな!

アンタの代わりは居ないのよ!〉

 

「…そうか!それだ!」

 

大井からの叱責の声が聞こえた

その瞬間、急激に視界が開けるような感覚

 

「俺の力が使えない、俺の魂の縁が喪失している、当然の話だ…だから

俺の代わりがあれば!俺以外の魂から力を引き出せばいい!北上はロ級の魂から力を引き出して改二になってるんだ!」

 

〈はぁ?〉

 

怪訝気な声が聞こえると同時に

ようやく航空戦の決着がついたのか

空から何機かの艦載機たちが飛んで来る

 

「…あれは」

 

翔鶴航空隊のマークを描かれた

その数機は

不自然に鎮守府の建屋の前を旋回している

 

普段ならとっくに主人の元へと戻っているころだというのに

 

「どうしたんだ…」

 

その様子に違和感を覚えた俺は

翔鶴に無線を繋ごうとするが

繋がらない

 

「翔鶴!何があった!」

 

そして、姉さんからの通信が入った

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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