「さて、通信は聞こえているだろうか?」
深海棲艦の使う妨害電波がどれほどのものかは不明だが、まずは音声通信を試す
「…ダメですね、繋がっていません、なんらかの妨害によって電波が通じていないものと思われます」
…………ダメだな
まぁ予想はしていたが、それでもこの状況は詰んでいるに近いのだから
何某かの救いを求めた上でハズレを引かされるのは少々堪える
「電報はどうかな……」
「試して見ますね」
大淀の操作の元
近隣の鎮守府、遠方の施設
大本営、遠方の鎮守府へと電報を送る
複数の試行をへて、結論としては
…極めて細かい断片だけが伝わっているか、それとも全く伝わっていないかの二つに一つ、といったところだろう
「うん、詰んだなこれ、逃走用の
秘密の地下道、とかあればいいんだが
そんなものは無いしなぁ…」
泣きたい気分ではあるが
本当に泣きたいのは前線で戦っている艦娘たちだろうと思い直して
一度深呼吸し、その上で
「…よし」
考えをまとめ直した
「大淀、秘書妖精と工廠長妖精を呼んでくれ」
「わかりました」
大淀は工廠へと走り去り
俺は自分の仕事を続ける
即ち、無線と視覚共有によるオペレートと、そして重要な書類などの隠蔽、抹消作業である
「…提督!」
3分ほどたち、大淀が戻ってきた
三分で往復するとか足速い
なんて考えながら、大淀の方を見て
「なぜ?」
間抜けな声が出てしまった
「提督、これを使うんですよね?」
差し出されたのは…どこかで見たようなベルトのバックル
「…それは想像していなかった」
せっかくまとめ直した考えを完全破壊するようなデザインのそれは
(さぁ提督、変身してください!)
妖精の煽りト共に俺に押し付けられ
強制的に装備される
(これを、軽巡でも安定的に運用できるように出力は改良されています)
カシヤァァッ!という音と同時に
シンプルな銀色のベルトの部分が構成され
(((変身!)))
「うぉぉっ!」
ベルトの中に半分入っていたカードが完全に押し込まれ、本体のスロット部分が横向きになると同時にカバーが閉鎖され、そして空中に二人の立体映像が浮かぶ
〈HUBUKI -- KAMIKAZE〉
〈ACT〉
〈snowstorm white out
blizzard gust!〉
〈storm Soul〉
吹雪と神風のカードが装填され
疾風と氷雪の力が宿るベルトから、やたらポップな音楽と読み上げ音声が流れ
俺の体に立体映像が重なる
「…で、何をしろと?」
(決まっています!)
(助けに行ってあげてください!)
ドン、と妖精に背中を押され
俺はよろめく…が、
「何いってんだよ、俺にはもう提督としての能力は…」「そんなことは関係ありません!」
「……?」
疑問を呈する俺に
大淀は笑って言う
「提督が職を辞して、新しい『提督』を迎えたところで、私たちはその人を提督として認めることは出来ません
だから提督が『提督』としての能力を失っても、自分たちの力で十分戦える
それを証明するために皆さんはこんな無茶をしようとしているのだと思います、だから
そんな無理をしなくていいと
ちゃんと、伝えてあげてください」
「……」
〈そうね、帰ってきたら五航戦にはきつく言い聞かせてあげなくてはいけません
提督が何よりも大切にする
「…そうだね」
姉さんも、大淀と同調してか
わざと明るい声を出してくる
「わかった、俺は行くよ
悪く思うな」
「…はい!行ってらっしゃい、提督!」
〈行きなさい、蒼羅
誰かのためじゃ無い、貴方自身の為に〉
姉さんまでテンションを上げている中、俺は全力で窓から飛び出して
「概念艤装、擬似展開!」
高らかに叫ぶ
その瞬間、俺の背には
『最古の艦娘』の艤装が展開した
「凍りつけっ!」
足元の海面を殴りつけ、瞬時に海面から数メートル分の氷の塊を作り出し
その上を走る
俺の走る端から海面が凍りついて白い道ができていくため、海面に落下することはない
こんなバカみたいな現象
どうやって起こすのかは分からないが、とりあえず今、目の前で起きている現象なのだから気にしないで海に出る
その瞬間
「そら!これを待って行きなさい!」
そんな声と共に、肩掛けの甲板を投げ渡される
普段は雑に扱うどころか装備を外すときでさえ気を使って扱っているはずの甲板を投げる、それほどの何かがあったのか?
いや、それを突き止める為に
前線に急がなければならない
「姉さん!ありがとうっ!」
俺はその言葉だけを残して
戦場となった湾の中に、飛び込んでいった
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